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次の日、梓は朝からミリアムを訪ねていった。
片付けが終わり、ほとんどもののない部屋で、ミリアムは一人分の食器とタオル、それにアルバム数冊だけを出して彼女を待っていた。
「おばあちゃん、こんなアルバム作ってたんだ」
「写真は印刷して保管した方が振り返りやすいと、弓絵が言っていました」
梓はミリアムと一緒に、ダイニングテーブルの上に開いたアルバムを覗き込んだ。
ミリアムに抱っこされている赤ん坊の梓は、ままごと遊びのお人形みたいに小さくて弱弱しくて、でも一生懸命生きている感じがした。フキダシの形の紙が一緒に貼られており、「梓ちゃん、生まれてきてくれてありがとう!」と祖母の少し右肩上がりの文字で書かれている。
じっと写真に見入っていると、ミリアムが「美しいでしょう」と言った。
「弓絵と和夫と、私が戦って守ったものです」
そうだね、と梓は答えた。
ずっと昔からこうして暮らしていたみたいに食事をして、おしゃべりをして、また食事をして、写真を見て――あっという間に夜中になった。梓はミリアムに頼んで、一緒に寝てもらうことにした。
「私の重量でベッドが壊れますから」
ミリアムはそう言って、梓の枕元に立った。白いワンピースを着て銀髪を背中に垂らした彼女は、ほのかに差し込む月明かりに照らされて、まるで天使のように見えた。
「明日になったら、もう24日かぁ」
「日付の上ではもう24日です」
「寝たくないなぁ」
「もう遅いですよ。おやすみなさい」
「はいはい、おばあちゃんもきっとそう言うもんね」
そう言って梓が笑うと、「ニュートラル」だったミリアムの表情が動いて、「喜」と「楽」に振れた笑顔が表れる。
「おやすみなさい、梓ちゃん」
「おやすみなさい。ミリアム」
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