美しい思い出と、感傷のメモリー

わずか一万文字ながら、胸に迫るお話だった。見ようによってはあの幕切れは悲劇とも映るが、これは決まっていた結末で、梓ちゃんはそれを踏まえてミリアムと過ごしていた。
ミリアムはアンドロイドで、俗世の生活というものをしていないから、梓の学校や家庭のような醜さとは無縁だ。しかし戦場で働いたミリアムは、それらとは別種の醜さもまた見てきたのだろう。けれど、それはどっちがどうとか比べる話でもない。
激しい戦争を生き延びた旧時代のアンドロイドが、少女の心に美しく輝かしい思い出になって去るというのは、物語としてこれ以上ないハッピーエンドに思えて、私はどうしても戦場の彼女について想像をかきたてられた。
ミリアムは自分がどうすれば、人体を破壊できるか知っているはずだ。その上で、あの「規則で」のくだり。
「感情のあるアンドロイド」の設定で「感情の目盛り」という平易で分かりやすく、それでいて様々にその内心を考えさせられてしまうこの設定も素晴らしい。
梓ちゃんはきっと、大丈夫だよね。これから、この先にある美しいものを見ていくよね。涙があふれる思いで、最後のミリアムにそう訊ねたラストシーンだった。

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