爽快で力強い、未来のおとぎ話

 最初はロマンチックなSFだなと思ったが、とんでもないサイバーパンクでした。AIの自我と感情。
 作品紹介の粗筋と出だしで、もうこれだけで一つの掌編として完成してるじゃん! ここからどう広げるの? と思ったら、続くマヤの登場でそう来たかと膝を打ちました。マヤという女性の立場は非常に複雑だと感じていたのですが、ラストで彼女と夫の関係性が紐解かれて、一気に腑に落ちました。
 あのような形に固執してしまう彼らは、その意味では「旧態としての人間」そのままなのですね……。

 その一方で、主人公の「十一号(エルフ)」は自律思考型アンドロイドでありながら、この上なく「人間性」を獲得しています。
 かつて生きた人間を模しながら、自分は偽物、代替品などとくよくよするような葛藤とは無縁。「同じ存在」とあまりに清々しく断言するさまに、最初は哀れみさえ覚えていたのですが、とんでもない。
 彼女には彼女の強固な自我があり、それが予想外の、そしてタイトルに予言されていた結末へと導くのでした。なんて爽快で、力強い物語!

 大変楽しく読ませていただきました、ありがとうございます。

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