概要
歌わなかったらあたしじゃないわ。
「あたし」は死んだ歌姫の再現として造られたアンドロイド。歌姫を愛した富豪は、彼女の歌声を再び聞くまで目覚めない冷凍睡眠に入っている。「あたし」の使命は彼を目覚めさせることなのだが──
第四回こむら川小説大賞参加作です。
お題:異能
※本作の「異能」は「人より際立ってすぐれた才能」の意味です。
第四回こむら川小説大賞参加作です。
お題:異能
※本作の「異能」は「人より際立ってすぐれた才能」の意味です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!機械の歌姫の目から見る世界
事故死した歌姫のコピーとして作られたアンドロイドが、冷凍睡眠中の富豪を目覚めさせるために歌う物語。
主人公であるアンドロイド、十一号(エルフ)の主観視点で綴られたSFです。
一人称体の文章、そこかしこに見える「機械としての自覚」がSF的で楽しく、しかしその文体ががっつり口語体してるのがもう面白いです。
文章そのものが示す人柄や性格。翻って、文体そのものが「この主人公はそういう機微を持ち得る存在である」と示していること。
そも「すでに死亡した人間を機械的に再現する」という行為も含め、設定や雰囲気はしっかりSFでありながら、でも描かれている内容そのものはどこまで行っても人間の愛憎や…続きを読む - ★★★ Excellent!!!爽快で力強い、未来のおとぎ話
最初はロマンチックなSFだなと思ったが、とんでもないサイバーパンクでした。AIの自我と感情。
作品紹介の粗筋と出だしで、もうこれだけで一つの掌編として完成してるじゃん! ここからどう広げるの? と思ったら、続くマヤの登場でそう来たかと膝を打ちました。マヤという女性の立場は非常に複雑だと感じていたのですが、ラストで彼女と夫の関係性が紐解かれて、一気に腑に落ちました。
あのような形に固執してしまう彼らは、その意味では「旧態としての人間」そのままなのですね……。
その一方で、主人公の「十一号(エルフ)」は自律思考型アンドロイドでありながら、この上なく「人間性」を獲得しています。
かつて…続きを読む