主人公らの魅力は、ひとえに優秀さと正義観のバランスにあるといえる。主人公の常識的な部分が手遅れになるかならないかの緊張感を生み出し、物語の一つの主題となっている。
またこの物語の最大のポイントとして、信頼できる人物を探し出し協力を取り付けるという、本来は地道で報いの少ない行為にスポットライトを当てた部分を推したい。現実では交渉の過程でさまざまな問題が発生する。そこを熱意と対価を示すことで(多少ご都合主義ではあるが)解決していくのに、私はスッキリした。
さらに機械類の描写は秀逸である。作者の専門とする(であろう)分野以外は相当な量の資料を調べ理解しないと書けないと思われる。素直に敬服する。
文章力も高い。作者はとても頭の良い人物なのだろう。こういう質の高い小説は継続して読んでいきたいものだと思った。
未読ならば強くオススメする。