裏切り
アベルの寝室に忍び込んだあたしは、彼と裸で抱き合っているところを取り押さえられた。
裸の
「あたしには愛が分かってないって言ってたじゃない。だから試してみてたのよ」
「性欲を教えた覚えはないわ。汚らわしい……!」
ヤることヤれるように作っておいて、汚らわしいなんてよく言うわね。あたしを
「あたしの身体に処女性なんて馬鹿馬鹿しいと思わない? モーリッツが目覚めたときに、
「黙りなさい……!」
あら、とうとう殴られた。マヤの感情は本当に不思議。
「貴方は廃棄処分よ、
マヤに取って、イーファはモーリッツ一筋でなければならないのね。うっかりあたしが
「アベルは? 消されちゃったりするのかしら」
あたしと同じく裸だったアベルは、どこかに連れて行かれちゃった。あたしと違って痛みを感じるのに、ずいぶん殴られてたようでもあった。彼は大丈夫なのかしら。
彼の名前を聞くのも嫌なのでしょうね、マヤは憎々しげに顔を顰めて魔女みたいな表情をした。
「私たちは犯罪者ではない。これまでの働きに対する報酬は支払うわ。契約違反の分は差し引くし、
「そう、良かった」
でも、彼女の答えはかなり優しくはあった。アベルは
「……アベルのことは心配するのね」
「あたしが言うことじゃない──っていうか、今までの『あたし』も言ったことだと思うんだけど」
マヤは、この期に及んでも
「モーリッツはろくな男じゃないわよ。貴女が人生を捧げるに相応しいとは思えない。
「分かっているわ」
怒るだろうな、と思いながら言ったのに。マヤはふわりと微笑んだ。なんだ、この
「でも、愛しているの」
不覚にもあたしを見蕩れさせる微笑みのまま、マヤは指先で合図した。それを切っ掛けに、何本もの手があたしに伸びる。あたしの意識を──電源を落とす。それはあたしにとってはまったくの無。毎晩のように迎えていたものだから、眠りも死も区別がつかない。
でも、人間だって同じよね?
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