昨年、作者さまがTwitterでバズった際に本作を知り、読了して「私向けではない」とモヤモヤしながら星だけ入れました。先日、ふと理由を言語化できたので書いておきます。
いわゆる「しっぺ返し物」は、エンターテイメントの基本的な構成ですね。例えば悪逆非道な敵が無辜の一般人を好き放題にいたぶり殺し、調子に乗る。そこへヒーローが現れ、敵を爆発四散せしめる。実に爽快です。
「ざまぁ」物には詳しくないのですが、その構造はしっぺ返し物と基本は同じで、しかしより露骨なもの、というのが私の認識です。
〝犠牲者〟のヘイトを高く積み上げることで、因果応報の正当性と「こいつには手酷いしっぺ返しを受けて欲しい」という期待をあおりにあおって、ドーン! と犠牲者を突き落とす、その高低差がカタルシスを生み、読者も「スカッ」とする(※詳しいジャンルではないので個人的意見です)。
しかし本作の犠牲者は、出だしからその愚行に周囲があきれ果て、しらけた空気に包まれています。これはヘイトの山を積み上げると言うより、不安定な足元に気づかず踊る生け贄が落ちるのを、今か今かと待ち受ける居心地の悪さを覚えました。ヘイトと言うよりも、憐憫の情です。
高低差が生まれる点では前者と後者は同じなのですが、プラスからマイナスへ振れる前者と異なり、後者はただただマイナスへ突き進む性質を持ちます。
つまり、本作は「ざまぁ」を好きな読者が、「とにかく同情できないアホがひどい目に遭う所が見たい、できるだけ最短で」という残虐ショー、それもいささかオーバーキル気味、という点が私に合わなかったのでしょう。
しかし、それは狙いの読者層にはよくフィットするということでもある、と思います。
ただ、「ざまぁ」を好む向きでも少しややこしくなるのが「無限増殖ヒロイン」の部分です。無限増殖ヒロインものを複数書いておられることから、かなりお好きなのだと思いますが、本作においてはオーバーキルにオーバーキルを重ねて「ざまぁ」物からややはみ出したような……。ホラーという点ではあっていますが。
それでは、長々と失礼いたしました。