山の戦士の一族の子として産まれたカブリは天賦の剛力を備え、父をも凌ぐ戦士となることを目ざして鍛錬を積んできた。しかし山へ踏み入り、父を含む同胞を罠にかけた賊をひとりで討ち果たしたことをきっかけとして新たな道へと見出す。かくて故郷を後にした彼は出会うのだ。数多の冒険へ共に臨む相棒、鉄弓のブレトと妖艶なるニグラに。
戦士のカブリさんと弓使いのブレトさんを中心に一話完結型で綴られる本作、最初の3話を読んでキャラクターが把握できればどこからでも読める構成となっておりますよ。
しかもです、各話が本当に多彩なのですよ。冒険あり、推理あり、訓話的小話あり、飽きさせない上に読み応えがすごい! そして綺麗に閉じられるよりもほろ苦さを残すエンディングが多いのですけれども、それがまた本作ならではの魅力——綺麗事で繕わない人間ドラマの味わいになっていて、実にすばらしいのです。
そうそう、魔法使いのニグラさんがトリックスターとしてこの上なく機能していることも強調させていただきますよ!
(「剣閃き魔法輝くヒロイックファンタジー!!」4選/文=高橋剛)
図書館の虫だった子供時代、夢中で読み漁った幻想文学の世界を思い出すシリーズ。一話と二話は二人の主人公・蛮族カブリとエルフのブレトが故郷を出るまでの物語で、どちらも素朴な民族の生活感があります。
こう、インディアンとかアイヌとか、現代日本の我々とは遠く離れた文化を持つ、狩猟採集民族に伝わる物語を読むような心地ですね。
父子ものが好きなのでカブリの物語はグッとくるものがありましたが、森の獣のためにより良い狩りをしようとしても理解されず、罰されても「それが掟だから」と従容と受けるブレトの姿もまた胸を掻き立てられるものがあります。
この二人が出逢う下りも見てみたいのですが、第三話からは既にコンビが出来上がっていて、二人が対処する事件のお話。ここだけいきなり読んでも、普通に短編小説として完成している出来栄え! しかしニグラさん、いあいあな方向のあれですよね……?
Twitterか何かで不定期更新と書いてあった気がしますが、二人(と一柱?)の新たな冒険を心待ちにしております!