話はオカルトチックで、それだけ聞くと読むのをやめてしまう方もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。この話はオカルトに包まれた悲恋です。トモエさんを愛するがあまり、スマートフォンに霊魂を閉じ込め、持ち歩く。とても想像し難い行為ですが、流れるような文章のおかげでスラスラと読むことができました。
死を前にした恋人の魂を留めるため、自作のオカルト装置に手を出した主人公。その目論見がもたらすものは……というお話。恐ろしさよりも切なさ、愛する人と別離する悲しみを主軸とした一編。彼女が「訴えなかった」理由を察すると、二人の痛切な愛が突き刺さることでしょう。