出だしたの一言めが、「受験を間近に控え、鬱屈した学生」が主人公であること、日常に退屈した主人公の青春物語であることを一発で分からせる秀逸さに、「最後まで読もう」と思わされました。
個人的には全体的に駆け足で、もっとじっくり描写して倍の分量でストーリーを紡いでもいいのでは……とも思いますが、これは好みの問題ですね。3万4千文字程度という短さで、スパッと楽に読めます。
作中のオカルト理論が中々ムーな感じ(この言い回しって今も通じるかな)で、もうちょっと現代風に言うとSCP的ですが、ガワや用語に対して内容は至極真面目。いや、まさか出てくるのがアレとは思いませんでしたよ……。
世界の危機! ヤバい! と言っている一方で、主人公は冷静に受験のことを考えている、この距離感がいかにも「青春物語なのだな」と重ね重ね思わされます。