その色の帽子を取れ

作者 梧桐 彰

172

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★★★ Excellent!!!

これはハードカバーの2000円とかで売られている紙の書籍で読みたいと強く感じる小説です。
タイトルの意味、彼を取り巻く環境、世界観、どれも設定が練りこまれていて、話があちこちに飛んだように見えてもちゃんと伏線は回収されました。
いろんな感想が浮かんでくるけれど、文字にするとチープで陳腐になってしまいますが、これだけは間違いなくいえます。

小説を読み終わったとき、上質なエンターテイメントの世界を味わえます。
このレビューを読んだ方も是非小説の世界へどっぷり浸って欲しいです。

★★★ Excellent!!!

ひょんなことから出会った二人の高校生、ショウとサク。
真っ赤なツンツンヘアにレザーファッションでバイクを乗り回し、喧嘩も強くてぶっきらぼうな話し方の、やたら男らしいショウ。
かなりの美形なのに臆病で自信がなく気の弱い、植物の好きな細縁眼鏡の天才少年サク。
工業高校に通うショウと、コンピュータ技術の申し子サクが出会って、意気投合するのに時間がかかるわけがない。

何者をも寄せ付けない圧倒的な知識とスキルによって次々とソフトを開発していくサクと、彼の苦手な交渉や英語での対話を一手に引き受け、ただひたすらに彼を支えるショウは、まさに二人でワンセットのユニット。
そしてその二人の類稀な才能に、自分の生涯をかけるつもりで全面的にバックアップするハサウェイ。
この物語に出てくる人たちの熱い熱い想いが、文章の隙間から溢れ出してオーバーフロウ状態になっている。


ぶっちゃけてしまえば、この世界は1と0、ONとOFF、ただそれだけだ。
ただそれだけのものだが、悪いことに使えば犯罪、それを防止するために使えばセキュリティとなる。
白になるか、黒になるか。力を持つことはそれを選択する事でもある。
そんな極めてシンプルな事を、濃密な人間模様で伝えてくるのがこの物語だ。

サクの純真無垢にテクノロジーを追い求める姿に惹かれるショウも、徐々に彼の想像を絶する領域にまで踏み込んだ哲学に理解が追い付かなくなり、遂に事件が。

そんな事件を取り囲む多彩なキャラたちもこの作品の見どころ。
ショウには呪文にしか聞こえないような独り言を繰りだすヲタク技術者。
頭のイカれた(ように見えるが腕は確かな)ヤブ医者。
どう考えてもヤバそうな連中と渡り合ってるとしか思えない情報屋。
仮面をつけた車椅子の謎女性やら自衛隊まで飛び出す始末。
彼らの繰り広げる、手に汗握る格闘シーンや銃撃シーンに、ハリウッドも真っ青。

かと… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

 この物語はサイバーセキュリティーを題材にして募集されるコンテストという入り口から執筆されている。僕はIT業界のことについては門外漢ということもあり、この物語を読んで楽しめるかどうかが、初めは不安だった。

 読み進めるにつれてその不安が杞憂であったことにすぐ気がついた。話を楽しむ肝となるサイバーセキュリティーに関連する用語や、それらが何を目的に仕組まれて、何を成すから怖いのかを、本文では噛み砕いてわかりやすく説いている。

 この『何かが目的で仕掛けられた』ものからの解決を『わかりやすく説く』ことが、主人公たちの行動に沿っているため、読み進める楽しみも合わさり、とにかくストレスなく世界の空気に慣れることができました。

 話の起点から着地点にかけて、心惑えどもブレない書き方は、最終的に勝ちに行くファイターのそれに近いと感じます。さすが。

 セキュリティー問題にしろ、武術にしろ、それらをよくよく知ろうとするきっかけは、たいてい痛い目を見たときだったのを思い出しました。物語の内容になりますが、錬磨なキャラクターたちも最初は痛い目を見て今の姿になっていき、物語の中で各々が痛い目を見ながら解決策を模索、達成していく(いこうとする)流れは、そんな積み重ねを大事にする作者の姿勢がよく現われているのではないかと思いました。

 この物語の敷居は高くはありません。
 何かを為すために試行錯誤する戦う者たちの物語です。
 ジンジャーエールを友にしながらの一読をお勧めいたします!
 面白かった!

★★★ Excellent!!!

すっごく面白い小説です。
個性的なキャラクター、先を読みたくなる展開、ピースがきっちり合うミステリーの快感、すべての要素が一級品です。

とくに面白いと思った点は、既存のIT技術だけで技術者が世界の危機を起こし、それに立ち向かうのもまた技術者であるというリアリティーラインです。
草なぎ素子的な電脳戦の物語を否定するわけではないのですが、既存技術だけで書くという枠が、逆に物語の創造性を高めているように思います。

また、最後の戦いにおいて、ハリウッド的な文法からすれば悪は主人公の影であり、主人公の中にある悪(混乱と破壊を望む志向)を倒してカタルシスを得るのが一般的な作劇法だと思いますが、あえてそうしないことがこの作品の魅力を増していると思いました。
ラスボスであるかれはまさに、“そう”しなければ生きてゆけなかった。その分かり合えなかった圧倒的な寂寥感、善と悪のあやふやな淡いに、ハードボイルドを感じました。

つらつら感想書かせていただきましたが、基本は読みやすくて先が気になるエンタメなので、ぜひ読んでみてくださいませ。人生の糧になるような小説だと思いました。

★★★ Excellent!!!

ハッカーによってもたらされた大災害の場面から話は始まります。
どうしてこなったのか、その経緯、背景を辿りながら目前の攻防へと歩んでいく。

面白おかしい要素を持った人たちと、渋い道を歩んでいく主人公。
技術者とその周りの人が持つ想い、葛藤、痛快さもしっかりとある物語。
胸が熱くなる場面多数、ポの字の場面も有り。

セキュリティの技術者ではないですがが、片隅の技術者としては震える事案。来ないと思いつつも、いつか来る脅威。いや、来ないでw

現実にある会社名、ソフトなどの名称が出ているのでそのまま使われているのでリアリティがあります。あ、悪い方向で出ているブランド名は無いですね。そこは架空の名称が使われているようです。

読んでいて面白く、勉強にもなりました。

専門用語はググってください。
もしくはそういうものがあるのだと思ってくれれば良いかと思います。分からなければ読めないというものでは無いと思います。

★★★ Excellent!!!

IT技術は急速に発達し、現代の社会を支える重大な基盤となっている。
そんな社会に生きながらも、恥ずかしながら私はITに関わる知識に疎い。
高度な専門用語が飛び交うその世界は、遥かな高次元に位置するものに感じられた。
この物語も、最初はそんな自分よりも遥か遠い世界の出来事を描いた物語なのだろうと思っていた。

しかし読み進めるごとに、気づく。
これは思っていたよりもずっとずっと近く――現在の私達が生きている世界そのものなのだと。
IT技術は高次元の技術などではなく、身近な生活に網の目の如く張り巡らされている。
この物語の登場人物達は、私達と同じくそんな世界に生きている。

ショウとサク――二人を中心とする登場人物達は、それぞれに高度な技能、知識、能力を持つ。
けれども彼らは、未知の技術を扱う超人などではない。その姿はどこまでも等身大で、息吹まで感じられそうなその描写は彼らが確かな血肉を持った人間であることを実感させてくれる。

この物語に、正義の味方だと完全も言い切れる存在はいない。
禍々しい企みをもった巨悪もいない。
ここに描かれているのは苦悩の末、なにか譲れぬもののために白――あるいは黒の帽子を取った人間の姿だ。
デジタルに彩られた彷徨の果て、固い絆で結ばれていたはずの二人はそれぞれ別の色の帽子をとる決意を下す。

この物語はわかりやすい説明やスリリングな展開を通じて、現在のネットワーク社会が実はとても危ういものであることを伝えている。
けれども、決してそれだけではない。

迷い、悩み、足掻き、それでもこのハイテク社会で情熱を燃やす人間たち。これはそんな不器用だけれども熱く、刺激的な人間達のほろ苦い生き様を描く――まさにジンジャーエールのような作品だと思う。

★★★ Excellent!!!

才覚ある人間の不器用な面の全てをサポートしてその才能を存分に揮わせる、そんな立ち位置の主人公を書かせたら梧桐さんは天下一だと思います!!!!
主人公ショウは、情報技術だけに無垢に生きるサクに心惹かれ、サクの力を発揮させることに自分の人生を賭ける。だがサクの哲学はショウの想像を超えていく……。そんな二人の関係性がとても好きでした。自分の理解を超えた生き方をするサクだから、ショウは心惹かれている。だからこその結末に胸打たれます。そしてサクも、自分の生き方を貫く一方で、ショウのことを認めていたんだなと。だから、受け入れたんだと私は思います。また、ショウの恋路もとても切なかった。子どもの顔を見てみたいと思いました。

★★★ Excellent!!!

サイバーセキュリティの世界にいた2人の男。時代、思想、信条、さまざまなものが絡み、2人は別々の道を歩む。主人公のショウが、誤った道へと向かうサクを追い、壮大な事件に巻き込まれていくストーリー。

叙情的な文も、軽妙なギャグもとても素敵だけど、自分には洋画を見ているようなセリフ回しと構成が一番ハマりました。ジョークも皮肉もどこかハリウッドのような、伏線の回収は脚本の妙味のような。読むと同時に脳内のスクリーンが鮮やかに彩られるでしょう。

人間味溢れるキャラクターも役者揃い。皆さん、この「読む劇場」をお見逃しなく!

★★★ Excellent!!!

ITという力。今や当たり前にあるインターネット。それは善意も悪意も等しくつなげてしまう為、人々は新たな脅威に知らず直面している。

それを護るべき力、セキュリティ技術。目に見えない分だけ軽んじて見られそうで、その実世界を揺るがすような力になり得る。そして作り上げる人間の心ひとつで都市一つを麻痺させる――。

セキュリティの驚異をここまで魅力的に描けるその文章力。魅力的なキャラクターに、何よりも凄まじい知識量を背景にした納得の描写。私個人も技術者なのですが、作品に対する熱意とその知識量にはまさに帽子を脱がざるを得ないものでした。

本当に端的に言ってしまえば、この物語はとある天才ハッカーが力を信奉した故に暴走してしまい、かつての相方が立ち上がりそれを防ぐというもの。

しかし上記のまるで人生を描いたかのようなキャラクター描写と、圧巻とも言える知識量。そして何より、人とは勧善懲悪ではなく、戦いの後の心の寂寥感すらも描いているのが作品の魅力を何十倍にも膨れ上がらせています。



これは、素直にお金を払いたくなるような完成度。



作者の人生観をも垣間見れるような――技術シンギュラリティ、またはITテロというフィルターを通した「人と、技術」という大きな哲学を有様をバーンと打ち付けられたような本作。

万人に読んで欲しい。立ち上がって拍手を送りたい作品でした。お見事!!

★★ Very Good!!

決して読後感は良くありませんが、ストーリーは結構練られていて面白く読めました。
セキュリティに関しても、結構書けていると思いますし。
最後の最後、もう少し長くても良いんじゃないかなぁと思いましたけれど。

最後、職場が舞台になるとは思ってもいませんでした(^_^;)

★★★ Excellent!!!

専門知識やストーリーなど、サイバーセキュリティ小説としてのバランスや質、重量感が良くて、一気に読ませて頂きました。
伏線回収のシーンなどには目を瞠るものがあります。
登場人物たちも個性的で楽しいです。男二人の友情はもちろんですが、特に女性陣はその運命も含めて必見だと思いました。

★★★ Excellent!!!

SFだよ、SF!
え、これ現代ドラマなの?!
現代の科学ってここまで進んでるの?

っていうアナログ人間の私ですが、面白くて、グイグイと引き込まれます。
火炎瓶やゲバ棒は一切使わないハイテクテロは、もしかしたら明日起こるかもしれないという警鐘を鳴らすような作品です。

個人的には、アルトを主人公に据えたスピンオフとかも読んでみたいです。

★★★ Excellent!!!

本作は、サイバーセキュリティを題材に、現実のネットワーク社会への警鐘を鳴らす意欲作である。

それと同時に、一級のエンターテインメント作品としても成り立っている。

私はIT用語にはとんと疎い方だが、それでも彼らの扱う製品や現状がどういうものなのかは理解できたし、用語に馴染みがないからといって読むスピードを落とすこともなかった。
一方、この業界に詳しい人であれば、さらに一層この作品を楽しめたのだろうなと思うと少し悔しくもある。

主人公とその友人である天才プログラマーは、かつては共に育ち、共に夢を追っていた二人だったが、ある地点から別々の道を行くことになる。
彼らが再び対面したとき、彼らが被っていた帽子は一体何色だったのだろうか。
黒か白か。
私には、あそこまでのことを起こした彼でさえ、かぶっていたその帽子は白だったように思えてならない。

★★★ Excellent!!!

 サイバーセキュリティと聞いても、他人事でしかないくらい、わたしはITに縁遠いです。(実際、作中に出て来る専門用語のほとんど理解できてないです。たぶん)
 なので、IT技術で人が死ぬなんて、SF映画のスクリーンの向こう側ほど遠く離れた世界の出来事でした。

 プロローグを読み始めた時は、まさにテレビ画面の向こう側で遠く離れた台風のレポートを眺めているくらい、身近に感じることのない脅威でした。
 が、読み進めて引き込まれていくうちにどんどん肌で脅威を感じるくらい実際に起こりうるかもしれないことに、殴られるように気づかされました。

 ショウとサクの関係が、ケルト神話のクー・フーリンとフェルディアが蘇ったのではないかと胸が熱くなりました。
 そんな胸が熱くなるほどの人間ドラマは、専門用語が理解できなくても、普段日常生活で感じることのない、IT関係で奔走している人たちの息遣いすらも感じさせてくれました。

★★★ Excellent!!!

「さいばーせきゅりてぃってなぁに?」と口をポカンと開けちゃうITど素人の私。
そんな私でもハラハラしながら物語の縦糸を楽しめちゃう巧みな筆致と、ラクシュかわいい最高・ハサウェイったらイケおじたまらん、と楽しくキャラ読みできちゃう味わい深い登場人物たちの横糸。

織りあがった物語はまさに極上のエンターテイメントです。
「サイバーセキュリティ」なんてよく分からんという方にもおススメしたい一作。素敵な時間を味わえますよ!



★★★ Excellent!!!

素晴らしいの一言。

本作はサイバーセキュリティという、作者の知識量の誤魔化しが全く効かない領分を扱った作品であり、例え豊富な知識を有していたとしても、その専門的な知識や用語を読者に理解出来るよう、リアリティある描写で伝えきるのは至難かと思います。

本作は、サイバーセキリュティ小説という難しいジャンルに求められるそれらの要求をほぼ完璧に満たしつつ、エンターテイメント小説としてのハッタリや演出。創作ならではの遊び心なども随所に取り入れた非常にハイレベルな作品です。

作品の中身に言及させて頂くと、ハードな世界観と展開というメインの柱に、人と人との繋がりや絆といったものがまるで呪縛のように絡みつく、ドライとウェットの見事なバランス感覚が凄まじい中毒性を発揮しています。

掴みから面白い!と思いましたが、後半になるにつれどんどんと先が気になり、読みたくなり、もっともっとと続きを求めてしまいました。

本作はより多くの人に読まれるべき作品だと断言できます。
攻殻機動隊やアキラで育った今の30代、40代には勿論、中高生くらいの若い世代に対しても明確な訴求力があると感じました。

最後に、本作を通して素晴らしい時間を頂戴したこと、心から感謝します。ありがとうございました。

★★★ Excellent!!!

セキュリティセキュリティと世界がオウム返しのように叫ぶその理由。
そしてその意識が個人単位で極めて低い日本を始めとする諸外国。

未遂ではあるものの、既にプロローグのような事件が起きる程のクラッキングは何度も発生している世界に私達は住んでいる。
その事を常に認識し、どんな企業であっても小さな個人でも、オンラインである限り、どれ程の危険と脅威が待っているかを認識するために読んでいただきたい。

インターネットはかつて弱い一個人が大企業を、権力者を告発出来るという力をもたらした。
しかし今はもうネットに情報の殆どが集約し、ネットワークに移行出来うる物はすべてされてしまった。
セキュリティを軽んじ、それを突破されれば、誰しも財産はおろか生命すら侵される。
ネット越しに人は殺せるどころか、殺戮できてしまう。
今はただ、それを実行する化け物がいないだけであるという警告をこの物語から強く感じた。

インターネットを活用する誰にでも知ってもらいたい。
この物語に出てくる専門用語はそれほど分からなくてもいい。
ただ、この恐怖は起こりうる事を強く認識して欲しい。

★★★ Excellent!!!

サイバーセキュリティは確かに面白いネタだ。現代よりはもうちょっと技術的、SFよりはもうちょっとリアル。

その一方で、サイバーを扱うにはその匙加減が大変に難しい。
あまりにも簡略化しすぎてもリアリティが薄れるし、かといって詳細に書き過ぎても一般向けでなくなってしまう。加えて一口にサイバーだとかITだとか言っても、実際のところはとてつもなく広い範囲におよぶ。下手に取り扱えば本職の技術者から「いやそれは流石におかしい」とツッコまれかねない。

しかしながらこの小説はその問題を絶妙な配合で取り扱っている。
前半部分では一話ごとにすでに実現されているITガジェットが一つは登場する。連載中は一話読み終わる度にそれらを検索して「ははぁ、こんなものが世の中にはあるのか」と時代の流れ、最先端の技術を感じたものだ。しかもそのうちのいくつかはクライマックスへの伏線にもなっている。
いわゆるサイバー攻撃の場面については、簡単すぎずしかし難しい領域に踏み込むことなく描かれている(多分)。この配分は至極適切なものだと思うし、私自身も「ここはこの程度の描写で十分なのだ」と気づかされた。もちろん前提知識が豊富になければ取捨選択はできないことだが、悪しきハッカーがどのように他者を攻撃するか、その技術的背景は物語を進めるうえで重要ではないのだ。

というのも、どんな技術も道具も結局はそれらを扱う人間次第で善にも悪にもなる。
前置きが長くなったが、本作はつまりそういう話だ。

そもそもなぜサイバーセキュリティは必要なのだろうか。
それは必ずしも技術が有益な目的だけに利用されるわけではないからだ。いつだって必ず、それを悪用する人間は存在する。

ゆえに作中でも触れられるしタイトルにもなっているが、「どちらの色の帽子を取るか」というのはサイバー技術者に限らず、例えば格闘家であっても、常に心すべき問いかけだ。特殊… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

IT技術により、東京が天災に近いダメージを負い、人が死ぬ。
そんな危機的状況を、近未来でもSFでもなく、今ある技術で描くという衝撃的な作品です。

コンサルとIT技術に長けた二人の若者が主人公と聞けば、シリコンバレーで成りあがったようなベンチャーの物語かなと思い浮かべますが、彼らはその先にある、ホワイトハットかブラックハットかの決断に迫られます。

それぞれが考え、選択した結末は、悲しくもあり、爽やかでもあり。
作中で登場する、辛味が強い炭酸飲料であるジンジャーエールのような読後感をいただきました。

★★★ Excellent!!!

夢と理想から始まったショウとサクの物語。
同じ道を歩んで来たつもりが、気づけば真逆の道を選んでいる。
見つめる対象がほんの少し違うだけでその角度は開いていく。

様々な要因によって無数に枝分かれする人生における選択。

正義か悪か、現実か理想か、友か愛か、そして意地か矜持か。
これは彼らだけでなく、いつの時代を生きる人々にも訪れるものである。

さて、何かを変える力を得た時に、果たして自分は何色の帽子を選び取る事ができるだろうか。

★★★ Excellent!!!

※ネタバレ注意!※

近年のIT技術やAIなどの発達はめざましく、数年先ですら私たちの生活がどう変化しているのかちょっと予想できないぐらいです。

そんなめまぐるしい変化、技術の発達は、私たちに恩恵を授けてくれますが、もしも悪意ある人間がその技術を恐ろしいことに使ってしまったら……どうなるでしょうか。
この小説は、そんな恐怖が最悪なかたちで実現してしまう物語です。
実際に悪質なハッカーによる被害は現実世界でも出ていますし、AIを搭載したロボットを軍事利用しようとしている国々もあります。

技術は本当に人を幸せにしてくれる道具なのか。

答えはNOであり、YESでもある。どちらでもあり得る。だからこそ、私たちはYESとなる選択をつかむ必要がある。
私は、この物語を最後まで読んでそう思いました。

人間には技術を使ってたくさんの未来を創り出す力がある。その可能性を持っている。ただ、進むべき道を踏み外してしまうと、技術は誰かを不幸にする凶器と化してしまう。大切だった人間すら傷つけてしまう。

だからこそ、明確な意志を持って、
「自分は未来を創り、人の役に立てる人間になる」
という生き方を選び、道を踏み外さないようにしなければいけないのでしょう。そして、次の世代へとその意志を受け継がせていかなければならないのだと思います。
作中でハサウェイという人物が「黒の帽子を取るな。白の帽子を取れ」と主人公たちに告げますが、私は彼の言葉をそう解釈しました。

主人公の二人は、最終的に袂を分かち、それぞれが別の「帽子」を取ります。
ずっと同じ道を歩いて来たはずの親友だったのに、彼らにはどんな違いがあったのか。これは私の勝手な考えなのですが、

一人の男は、愛する女と共に生きようとし、未来を望んだ。
一人の男は、愛する女への感情を押し殺し、破滅を望んだ。

……ということだったのかも知れません。… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

サイバーセキュリティコンテスト参加作品の本作。
それなのに「その色の帽子をとれ」というタイトルはどういうことなのか?
この興味から、本作への没入は始まることになる。

同じものを目指していたはずの二人の男が、いつか道を違え、そしてその先で対峙する……
香港映画の傑作「男たちの挽歌」を例に出したが、こうしたプロットが人気が高いのは、それが現実の世界でも多くの悲喜劇を生み出すシチュエーションだからだろう。

それは男のロマンなどという陳腐な話だけにとどまらない、人間が協力しあい、ぶつかり合いながら文明を作り上げていくプロセスが描かれているのだと思う。


そもそも、技術者というのは多分にロマンチストだ。
夢想を現実にすることこそが仕事なのだから、それは当たり前かもしれない。

「その色の帽子をとれ」……内容を読めばわかるが、サイバーセキュリティコンテスト作品としては多分に叙情的なタイトルとテーマが、そしてエンジニアのロマンが、そのロマンを追い、人間が文明を作り上げていくプロセスが、描かれている。普遍的なテーマを持った傑作だと思う。


作者は格闘小説を多く手がける作家として、カクヨムでは知られている。
しかし、現実のセキュリティエンジニアリング、そしてその周辺を取り巻くビジネスとカルチャーを精細に描き、ガジェットをもあちこちに配置した本作のディテールは白眉。これは素人が取材したレベルでは書けない。

そのディテールの中で活躍する、男たちの叙情は、それこそこの作者の独壇場。真の意味で、この人にしか書けない作品。

ヒロインとの関係性や、脇を固める登場人物たち、彼らとのやり取りもカッコいいし、そして毎話の最後には必ず、何かが込み上げてグッとくる。

今、2018年という時代に読むべき作品のひとつだと思う。




やー面白かった!!