サイバー犯罪の最先端がここにある!

ITセキュリティを得意とするエンジニア、進藤将馬。以前勤めていた会社は潰れ、フリーとして活動中だった彼に元同僚から仕事の依頼が持ち込まれる。その仕事の内容は、将馬が持つ特別なセキュリティソフト『クー・フーリン』を売ってほしいというものだった。ソフトの販売権は彼にあるが、製作者である友人の木更津は『僕は殺される』というメッセージを残し一年前に行方不明となったまま……。そんな中、朔の手掛かりを知る謎の女性が将馬の前に姿を見せ……。

サイバーパンクという言葉が誕生したのは1980年代中盤。それから約35年が経った現在、多くの人々が当たり前に大容量の携帯端末を持ち、街中にwi-fiの電波が飛び交い、家庭では光回線が引かれ、声で呼びかけるだけでスマートスピーカーが様々なことをしてくれる。宇宙人はやってこないしタイムマシンもまだできていないが、それでも我々は当時夢想されたSFとかなり近い世界に生きているのだ。

そういう意味では舞台は現代だが、最新のIT技術とネットワークを駆使した犯罪劇を描く本作は立派にサイバーパンクの系譜を引き継いでいると言えるだろう。登場人物もハッカーに闇医者や情報屋、ギーグの女性IT技術者と胡散臭くも魅力的な人間が盛りだくさん。社会と上手く馴染めない人間たちが優れた技術を手にしたとき、どのように生きるのか? 彼らが織りなす人間ドラマと最新技術による極上の犯罪劇をとくとご覧あれ!


(「サイバーパンク的な近未来にひたれる作品」特集/文=柿崎 憲)

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