技術は人の悪意で災厄を招く。しかし、未来を創るのも技術と人だ

※ネタバレ注意!※

近年のIT技術やAIなどの発達はめざましく、数年先ですら私たちの生活がどう変化しているのかちょっと予想できないぐらいです。

そんなめまぐるしい変化、技術の発達は、私たちに恩恵を授けてくれますが、もしも悪意ある人間がその技術を恐ろしいことに使ってしまったら……どうなるでしょうか。
この小説は、そんな恐怖が最悪なかたちで実現してしまう物語です。
実際に悪質なハッカーによる被害は現実世界でも出ていますし、AIを搭載したロボットを軍事利用しようとしている国々もあります。

技術は本当に人を幸せにしてくれる道具なのか。

答えはNOであり、YESでもある。どちらでもあり得る。だからこそ、私たちはYESとなる選択をつかむ必要がある。
私は、この物語を最後まで読んでそう思いました。

人間には技術を使ってたくさんの未来を創り出す力がある。その可能性を持っている。ただ、進むべき道を踏み外してしまうと、技術は誰かを不幸にする凶器と化してしまう。大切だった人間すら傷つけてしまう。

だからこそ、明確な意志を持って、
「自分は未来を創り、人の役に立てる人間になる」
という生き方を選び、道を踏み外さないようにしなければいけないのでしょう。そして、次の世代へとその意志を受け継がせていかなければならないのだと思います。
作中でハサウェイという人物が「黒の帽子を取るな。白の帽子を取れ」と主人公たちに告げますが、私は彼の言葉をそう解釈しました。

主人公の二人は、最終的に袂を分かち、それぞれが別の「帽子」を取ります。
ずっと同じ道を歩いて来たはずの親友だったのに、彼らにはどんな違いがあったのか。これは私の勝手な考えなのですが、

一人の男は、愛する女と共に生きようとし、未来を望んだ。
一人の男は、愛する女への感情を押し殺し、破滅を望んだ。

……ということだったのかも知れません。

大切な物を守るために自分の技術で未来を創り出す。そんな社会が来て欲しいと思うし、私もその社会を担う人間の一人になりたいと思います。
物語内ではたくさんの悲劇が起きましたが、この小説の本質は「未来への希望」なのではないでしょうか。

技術は人の悪意で災厄を招く。しかし、未来を創るのも技術と人だ。
大丈夫。私たちが白の帽子を取り続ける限り、未来には希望があるはず……。

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