本作の主人公は安千谷隆。彼はハードボイルド探偵を気取っている大学生。夏場に中折れ帽にトレンチコートという常識では考えられないような姿で活動しています。
そんな彼の元に依頼を持ち込んだのは、高校生ギャル・鏡峯めぐみ。彼女は容姿はギャルでありながら心優しい常識人。視点人物は安千谷なのですが、読者が共感できるのは圧倒的に鏡峯の方かもしれません(笑)。
彼女が持ち込んだ依頼は「友人の山村夕子と半年前から連絡が取れないから原因を調べてほしい」というもの。ブロックされているわけではないけど、どんな連絡手段を講じても無視されるという。
依頼を受けた安千谷は、聞き取り調査をしながら夕子や鏡峯の周辺の人間関係を徹底的に洗っていきます。彼の「自分の足で捜査する」姿勢はまさにハードボイルドの王道。
彼は鏡峯と一緒に調査を進めるなかで、少しずつ夕子の抱える秘密へと近づいていきます。
それは本当は知らない方が良かったような切ない真実で――。そしてラストで読者を待ち受ける意外な結末とは。
地の文の文体が徹頭徹尾「ハードボイルド気取り」感満載なのが凄いです。それでいて非常に読みやすい作りになっています。さすがは書籍化作家としか言いようがありません。お見事でした!
大学でハードボイルド同好会の所属する主人公は、妹の仲介により、連絡の取れないギャルの捜索を依頼される。
依頼人のギャル高校生とともに、行方を探す主人公たちが探し当てた真実とは……
……なんて改めて書くと、うはあ、タイトルにまったくそぐわないや、と笑ってしまった。
さらりとハードボイルド気取りの素人大学生とギャルというコンビを創作した作者さまの、センスのよさに脱帽。
最初はこの取り合わせはどうだかねぇなんて思ったものの、読むすすむうちに、この事件は、まさしくこの組み合わせであるべきだと思いいたり、両者の会話のかみ合わなさに、思わずニヤリとするはず。
ハードボイルド好きなら、ギムレットの一言にしびれるだろう。
ラストは秀逸。
気持ちよく読める一作。
めっちゃ面白かったです!
主人公はハードボイルドな探偵になりきっている大学生。
妹の仲介で、ある女子高生から音信不通の友達探しの依頼を受ける、というお話です。
女子高生がいわゆるギャルで、探している友達もギャル。
そんなアベコベな二人の応酬が面白いです。
地の文は、極めて理知的で硬派な印象ですが、それはハードボイルド探偵の一人称なので非常にしっくりきます。かと言って不思議と読みやすい文章なので、するする入ってきます。
ギャルとは当然価値観は合わないのですが、それでも随所に張り巡らされた伏線を最後の解決編でしっかり回収する展開は、鮮やかの一言!
そして、大団円を迎えると思いきや、意外な結末が!?
それはぜひ、皆様の目でお確かめくださいませ!
似非ハードボイルド探偵が、ヒロイン(ギャルの女子高生)に頼まれて行方不明(?)の少女を捜索するストーリーです。
主人公の探偵は、ハードボイルドの世界観にどっぷりと浸かっていて、明らかに言動がおかしい(笑)。ギャル系ヒロインのめぐみちゃんも大いに戸惑います。
ハードボイルドを気取っているはずなのにカッコよく見えないのは、小説のタイトルにある通り、彼が「偽物ハードボイルド」だからなのでしょう。
しかし、そこが逆に滑稽であり、皮肉的に面白い。主人公(似非ハードボイルド)とめぐみちゃん(ギャル)の会話劇は、ぜんぜん噛み合っていないはずなのに、軽妙で楽しく読めます。
ミステリー物なので、終盤に物語の「答え合わせ」があるわけなのですが、ラスト2話は色んな意味で衝撃的。大どんでん返し(?)が待っています。しかも、2度ほど……。
読み飛ばしたりせずに、ちゃんと順番に読みましょう。
あと余談ですが……。
坂神さんの他の作品や近況ノートを読んでいる人は、ある特定の箇所で「やっぱりこの小説、坂神作品だわ!!!!!!」と思わず叫んでしまうことになるので、坂神さんの作品を追いかけている方は注意しましょう。
坂神さんの小説って知っていて読んでいるはずなのに、ふしぎふしぎぃ~♪