概要
英国中部の町ノッティンガムのガレット伯爵家に生まれ、シェフィールドの寄宿学校に通う十七歳の少年マーカスのもとに、ある日、美貌の麗人シェリルが現れる。オックスフォード大学のさる教授の代理人を名乗る彼女は、マーカスの大学進学を斡旋してくれるという。突然降って湧いた話に不審を抱きつつも、シェリルの美貌に魅せられたマーカスは教授との会見を承諾する。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!ロマンとオカルトに満ち溢れたシャーロック・ホームズ外伝
この小説は、シャーロック・ホームズ『最後の事件』を題材にした、いわゆるパスティーシュです。ホームズの宿敵、ジェイムズ・モリアーティ(作中では『教授』とだけ呼ばれている)を師と仰ぐ青年マーカスの視点で描かれています。
本作の大きな特徴としては、フリーメイスンやテンプル騎士団、アトランティス大陸などといったオカルト好きの人――特に、私みたいな某有名オカルト雑誌の愛読者――が喜んで飛びつきそうな要素が物語にふんだんに盛り込まれていることです。
ただ、このオカルト要素は、シャーロック・ホームズの物語と全くの無関係ではありません。作者であるアーサー・コナン・ドイル自身がフリーメイスンのメンバーだっ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!悪の側から描かれる、珠玉のホームズ・パスティーシュ
『教授』。この単語を見ただけで、ホームズファンなら誰のことか容易に察せられるであろう。そう、これはホームズの宿敵、モリアーティの側から描かれるパスティーシュである。とはいえ、主役はモリアーティではなく、彼に心酔する田舎育ちの青年マーカスである。
美しき秘書シェリルの導きにより教授と出会ったマーカス。初対面から哲学対話を繰り広げる教授を前にマーカスは面食らうが、その圧倒的な叡智に触れる中で次第に彼に心酔するようになる。だが、教授との交流を続ける中で、彼が英国全土を揺るがすような恐るべき計画を企んでいることが明らかになる。さらにマーカス自身の家系と計画との関連も明らかになり、青年の心は揺れる。純…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ひたひたと押し寄せる闇の気配
「JM」。彼は決して「悪」の一言で語り切れるような男ではない。
彼には彼の信念がある……本作への第一印象はこれです。
ドイル氏が描かなかった彼の心の奥底がじわじわと滲み出てくるようです。
隙のない文章に脱帽です。いちシャーロッキアンとして、興味深く読ませて頂きました。
彼の、形のない「神」というものに決して抑圧されることのない凄まじいまでのその才気は、どこへ行き着こうとしているのでしょう。
純真なる学生ガレットを「助手に」と望むそのわけは?
彼と不思議な美女・フルブライトとの関係も意味深です。
静かな、でも何かが蠢いている闇の気配。それがひたひたと近づいてくる。
私は暗い物語が苦手なはず…続きを読む