令和に蘇る昭和の思い出。父と娘が紡ぐ懐かしエッセイ

 著者のみさきさんは父と娘のふたり暮らし。父親の泰造さんは昭和40年生まれ。そんな父親との会話からこぼれる昔懐かしい昭和に流行ったCMや人気商品などの小話をまとめたエッセイです。

 令和の世ではまったく伝わらないであろうジェネレーションギャップ全開な昭和ネタの嵐がおかしく、懐かしさがこみ上げてきます。

 泰造さんが子どもだった頃は、仮面ライダーカードに夢中になっていた。流行っていた漫画といえば、手塚治虫の『ブラックジャック』、水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』やアニメの『科学忍者隊ガッチャマン』など、名作揃い。近年リニューアルされた作品も多く、映像が綺麗になった驚きは当時を知らないと味わえない感動でしょう。

 人気ロックバンドやアイドルに熱狂した青春時代の思い出に浸ったり、流行語になったお笑い芸人の持ちネタだったり、昭和を語り出したら止まらない泰造さんの引き出しの多さに感嘆させられます。

 昔の話ばかりする父親に娘のみさきさんは呆れていますが、それって昭和の一日一日を大切に生きていたからこそだと思うんです。せわしない現代の流行は一瞬で過ぎ去って忘れてしまう。しかし泰造さんは、ジョン・レノンが亡くなった日のことを昨日のように覚えている。とても素敵なお父様じゃないですか。いつまでもお元気で、たくさん親孝行してください。


(「昭和レトロ」4選/文=愛咲優詩)

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