まるで師弟のような2人のやり取りを追いかけ回せば、イッキ読みは不可避でしょう。
気付けば、自分の青春時代の記憶をも掘り返したり、彼らの並々ならぬ野望への行動力にスマホの画面へエールを送ったりしていました。
東条先輩の批評がストンと頭に入ってくる爽快さ、キレキレの長文語りが癖になります。
そして、彼の学生として授業を受ける姿や、いつもどのように過ごしているのか。
その裏側まで気になるほどキャラに惹き込まれました。
私は人のレビューをこうしてお送りするのは、初めてのことでして⋯⋯⋯⋯件の先輩も顔をしかめるほど拙い文だとは思うのですが、私も彼のように思ったことを届けたいと願います。
作者さまと素敵な物語に感謝を。
ありがとうございます。
文芸部に所属する女子高生の栗棟乃愛と、毒舌家の先輩・東条鼎が繰り広げる小説家を目指す高校生たちの学園ラブコメです。
小説家を目指す乃愛は、自作の小説を新人賞に投稿しては落選を繰り返している。そんな彼女の作品の未熟な部分を先輩である東条鼎は冷ややかに指摘する。かくいう東条本人も新人賞で落選しているのですが、文章力は東条のほうが上だから乃愛は屈辱を甘んじて受けねばならない。
自分にも他人にも常に厳しい東条ですが、どんなに批評をつけても諦めず、食らいついてくる乃愛のことを内心では気に入っているんですよね。ツンデレな東条先輩と負けん気が強い乃愛、毎日のようにお互いの主張や意見がぶつかり合う文芸活動が熱くて楽しいんです。
ただでさえ二人っきりの文芸部なのに、創作のためと称して水族館に行ったり、お互いの性格もわかり合っていて、お似合いではないですかねぇ。ラブコメの波動を感じます。
東条の指摘で次第に上達していく乃愛、乃愛の存在で人との交流を学んでいく東条。先に夢を叶えて小説家になるのはどちらか。若き二人の創作論が眩しいです。
(「これが私の創作道」4選/文=愛咲優詩)