タイトルの意味を悟った時の、平手打ちされたような衝撃

美しく残酷で、それでいてドライ。このサラサラと乾いた感じが、草さんの味だな……という一編。
「身障者が身を寄せ合う村」という舞台設定がなかなか厄いものの、うまいこと突っこみすぎず二人の逃避行や、ヒロイン・レオノールとのやり取りに終始するバランス感覚がさすがでした。

「神の花嫁」であるレオノールは純真無垢そのもので、彼女の美しさや言動そのものは、おとぎ話のお姫様のようにキラキラしています。
 ナマの生きた人間と言うよりは、銀とガラスの人形のよう。
 でもそれは非人間的だとか、血肉の通わないキャラクターという意味ではなく、「非現実的なまでに無垢な、しかし生きた人間」として作中で動いています。

 それを更に補助しているのが、現実のままならなさ、ろくでもなさを背負い、彼女を連れ出した主人公ベリス。
 最初から破滅が見えている逃避行に、それでも身を投げ出してしまいたくなる美しい人。旅の終わりに残ったのはただ靴だけ。

 純粋な善意や賛美歌のような愛ではない、だが人の血のぬくもりをもったささやかな願い。それが神の作った世界の、ただそうあるべしという力学のままに壊される。

 主人公自身が何の瑕疵もない善人ではなかったとはいえ……このしんしんとした冷徹さの向こうに、青みがかかった静かな世界が見えるような作品でした。

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