文章の形をした情緒破壊装置

 とある盗人と、〝神の花嫁〟として定められた人生を送る女性の、逃避行の物語。

 堅実な手触りのファンタジー掌編です。
 とにかく文章の美麗さがすごい。一見穏やかな、どこか淡々とした印象すら感じる文章でありながら、そこにみっちり込もったいろいろなあれやこれやの濃度の途轍もないこと!
 一文一文が濃いというか、読み込めば読み込むほど意味やニュアンスが滲み出る文章で、ただただ貪るように読みました。すっごい良かった……。

 ストーリーも見事というか、胸のど真ん中を撃ち抜かれてボコボコにされます。
 ここでは具体的には触れませんが(ネタバレ、というほどではないにせよ勿体無いので。ぜひ本文で!)、やっぱりキャッチコピーになってる箇所が本当に好き。
 具体的には、ベリスがレオノールを連れ出そうと思った動機。また、レオノールが大人しくそれを飲んだ理由。
 もちろん作中で語られてはいるのですけれど(むしろここまではっきり語っちゃっていいの!? と驚くほどに)、でもそこで語られた単純な言葉以上のもの、「彼女たちの実感としての機微」を想像するのがもうものすごく楽しい。というか、自動的に想像させられてしまうのがもう本当にたまりません。本当に良い……。

 面白かったです。とても読み応えのある作品でした。あとタイトルが好き。ていうかもう全部好きです。良かったー!