行間に漂う「好き」の気配

 九九の七の段が言えない彼女について語る、『僕』のお話。

 分量にしてわずか1,000文字、現代ものの小さな恋のお話です。
 書かれているもののシンプルさというか、この主人公の「彼女が好き」がひたすら伝わってくるところが大好き。
 直接的に好き好き言うわけではないのですけれど、彼女のことを見つめるその視点の節々に滲む、たくさんの「好き」がもう本当に読んでいて楽しくって……。

 文章の感覚というか、独特の節回しのようなものもの素敵です。
 さらっと出てくる「互いに素」とかとても好き。
 優しくておしゃれな恋の物語でした。