終わった恋の思い出に留まり続ける人のお話。
現代ものの掌編です。いわゆる「恋愛もの」とは趣が違うのですけれど(恋をするお話ではないので)、全編通してみっちり恋のお話。
既に過ぎ去ってしまったそれへの、ある種どうしようもない未練のようなもので構成された1,500文字です。
とにかくただひたすら自家中毒に陥っているというか、何か「膿んだ生傷をひたすらほじくり返すばかりでどこへも進めない」みたいな、このどうしようもない停滞がとても好き。
語られる個々の思い出に関しては、きっと読む人それぞれに似た経験があったりなかったりすると思うのですが、どうあれこの「本当にだめな状態に嵌まってる」感自体はバリバリ〝わかる〟のがもう本当に素敵。
決して明るいお話ではないのですけれど、だからこその湿度感みたいなものがたまらない作品でした。