第64話 必要な犠牲でした
九門詩織によってアフォガートが倒されたあと、暫くの後
倒れたアフォガートの肉体が爆散する。ただし、その破壊力は凄まじいものであり
半径1キロメートルを更地に帰るほどであった
最も、近くに居た九門詩織にはそんなものは通用する訳がなかったことは言うまでもないだろうか
所詮はアフォガートはただの老兵。捨て駒に過ぎなかったと言う話である
「いやぁ魂消たなぁ……アフォガートがあんなに簡単に倒されるとは、いやはやわたくしの見積もりもすこぉし甘かったという訳ですか」
男は望遠鏡を片手に背負い、その様子を眺めては下駄な笑い声をあげる
「いやしかしやはり厄介ですなぁ……本当にあの異世界人たちは」
男の名は『ギルフォース・エレメンツ』
精霊をこよなく愛する組織、『エレメンツ・ヘヴン』の一人
対応する精霊は『ドワーフ』
彼らは『執行者』たちと非常に仲が悪い組織であり、カイザー・コウキを死ぬほど嫌っている組織でもある
彼らは『精霊魔法』を使用するもの達であり、そんな彼らにとって新たな精霊を多数持ち込んでくる異世界人は外敵なのだ
「世界には精霊は四体で良いと言うのに、奴らは大量に持ち込みおって」
既に世界のバランスは崩壊直前であり、その為か精霊が嘆き悲しんでいる
この元凶をどうにかせねばならない。その一心で彼ら『エレメンツ・ヘヴン』は動いている
「────ふふふ、ではわれも動くとしようか……そう、この女ミズカと名乗る女からウンディーネを解放してやるためになぁ!」
そう言うと、彼は空を飛びながらどこかに去っていった
◇◇
ちなみに彼の死体が見つかるのは2ヶ月後のことである
◇◇
「はぁ、アフォガートめ……やつは最後まで役目を果たせなかったな」
せめて1人ぐらい持って行ってくれれば今後より『執行者』が動きやすくなるというのに
女は呆れた顔で首を振る。
彼女は『執行者』達の裏ボスであり、そして世界の崩壊を促すものの一人でもある
「異世界人、奴らが来た時点でこの世界は崩壊する……それを推し進めるために練ってきたこの計画、最後の障害となるのがあの男『エイル』だ……」
『執行者』は元も異世界人を狩るための組織である。全ては世界の崩壊を見届けるためにの意思で動いている
表向きは彼女は『執行者』に力を分け与える役目を担う巫女であり
その裏の顔は世界の崩壊を願うもの
あの男、エイルとやらに接触する必要があるな。
彼女は世界をただ1人憎む物。腐りきった世界に終止符を与えるものを探すモノ
「───それもこれも、あのバカ上司が逃げちまったのが行けないんだってのに」
彼女は元々、世界の管理者側だったのだ
しかしある日、上司が蒸発した。全ての責務を投げ捨ててどこかに姿を消したのだ
当然そのせいで自らは地上に赴かなくては行けなくなり、そのせいで彼女の精神は少しずつ破壊されかけていた
「…………あんのクソ上司め、この世界を棄却したあとでみっちりと水責めにでもしてやる」
もしこの場にエイルがいたのならば、喜んでいたのかもしれない
女はイライラとしながら聖堂の外に出る
そしてそのからだを後ろから貫かれる
「?!き、貴様……は?!」
「────困るなぁ、世界を壊すだなんて……俺の世界に仕立てあげたいのにその邪魔をするなんてねぇ……」
「……ハッ!まさ……か貴様、貴様!」
女の肉体から神核を引っこ抜くと男は力を失い倒れ伏せる女を地下水路に投げ捨て、改めてため息を吐き出す
「────理一、貴様が一体いかなる方法で力を得たのかは知らないが……世界の管理者側の力に勝てるとでも?」
そう言うと、男
とあるコウキと呼ばれる男はその地下水路を後にする
「────これで揃ったのは『神核』『神体』『神装』……あとは『神脳』と『神精』のふたつか」
彼はクラスメイトを利用したとしても勝てるわけが無いとはなから理解していた
それならばこの世界の管理者の力を根こそぎ奪い取り、それを持ってしてやつ……理一を殺す
それの方が合理的なわけだ
男は死ぬほど合理的で、理知的で、そして非道であったのだ
「───その為には世界の支配者の力、世界の管理者の力を全て集めねば……」
男の言葉は地下水路をゆっくりとこだましていた
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