第6話 城下町とギルド

 次の日、俺は城下町に足を踏み入れる


「……これは酷い」


 正直、かなり酷いことになっていた。まぁ当然ではあるが王がいなくなり、それでも残った腹心たちだけで何とか王国を存続させようとするのははっきり言って無謀にほかならない


「……もし……騎士団長がいれば……まだやり方を教えてくれたのでしょうが……」


 話によると騎士団長は3ヶ月ほど前に行方不明になったらしい


「……ふむ……マキナ……いや?こう言うのは任せた『アビス』」


『はいはい任されましたよっと……どこにいるのかを突き止めたらいいのですか?……ふむ……』


「お主でも時間がかかるのか?……わらわの幻獣を使うか?」


『それは大丈夫……あ、見つけた……ふむ?……ちょっと待っててくださいね』


 アビスが探している間、俺たちは街を散策する。

 まぁどちらかと言うと生きてるやつ探し……と言うべきか?


 ◇


「……おや?これは……」


 少し歩いたところで俺は看板を見つけた。そこには『冒険者ギルド』と書いてあった


 だが、看板の近くにはそれらしいものは見当たらない


 もしや?と思い雪を手の風圧で払い除けると


「……ビンゴだったか」


 地下に繋がる扉があった。


 俺はそれをゆっくりと開けて中に入る。あいにく今回は着いてきている人が一人もいないが、まあ何とかなるだろう


 ◇


「……らっしゃい……待った、アンタ見たことない顔だね?……身分証を出してもらおうか?」


 門兵らしき女性に止められるが、逆に俺は聞き返す


「ふむ……いや失礼、まさか生きている人間がいるとは思わなかったのでね……案外賢いようだな」


「……それはアタシらをバカにしてるってことでいいかい?」


「おや、勘違いしないでくれ……俺はただメルバニアの王家の使いなんだ……」


「メルバニア?……へぇ?その名前をここで出すたぁいい度胸だなぁ!野郎ども!やっちまえ」


 そう言うと、彼女の合図に合わせてたくさんの武器を持った人間が現れる


「思ってたより人がいて安心した……おや?その武器に着いているマークは」


 俺はそのマークに少し興味が湧いた。何故ならば

 どう見てもあのマークは異世界人しか知らないはずのマークだったからだ


「……これかい?……まぁ冥土の土産にでも教えてやるよ!……ここら一体を取り仕切るマフィアのボスが作ってる武器だ!」


 なるほど、そのボスとやらは自分の名前に誇りでも持っているのだろうか?


「……だとしても漢字で青って書くか?普通」


 そう言いながら俺を殴りに来ている奴らを全員


「まぁうるさいし……『終末機構/重力波』」


 地面に全員めり込ませる。まぁそこまで強いやつでは無いから死ぬことはないだろうが。


「おい?何寝てるんだ?……ほらほら起きろ?」


 そう言って俺がその門兵に近づいたその時


「止まれ!貴様を排除する!」


 ぞろぞろと黒服の男たちが現れる。そいつらは全員服に『青』のバッチを付けていることから間違いなく件のマフィアだろう


「むー面倒臭いが……バアル……始末しろ」


「承知」


 その男達が動く前に、バアルの手で全員一瞬で無力化される


 まぁバアルなりのやり方故に腕とか足とかは異なる方向に曲げられていたりするのだが


 ◇◇


 そいつらを隅っこに縛ったあと、改めて当たりを見回していると


「死ね!コイツらめ!よくも俺達から金を巻き上げやがったな!」


「そうだ!お前らなんか怖くねぇ?!」


 ボコボコと気絶している黒服達を冒険者達が殴ったりけったりしていた。


 その様子をみて、改めて色々と思うことがあった俺はそいつらにヒントの意味で「ああそうそう、俺の名は理一だ」そう伝えるとその場を去る


 ◇◇


『おや戻りましたかマスター!……騎士団長の居場所特定出来ました!……えっと地下ですねこれ』


「ならさっき行ってみた場所の近くということか?」


『うーんあ、でもこれ瀕死ですね……うわこの姿で放置されるとか……こんな奴ら即刻始末すべきな気がしますが』


「アビスにしてはかなり過激な発言だね……まぁ君がそう思うのも無理はないか」


『私はあくまで皆を纏めるのが役目ですから……今は少しだけ過去の自分なのです』


 そう言って位置を俺の情報に追加してくれた。


「有難い……まぁ俺がスキルで全てを把握してしまえばいいのだが……それでは面白くも何ともないのでな」


『良い考えかと……マスター私は少しあのバカ……他の奴らが何かやらかしていないか見てきます』


 アビスはそう言うと城の方に戻って行った


「……で?お前はなぜここに来てる?『カオス』」


 俺は空間を裂きながら出てきたカオスにそう聞く。世界の時が止まる


『別に……?いや私の出番が無さすぎて退屈だったから来ちゃった』


「……お前を現界させると間違いなく面倒事が増えるからな……すまんな」


 カオスははっきりいってリソースを破壊してしまう。故に呼び出すことは滅多にない


『まぁ……少しだけ世界を見れたし……ふぁ……眠いから寝てくる……おやすみ『相棒』』


 俺はあぁ、おやすみ。とつぶやく


 世界の時が動き出す


 俺は改めてアイツらと戦った事を振り返り、よく我ながら勝てたな?と思った


「悪魔、悪神の類全てを統べる”バアル”」


「天使、神、神仏を統べる”ラジエル”」


「神獣、幻獣、生物全てを統べる”バハムート”」


「機械生命体、機構システム全てを統べる”マキナ”」


「魔術と魔法、神話の物語の化身”オーディン”」


「世界の理の外の存在、外界の化身”アザトース”」


「宇宙の侵略という概念の化身”アビス”」


 そして


「終末と宇宙の終わりの化身”カオス”」


 これら全ては終末世界におけるあらゆるものの頂点、超えるべき壁だったもの


 ゲームならば間違いなくラスボスなアイツらを俺はひたすら戦い、ある時は説得し……最終的に味方につけた


「……おや?」


 俺が懐かしいことを思い出していると、アビスからメールが届く


『マスター、城の改築が終わったってマキナから来てるのですが』


 俺はアビスにすぐに戻る、と伝えると


「『終末機構/転移』」


 一瞬で城の中に戻る


「うわっ!び、びっくりさせないでよね!」


 そう言いながらレヴィアが胸を撫で下ろしていた。


「……君思いのほか慣れるの早かったね?……」


 もう既にこの暮らしに慣れ始めたのか、自分の部屋を作る!とか言って部屋をひとつ借り受けて整備を始めていたレヴィア


「な、何よ!こちとら年頃の乙女なんです!……自分の部屋ぐらい持っても良いでしょが!」


 そう言って走って言ってしまった


 なんか魔王さんの苦労がわかる気がする


 ◇◇



 ─数時間後


「ではまずはこの城の現状だが、城の中の壊れた箇所の修復と修繕は終わった……あとは防衛システムも完全に組み込んだ……」


『あとは衛星を数機打ち上げたとマキナさんが言っていましたね』


「とりあえず明日には選別を開始していきたいのだが……うむ……」


「騎士団長の場所……ですか……」


 アリアの言葉に俺は頷く


「どうやらこの国の騎士団長は地下を統べるマフィアに捕らえられているらしい……おや?何か知っている感じか?……アイオン」


「うーん知ってるって言うか……たぶんそれのボスはなはず……」


「……青……青井か……なるほど、あいつならそれぐらいのマフィアぐらい立ち上げれるだろう……分かった」


 俺は最初に倒すべき異世界人が自然と決まった。

 まずは青井をどうするべきか……また明日の朝にでもあの町のことを視察に行くべきだな


 ◇◇






「はぁ?!……ここに理一が来たのか!……クソ!思いのほか早かったな」


「ぼ、ボス……?」


「安心しろ!……アタシは強い……だがやつの狙いは何だ?」


「その……おそらくですが騎士団長を取り返しに来たのではないかと……」


「ならそれを利用するか……」


 ◇


「おい!起きろ!……ちっ、のろまなヤツめ」


「……あ……」


 そこには騎士団長と呼ばれていた女が捕まっていた。

 見た目はもうボロボロで体のあちこちは使い物にならないほどにぐちゃぐちゃ。


 兵士が面白半分に嫌がらせを繰り返した結果最早見るも無惨な状態だった


「全く……おもちゃにすらならないお前に最後の役目ができたぞ?」


「……や、……役目……?」


 リエスティナ=ボルボロスもとい青井 理絵はにっこりと、悪魔のような笑みを浮かべて騎士団長『ローラン』の耳元で囁く


「…………勇者を殺すための……ね」





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