第10話異世界聖戦①/VS青井 理絵(リエスティナ)急

 俺はゆっくりと拳を構えるのをやめながらリエスティナと向き合う


「……俺は復讐に囚われるのをやめたんだ」


「なぜ?」


「まあ20億年間で色々と考えが変化してね」


「なるほど……?アタシには正直想像もつかない話だよ」


 それは確かにスケールが違いすぎると、リエスティナは思った

 自分がたった数年間の異世界生活で全く異なる環境に置かれて、そこで必死に生きていたんだ


 20億年という歳月は間違いなく理一……いやエイルの考えに変化を与えたのだろう


「……ならどうしてこの世界に来たんだ?」


「……その答えはいずれわかる……まあ今は君を倒させてもらうとするよ」


 そう言うと再び拳を握り直す。


「アタシじゃ……勝てないと分かっているんだけど?」


 私は既に諦めムードな感じを伝えるが


「それはやってみなければ分からないだろう?……それに、最後ぐらいカッコつけて終わるのは君の好きなマフィアのボスの末路の中で1番かっこいいと俺は思うが?」


「……ははは……言ってくれるね……」


 確かに、マフィアのボスは最期かっこよく散るのが道理だろう。

 はっきりいってこいつにその話をされるとは思わなかったが


「……ん?まさかあたしの考えとか読めたりするわけ?!」


 私はふと、それが気になる。なんというか、全てを解ってる顔をしているのが妙に気になったのだ


 答えは


「……ま、当然だよ……」


「……やっぱりアンタズルいって……と言うか理一アンタ明らかに手を抜いてるでしょ?」


 そう、そんな力を持っているやつが……20億年の間生きれる奴が私ぐらい瞬殺できないわけが無い。


 それこそ、私のアジトごと消されて終わっていてもおかしくないはずだ


 なのにこいつは何故か私と同じ戦い方で格闘戦に連れ込んでいた。


 私はもうすぐ訪れる死の恐怖からか妙に冷静になっていた


「……そうだな……俺のポリシーについてお前に教えておこう……まあ冥土の土産にでもな」


「土産いらないんだけど?」


「……俺は相手を倒すことが好きだからだ……それ以外に何物でもない、それが俺の20億年の結論だ」


「なんか性格悪いね」


「否定はしない、だが圧倒的な力で相手をなすすべもなく倒すのは飽きた……故にあえて縛りを設けていてな」


「……それが相手と同じスタイルでの戦闘?……はぁ〜元クラスメイトとして言わせてもらうけど……


「なんだ、褒めてくれるのかと」


 褒めるわけないだろ?と、私は思いながらも、改めてこいつは最初から最後まで私に付き合ってくれていたことに気がつく。


 あえてこちらの全力を出せる場を設け、そのうえで倒された


「はぁ……もういいよ……異世界でやり残したこともないし……」


 私はもう、覚悟を決める。どうせこのまま逃がしてくれるようなやつじゃないし、何より


「……アンタがさっき言った通り、あたしはマフィアのボスらしく華々しい最後を飾ってやるよ!」


 そう言うと、スキルを全て解放する。


「……あたしは負けず嫌いでね!……まあそういう訳だ……満足して散らせて貰うとしますか!」


「……かしこまった、ならば全力で迎え撃とう……俺の名は無道理一、お前は?」


 驚いた。まさか本名を名乗るとは……ならばこちらも名乗るとするしか無いだろう……


「……青井理絵!行くぜ?!」


 多分これが最後、と言う気持ちになってからだろう、いつもより体が軽やかに動く。

 気持ちに謎の余裕を持っている感がある


 結局私は自分の居場所が欲しかったんだろうな……ただ、改めて思ったのは


 ─アタシに異世界で居場所はないってことさ


「行くぜ?…………うぉぉぉぉぉぉおおお!!『透過幻影撃ボルボロス・ファントム』!!!」


「喰らえ…………『終末機構/終止符ピリオド』!!!」


 激しいエネルギーのぶつかり合いが発生するが、すぐに勝敗は決した



 ─私はあえて真正面からぶつかった。今まで後ろや、下から放っていた拳をあえて真正面から放つ


 右に、左に避けながら放った拳は見事に理一の胸にぶつかる。

 だが、ぶつかっただけだった


 ……見事に理一の左手が私の胴体を貫いていた


「…………さらばだ……青井理絵……お前の夢はここで終わる」


「……全く……完敗だよ……あ〜あ……ま、最後の最後に……あんたのその顔を見ながら逝くのは少し……腹立つけど……ね」


 そう言いながらも、満足気にそのまま倒れ込む。



「……『カオス』出番だ」


『はいはい……んじゃやるよ……スタート!』


 ─時が止まる─


終幕フィナーレ


 ゴオオオオオンという鐘の音が響く


 時計の針が止まる音がする


 ゆったりと、青井理絵の肉体が金色の光に包まれる

 それはまるで砂の城を壊すようにサラサラと消えていく


「……お別れだ、青井理絵……君の夢は……いいものだった……お疲れ様……」





 薄れゆく意識の中で青井理絵はこんな言葉を聞いた気がした







 ───「よい、しゅうまつを……」


 と




 ◇◇




『無道 理一/簒奪者』VS『青井 理絵/透過』

 勝者、『無道 理一』

 決まり手─『終末機構/終止符ピリオド


 ◇◇





「……で?この荒れ果てた様子はなんだい?」


 俺は溜息をつきながら、荒れ果てた冒険者ギルドやらマフィアのアジトを眺める


『……申し訳ないです……エイル様……』


「なんじゃ?我のことを楽勝とかほざいておった連中を丸焼きにしたら、ちと火力を上げすぎただけじゃが?」


「私のことをロリだぁ……可愛いねぇとか言ってきたので、スクラップにしただけですが?と言うか大体の原因はあいつです!」


「拙僧何も間違ったことをしてはおらぬが?!何故!」


「……その滅殺鏖殺スクラッパービルドキングV2を作ったのは誰だったかな?ん?おいこら逃げんな!」


「相変わらずですねぇ……私としては今回は物足りなかったというか……まあ清楚に行けましたし、結果オーライ……」


「どこがなんだ?お主何百人も光の杭で刺殺して、「逃げるのも可愛いですねぇ」とか言っておったじゃろが」


「悪魔の言うことなぞ信じてはなりませぬ!」


「……まあひとまず、そうだな……全員後で正座しろよ?」



「「「「何と?/何ででしょう?/何故じゃ?/何故ですか?」」」」


「おれ関係なくね?!」


『我々は黙ってましょうか』『ものタリない……』『ぐう』


 まああの後、逃げ出したマフィアのほとんどはこいつらの手でメッタメタに殺されたそうな


 まあ仕方ないよね、主を裏切ったマフィア部下に価値とかないからね


 とりあえず、俺たちは城に帰りみんなに報告する



「……さて、これにて1人目のクラスメイトを倒した訳だが……まあ当然知れ渡ってより一層警戒されると思う……」


 むしろ警戒してくれないと困る


「アイツらが馬鹿じゃないことを祈りつつ……だな……では……まあ取り敢えず……乾杯!」



「いいなー私もお酒飲もっかな〜」


「アリア様はこちらの野菜ジュースをどうぞ……身体に良いのですよ!」


「せめてそこはもっとマシなものをあげなさいよ……あ、ブラッドジュースならあるわよ?」


「私あんまり何もしてないのにいていいのかな……?」


 ─君は地味に今回の最功労者だろうが


 ひとまず、こんなに人が増えたのだな……と感心しつつ、俺は改めてこの城の強化案をねり始める。


 あのマフィア達がいなくなったスペースと冒険者ギルドを新しくしたあと……それらをまとめて地下で合体させて……


「アビス……明日少し頼んだ!」


『了解、やっと侵略していいのですね?』







 ◇◇


 こうして、俺たちは1人目のクラスメイトを倒すことが出来た。


 まああと32人居るので物語は続く……















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