第11話 今日はいい改造日和だ

 次の日の朝、転移者たちの間に衝撃が走る


「な、何?!……青井……リエスティナが殺された?!それは確かか?!」


 カイザー・コウキは顔を手で覆ってため息を着く。


「確かにあいつは我ら異世界転移者の中でも最弱……だが……そんなあっさりとやられるやつでは無いはず……」


「あ〜残念だなぁ〜あいつもいつか俺のハーレムに、入れてやっても良かったのになぁ!」


「……黙れ、ノウリー・トシ!……いや、蒼原!」


「だってさぁ……俺の物になった女はさぁ……守ってやれたのになぁ……はぁ……あいつ身体だけはいいもん持って」


 ドゴン!


 俺は近くの壁を殴る。音にびっくりしたのかトシは口を噤む


「…お前は死にたいのか?……まずは空気を読むということから1から教えてやろうか?」


 俺は怒気を孕んだ声色でトシに聞く


「ちっ!うぜぇなぁ……お前が何偉そうにリーダーぶってんだよ!よ!」


「……その発言、皇帝に対する不敬とみなしてお前から権力の全てを奪ってもいいんだぞ?」


「……ちっ!……はいはいー分かりましたーまあ俺がリイチを殺せば良いんだろ?………は!赤子の手をひねるより簡単だぜ!」


 そう言って俺が止めるまもなく走って言ってしまった。


「……コウキ様。あいつを始末してもよろしいですか?」


 俺は、やめておけ。と暗殺者、『影の軍団』の新しい頭領に伝える


「……特に、アイツの能力は


 そう言って新たに生まれた問題に俺は頭を搔く。

 トシ……あいつは言ってしまえばDQNだ。クズだ


 俺が言えたかは知らんが、少なくとも俺は女は殴らない。だがあいつは昔から気に入らないやつは殴り、いたぶる


 一度少年院に入れられかけたマジモンの犯罪者だ……それがリイチのことを認識したのならば、いっそ2人をぶつけて相打ちを狙うか?


 などという最悪のアイディアが生まれるが


「……まあひとまずは……ほかのクラスメイトに武器や物資を蓄えろと伝えるくらいしかできないか……まああの国はいつでも侵略できるしな」


 メルバニア王国は最早ただの廃墟だ。別に何かあろうがすぐに潰せる。


 俺は拳をぐっと握りしめる。


 ◇◇





『やっと私の出番ですね!』


「ああ、好きにやれ……俺らはお前の判断を信じるだけだ」


『ケケケケ!そザイは集マった、スキにつカエ!』


 アビスはゆっくりと目を閉じると


『──では、改修リノベーション開始!』



 ──メルバニアの近くの山の麓にて


「今日は森が嘶いてるねぇ……」


「とーちゃん、森って泣くことがあるの?」


「いや、滅多に……な、……なんじゃこりゃあ?!」



 ──メルバニアの近くの湖にて


「お母様……今日も寒いわ……」


「あらあら湖が綺麗に凍ってしまったわね……」


「遊びに行っても……ってうわあ?!お母様!見て!湖の氷が……!?」


「……な、何が……え?!、?!」




 ──「何をしているのでしょうか……ものすごい音が鳴り響いて……あれ?やんだ……?」


「あ〜今アビスに改修してもらってるんでな……少し待ちな、今外に出ると最悪巻き込まれて新しい地層になるぞ?」


「わぁ!世界が回っています!見てくださいローラン!」


「世界がまわ……る?!……いえいえ有り得ませんアリア様!」




 ──山が引き伸ばされる


 ──湖が海のように伸びる


 ──外にあった建物が皆王城の中にしまわれていく


 ──まるであっという間に世界が作りなおされる


 このメルバニア王城を中心に、そこから国境付近に存在する全ての民家、廃屋、人がいた形跡、森、ダンジョンの全てが城の下にしまわれていく。


 紐を筒に巻き付けるように、どんどんと引き伸ばされては巻き付けられていく


 そして、それらを内包したまま城は地下に沈む。


 先程まで、連なっていた山は全て天然の結界へと変化し


 あちらこちらにポツポツと存在していた川や湖は全てひとつの流れに統合される


 同時に、無数の狂気の残滓が山に埋め込まれ、各地の精霊を変質させる


 吹雪は相変わらずその様相を隠す天然のカーテンとなり


 地面にしまわれたものは全てダンジョンへと変化する。


 城はそのままより高さをまし、その渦の頂点にそびえ立つ



 ───これこそが、アビスの力のひとつ


 ───『改修リノベーション


 その効果は、世界を自分たちの理想の形に書き換えるというチート。



『ふう、こんなもんですかね!』


 そう言ってにっこりとみんなの方を見て笑うアビス

 その表情からは、いい仕事しましたーというオーラが漂っていた



「すっごい!見てみて!こんなに高いとこに来たんだよ!?」


 アリアがはしゃぎ、それに釣られてローランもはしゃいでいた


「えー強すぎない……?」


 レヴィアの言うことに俺は


「そりゃ、八体のラスボスの実質最高位の奴ですし……あ〜本当にかつて倒すの苦労したんだよなぁ……」


 そう言いながら、こいつ……アビスとの戦いを少し思い出しかけるが


「……相変わらず馬鹿げた能力じゃ……」


「神様が7日かけてやることを一瞬でやられると悲しいのですが?」


「……機械の土地なら私の方が早い……」


「幻獣を解き放つ場所はあるのじゃろうな?」


「とりあえず魔術の幻影かけて外からはバレないようにしといたぞ?」


『狂気乱舞!アア?!すバラシイ!!』


『ぐう……むにゃむにゃ』


 思い出したら100年ぐらいかかるのでやめた。


『エイル様、いやぁ〜久しぶりにいい仕事しましたよ!』


 アビスは世界を侵略する者


 即ち侵略者インベーダー


 異なる宇宙の、いや異なる宇宙全ての果ての星。


 宇宙の終着点から来た原初の侵略者


 こんな世界を弄り回すのは朝飯前な訳だ


 まあそれはそれとして


「とりあえず、ご飯でも食べるか?……朝飯前ぐらい食べないと辛いぞ?色々と」


 俺はご飯を釜(特大サイズ)から取り出し、皆に配る


 まあ、本日はこの後この下に作ったダンジョン兼住処の手入れをしなければなので


「今日はみんな自分の好きにこの城の下を改造していいぞ!……勿論限度はあるからな!」



 ◇◇




 限度があると言っただろうが



 俺はゆっくりとほかのラスボスの前に立ちながら腕を組む



「さて、バアル君?君さあ……あのねぇー……どうしたらここに地獄を顕現させるかなぁ!……外に漏れだしたら一大事じゃすまねぇぞ!?」


 俺はまずはバアルを怒る。


「わしはただ、ほかの悪魔の居場所にしようと思うたのじゃが……いやぁ面目ない……楽しくてつい」


 ……「アビスにでも頼んで熱を漏らさない素材貰ってこい……」


「は!!承知仕る!」


 ◇


「で?なんでこんなに眩しいの?……あのさぁここに天国の門設置したらほかの部屋まで光が漏れ出すだろうが?」


 ラジエルは少し困ったような顔をしながら


「いやー、あいつと同じ理由言うの嫌なんですけど……楽しくって……!」


「……光の遮断はしっかりしろよ……普通の人間いるからな」


「はあい!……それより見てよこのオブジェ!エイル様を模して作ったんだけどどうかな?」


「……100点だ。ただ、俺そんなに少女漫画の主人公みたいになってないけど?」


 ◇


「……まずお前はこの状況を見てなんで怒られたか分かるか?」


「……幻獣出しすぎ……じゃろうか?」


「重さね、あとは?」


「……ちょっとうるさかった……かもしれんのう…」


「うんそうだね、ちょっとじゃねぇよ!どう考えても公害レベルだから音の遮断の素材貰ってこい!」


 ◇


「…………あのね?お前さん役満だよ」


「?私なんもしてないよ?」


「マキナ……?俺は先程、バアルを熱の問題で、ラジエルを光の眩しさで、バハムートを音で怒ったんだよ……まさかその全てをやってくるとはね?」


「……ダメ?」


「んーパチンコ屋さんが隣にあったら迷惑だって言うデータをインプットしときな?」


 ◇


「……なあ、オーディン?ひとついいか」


「おや?なんだ?」


「………この部屋にあるもの全て撤去していいか?」


「ぬう?!お、俺の大切なコレクションアイテムなんですが?!」


「悪いな?モザイクしないと入れない部屋とか困るんだわ……あとほとんど女性だからさ……特にその……アリアやレヴィアの教育に悪いからね?」


「……それはたしかに……ですが!……」


「ん?」


「はい……」


 ◇◇


「……モザイクしとこ」


『ナニ??』


「うん、多分ここ見たらみんな100ぱーSAN値ロストするからあかないようにね」


 ◇◇


 ……「……」


「アビスさん?……その……宇宙を作るのはやめて貰えませんかね……?」


「うっ、これプラモデルだから!」


「……どう見てもこれ本物だよね?……」


「……」


 ◇◇


「お前はそれでいいよ」


『ぐう』


「でもここ俺の部屋なんですが?」



 ◇◇


 ちなみにほかの人間の部屋もあるので、それはまた明日にでも。










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