第32話 昔噺─①
夢を見た。多分人に夢を説いたからだと思う
─懐かしい夢だ。あの忌々しい終末世界の夢
◇
俺は異世界から追放されて終末世界に落ちた
そこまでは皆知っているだろう。
だが、そこからの話は多分誰にもしていない
つまりはこれは夢であり、ただの独白にして空白の物語
──俺が毎日見ている夢。そして俺の異世界での指標
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…………あれ?……俺は……死んだ……のか?」
目を開けると俺は瓦礫の中で眠っていた。
体には血がこびりつき、腕には痣が……あった
起きて体を動かそうとするも、体のあちこちに激痛が走り……そうして俺から歩くための力を奪う
記憶が少しづつ戻ってくる。ああそうか、あの後先生を殺したあの後俺は無謀にも近くにいたどでかい化け物に突っかかって……
そうか……そいつに返り討ちにあった……って訳か
全く俺は運がない。そう言いながらも、自分が生きていることに感謝をしつつ辺りを見回す
「……にしてもここはなんだ?」
俺は当たりを見回していくつかのことに気がつく。
まずここにはまるで謎のゲートの後の様なものが転がっていた
まるで社のようなそこには不思議な石が置いてあった。
「……なんだこれ?…………」
俺はそれを拾い上げる。途端頭の中に誰かの声が響く
『……それをそこにしまえ……悪いがそれをしまわないならば消えろ』
「だ、誰だ?……っ!?……な、なんだよこれぇ?!」
俺は慌ててその石を元の場所に戻そうとしたのだが、何故か手からそれが離れなかった。
どころか……腕にひっつき始めた
俺の手の中で石から俺の体にどんどんと謎のラインが侵入してくる
そんな訳の分からない現象に俺はパニックになる
『そうか……まさか適合者がいるとは……そうか、ならばお前はここで確実に始末する』
途端、後ろから何者かに首を掴まれる
「や、やめて…………ぐ……い……や……」
俺は何とか後ろを見る。横脇からほんの少しだけ見えたのは、ボロボロの勇者のような奴
俺は必死にもがく。
だが、俺はそいつに投げ飛ばされて地面にぶつかる
「……?!ぐ……」
体が痛い。頭の中で星が瞬く
ガチャっと言う音がして俺の方に歩いてくる音がした
そいつは俺を殺すつもりなんだろう……必死に逃げようとしても体がもう動かない
……もはやこれまでか……
心の中に再び絶望が襲い来るが……しかし
……まだだ……まだ死なない。死にたくない……!
俺目掛けてそいつは蹴りを入れる。もはや叫ぶことすら出来ない俺はそいつがゆっくりと剣を構えているのを見て……
「死ぬのか……俺は」
そう呟いた。
『……いや?死なないさ』
突然手に着いた石から鼓動がなり響く
途端、体のあちこちが熱湯を浴びせられたように暑くなってくる
ミシッ、メリッ……という音がして体にビビが入る
「ぬぅ?!まずい、アイツが起きてしまう……ええい貴様、さっさと死に晒せ!」
ものすごい速度で攻撃を放つソイツ
しかし驚くことにその攻撃が俺に当たることはなかった
『……さて、君は私を呼び起こしたんだ……悪いが、簡単には死なせないぞ?』
そんな言葉が俺を包み込む
体の底から力が湧き上がってくる。なんでか分からないけど俺は負ける気がしなかった
『ふむ、しかし君は思いのほか順応性が高いな……ならば……私の力を使えるはずだ……さあ少年!……今すぐその言葉を叫ぶんだ!』
俺はその言葉に導かれるように、その祝詞を叫ぶ
即ち
「……
次の瞬間、俺の肉体はまるで世界の全てを掌握した様な感覚が巻き起こる
俺は見た。世界の果てを
俺は知った。世界が終わる時の悲しみを
俺は理解した。俺のするべきことを
「ええい!さっさと斬り倒して……ぬぅ?!」
俺はそいつを指さす。そしてその指を下に向ける
途端、そいつの肉体は地面にめり込み始める
どんどんと、どんどんとめり込んでいく
やがて限界までめり込んだそいつは、そのまま息絶える
『ふーん案外やるじゃん…………ふぁぁ……あ……よろしくね』
そいつの声をバックに俺は方で息をする
「……また1人……殺してしまったのか……?」
『そいつはただのシステムだから気にしないでいいよーそれよりも、さっさとここを離れるべきかもね』
俺は足音に気が付き、慌てて隠れる
「こっちの方から音がしたぞ!……クソ、寄りにもよってまさかあの最悪の神が目を覚ますだと?!……まずいぞ!」
「ボスに知らせろ!すぐに援軍を送って貰う!」
「ああだが間違いなくこの世界の均衡が崩れてしまう……最悪だぞこれは!」
『ふふん、やってるね……ああ安心しな君の姿も私の見た目も声も見えないようになってるから』
俺は改めてそいつに尋ねる
「……君は誰だ?」
『その前に私の肉体をそこに呼び出してあげようか……ホイっとなー』
白い髪の女性がいた。
まるで世界から離れているようなそれに俺は魅了される
『私の名前はね……カオス…神…さ……まあ今は半分以下の出力しか出せないけどね……』
そう言ってその神様は微笑んだ
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