第33話 昔噺─②

『そうさ、君は勇者だ……勇者なら救わなくてはね』


 俺は意味がわからず困惑しながら聞き返す


「……俺は勇者なんてクラスじゃなかったぞ?……」


『それは表記上の話だろう?……悪いけどそこはただのステイタスに過ぎないんだ』


 表記上とか意味がわからなかったが、そいつは先程から変わらない笑みを浮かべている


『勇者って言うのはんだよ……君にはその資格がある』


 資格……俺の手で世界を?……


「バカバカしい……俺は異世界から追放されてここに来て……そんな奴に世界を救うなんて無茶な話だろ……だいたい俺はただの高校生で……」


『高校生?はははこの際それはどうでもいいね……重要なのは歳ではなくさ』


 覚悟……その言葉は俺に深く突き刺さる


 そうだ……俺は託された。先生に託されちまった


『ふむ、しかし君は弱いな』


「悪かったね……!こちとらただの高校生ですからね!」


 その言葉にニヤニヤしながらカオスとやらは答える


『まあ私が君と融合してるんだ……それ相応に強くなっていくから気にしなくていいさ……ま、最も君自身が強いわけじゃないからそれは覚えとくんだよ……君は弱いってね』


 そう言うと俺の肩をべしべしと叩く。

 なんだろうな……こいつ微妙に性格が悪いというか……んー


『性格が悪いと思っただろう?……まあ当然さなぜなら私はにして終末を司るモノラスボスだからね!』


「……なんかそれっていい意味じゃなさそうだな……どっちかと言うと君悪魔とかの……痛い痛い!」


『なーに君は私の一部となった。つまりは一心同体、一蓮托生ってわけさ……さあよろしくね!!』


 なんか破滅的な最後を迎える予感しかしないけど


「……誰が相棒だ」


 俺たちはそうして外に出る。そして知る


 ──終末世界を



 ◇◇





 あちらこちらで轟音がなり響き、血肉沸き踊る戦が繰り広げられる


「……何だよ……これ……」


 俺は近くのビルの壁にもたれ掛かる。少なくとも映像で見た映画のどのシーンよりも酷い殺し合いが起きていた


 見境なく、辺り一面を覆う化け物たちの殺し合い


 俺はそれに見つからないようにコソコソと進む


「で、どこに向かえばいいんだ?……」


 俺がそう聞き返すと、カオスは


『まずはそうだな……から行こうか』


「……魔神王?……なんかヤバそうな名前だな……それ勝てるのか?」


『まあ無理だね今の君と私じゃ』


「なら」


『だから君の力を使うんだよ……君の力で悪魔をぶっ殺して血肉として集めて……そうしてあの魔神王ラスボスに打ち勝つんだ!』


 そう言って高らかと笑うカオス。


 しかし俺はげんなりする。だって悪魔の王だぞ?そんなヤバそうなやつに俺は勝てるのか?と


『勝てる勝てないじゃない……やらないとダメなんだよ……これは誰か、がやらないと終わらない物語なんだから』


 さっきから俺の心の中を読んでいるのかと疑いたくなるレベルで俺に忠告をしてくるカオス


「……誰かが……か」


『そう、誰かが……だ……この世界は時期に終わる……いやもう終わってるかもしれないね……そんなこの世界をちゃんと終わらせてあげるべきだと思わないか?』


 確かに。と俺は思った


「ちなみにこの世界を救うためには俺は何をすればいいんだ?」


『あ〜それはねぇ……八体いるこの世界の覇者……まあラスボス達を倒せばクリアだ!簡単だろう?』


「……全く簡単そうに聞こえないんだが?」


『当たり前だろう?簡単なら私一人で終わらせるか……手頃な奴乗っ取ってクリアしてるさ……』


 俺たちは街を歩きながらそんな話をしていた。


『さてここが人間族最後の砦……『エデン』だ……まあここにいるのがほぼ全部だね』


 町外れの地下街。そこに人間たちが住んでいた

 いや、住んでいたというか……


「……集まっているだけ……か」


 誰も彼も無気力でまるで世界から見捨てられたような表情で横たわっている


『まあ人間はこの世界においてただの敗者、魔法を使える一部の人間は皆魔術神オーディンの元に使えてしまったから……本当に人類で残っているのはコイツらだけだね』


「こんにちは……お兄さんは……どこの街……から来たんだい……?」


 俺はふと話しかけられる。ボロボロのお婆さん、その見た目以上に老けた姿に俺は愛想笑いをして


「……町外れです……よく生き残れましたよ」


 そう嘘をついた。


「そうですかい……まあここには何もございませんし……我々はただ、死を待つのみ……でございますからな……」


「そんなことない!アタシは諦めないんだ!」


 突然後ろから少女が走ってくる。

 体のあちこちに傷があったが、その褐色の少女は


「アタシは絶対諦めない!……この世界を我が物顔で闊歩してる奴らにぎゃふんと言わせてやるんだ!」


 そう言ってニカッと笑う。

 周りの人々はうっとおしそうに……いやその笑顔を見たくない……と言った感じで目をそらす


「……君は?」


「アタシは……!!よろしくね!……アンタは?」


「エイル……か。そうか……俺の名前は理一……よろしくな」


「リイチ……いい名前だね!ん!よろしくね!!あ、そこにご飯類あるから好きに食べてー!」


「……そうか悪いな……」


 その元気はつらつな少女との出会いは……俺の人生に忘れられないものとなった

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