第34話 昔噺─③/終末世界の日常

 俺は目を開ける。どうやら少しだけ眠っていたようだ

 その様子を少し心配そうに眺めている少女がいた


「……おはよう……エイル……だったか?」


 エイルと呼ばれた少女はほっと胸を撫で下ろすと……


「安心したー!ここに来てもすぐに命を落とすやつとかいるからさ〜心配したんだよ!」


 サラッと恐ろしい話をするじゃあないか


「……まあ俺は死なんよ……当分は……な」


 というか、俺は死ねるのか?ふと疑問が頭をよぎる


『死ねるわけないだろ?……そもそもこの私と契約してるんだ、私が易々と死なせるわけが……おっと失礼』


「うわー綺麗な人、貴方は?」


 そうか、こいつの姿はこの子にも見えているのか……


『こいつの相棒とだけ伝えとくぜ?……嬢ちゃん、いい目をしているねぇ!』


「そっかーよろしくね、相棒さん!」


『ほほう、君なかなか順応性が高いねぇ!』


 順応性?と、俺は思ったが言わないことにした



「おーいそこの、新入りのやつこっちに来て手伝ってくれ!」


 そんなことをしていると俺は呼び出される。まだ朝ごはんも食べていないのに……そう思ったが、当たりを見ても誰も食べていないのを見るに……まああまり食料は多く無いのだろう……と俺は納得した


 ◇


「これの使い方分かるか?……そう銃だ……これであの悪魔たちを何体か狩ってきてくれ……そうすれば俺たちの食料にありつけるから……!頼んだぞ?!」


 俺はそう言うと外に放り出された。


「……いきなり銃の使い方なんてわかるわけが……」


『剣で良いだろ?……そんな古代兵器ゴミカスより私が作った剣の方が100倍強いさ』


「……まず悪魔と戦うのは前提なわけか……?せめて遠くからサクッと狩れる武器とか……」


『なーにしり込みしてんだよ!……わかったよ……ほら弓だ!……って弓の使い方も分からんのか!』


「いや、分かるさ……元アーチェリー部だからな……っとそりゃ……」


 俺は弓矢をつがえ、近くにいる悪魔に照準を合わせる

 幸い気がついていないようで、俺は弓の弦を引っ張ろうとするが……


「……硬すぎる……なんだこれ、弦が重すぎるぞ?」


 俺はなんとかその弓を限界まで絞る。途端カチンというロックの音がしてひと安心する


 左手の人差し指で悪魔を狙い、矢を構える手を口元に寄せる


「……すー……フッ!」


 ズドン


 というどう考えても弓矢からは放たれるべきでは無い音がして、悪魔の上半身が消し飛ぶ


「……ンなぁ?! 」


 いやさすがに驚いた。


『ふむ、君はセンスがあるねぇ……いいじゃないか……しかし……』


「今の音で他のやつにバレたか……クソ!」


 あっという間に近くから悪魔が押し寄せる。

 とはいえ数はそこまでだが……


『剣を君にさずけよう……喜ぶといいさ……あ、盾も渡しとくね』


「おう、出来たらもっとハイテクな武器とか……っと危ない!」


 なんとか避け、その悪魔に反撃を食らわす


 良かった〜追放される前に騎士団長から剣の指導受けといて〜


 じゃなくて


「全然効かねぇけど?!……いやいやここは一撃で綺麗に倒して……って危なァ!」


『まあ君も私も弱体化してるからねぇ……致し方なし……さ!』


 盾でなんとか俺は殴りつける。確か騎士団長が言ってたはず


「(いいかい?盾は殴るものだ!……ガードに費やしていたらいずれ死ぬ……だからさっさと殴るなり投げ飛ばすなりして……意表を付くんだ!)」


 そんなことを言ってた気がする。気のせいじゃないことを祈るけど


 まあ確かに意表はつけたようで、その悪魔は吹き飛び唖然とする。

 その顔に俺は剣の先端を突きつけてねじ切る


 肉をえぐる感触が伝わってくるが、いちいち気にしてなどいられない。


 とはいえ俺は1人倒せた余裕から一瞬気が緩む。

 その瞬間後ろから犬みたいな悪魔が飛んでくる


「しまっ……!」


 なんとか盾で防げたのはいいが、さすがに体勢が悪かった


 そのまま俺は吹き飛ばされてしまう。

 慌てて剣を探すが、今の衝撃で剣は離れた場所に落ちてしまっている


「クソ!……カオス武器は……」


 次の瞬間、再び飛びかかる犬。盾で防ぐもまさに絶体絶命の状況


『うーん今の私じゃ武器を新しく作り直すのには時間がかかるねぇ……うーん……あ、魔法とかなら教えられるよ?』


「今?!ちょ魔法とかあるならさっさとってちょ?盾がミシミシ言ってますけど?」


 まずい、こいつを殴れば倒せるとか無いよな?


 そう俺が思った瞬間


「危ないよ!伏せて!」


 突然声がして俺の前に何かが落ちてくる。


 一瞬見えたそれはかすかに火花が散っていた気がする


 瞬間


 ズドン!という音がして俺は盾と壁に押し付けられる。


「ッ!……ぐ……あ、……」


 俺は目がチカチカしながらも立ち上がる


「大丈夫だった!?……ごめんね急に爆弾投げ込んで……ってすごい……コイツ以外に何体も倒してるなんて……貴方凄いね!」


 あ〜爆弾か……まあ助かったから良いか


 俺は体に着いた破片やら、煤を払って辺りを見回す


 どうやらエイルもたくさんの悪魔を狩ってきたようでボロボロになってはいたが


「んじゃ……帰ろー!みんなにこれを渡すんだ!」


「……渡す?……コイツらを何に使うんだ?」


 俺はそう尋ねる。


 それに対し、何食わぬ顔で


「……?何って?」



 そう、笑顔で答えた

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