第68話 敬虔なるカルカルラン(本体)
くそォ?!巫山戯やがって、ワタクシの最高傑作をぶち壊しやがって!許さねぇ、許しませんよォ!
──ここはとある町の地下室
そこに居たのは、カルカルラン本人、その人だ
カルカルランは二人いる。片方が現地に赴き、もう片方がそれを操作する
所謂ラジコンのようなものものである
そして先程倒されたのがカルカルラン(ボディ)と呼ばれるソレ
彼らは二人で一人の執行者なのだ。このことを知っているのはフィア以外には存在しえない、それ位には隠匿された秘密
「ッ!……全く、あの義体一体作るのに何年かかったと思っているのだ?!」
そう言いながらカルカルランはコントローラーとしての機能を持つアーマーを脱ぎ捨てる
そこに居たのは、身長150センチほど小柄な男
齢にして実に10歳ほどのその男この子……所謂ショタは頭を髪むしる
年齢にしては明らかに多い白髪がパラパラと地面に落ちるのを彼は忌々しそうに見つめる
「───あんな化け物どもに勝てるわけがなかろうが?!……なんだあの攻撃力?!……いくら神器『超再生』の調整版とは言え、あれを吹き飛ばすとか……あーもー腹立つ!」
椅子にもたれ掛かり、お菓子をひとつ
頬張る。優しくない甘さが脳内を駆け巡り、カルカルランは目を擦る
「まぁいいか、少なくとも他の執行者どもにあれの相手は任せよう……そうする他ないだろうな……」
年齢の割に妙に大人ぶった言葉でカルカルランはつぶやく
彼としては今すぐにでもこの計画から離れて、安全な毎日を送りたいものだが
「──はぁ……全くこんなにめんどくさい仕事を押し付けられるなら『執行者』なんてやらなきゃ良かったなー」
まぁ羽振りはいいし?特権をいくつも貰えるからそれはいい事だけど
そう言いながらカルカルランは首を回す
ガリッ、ゴリッ、ペキッ
音がして首が痛みから開放される。
「あのボケナス愚者どもめ、俺のような賢者をこんな事に使いやがって……ん〜まぁいいや、ご飯食べてまた色々と試して………………ん?誰が来たのか?」
「???……すみません、ひとつたスけていただけナいでしょうか」
「……誰だ?……なんだ、ただの女か……いいぞ?」
カルカルランはそう言ってドアを開ける。外にいたのは、やつれた黒髪の女だった
その見た目を一瞥し、少し肉付きの良い身体の一点を眺めたあと、カルカルランは
「(……ふん、なかなかじゃないか……まぁ少しぐらい、いいか)」
そう言って内心でにやりと笑った。
────カルカルランは不幸な男だった
彼は何故かその時失念していたことがあったのだ
この女がどうして自分の部屋を知っていたのかという事を
女はありがとうゴざいます、そう言ってゆっくりと部屋の中に入る
その顔は青ざめていたが、ただ一つだけ妙に明るいものがあった
それは口だ。その口もとには宇宙のようなものが広がっていた事にカルカルランは最後まで気が付かなかった
『深淵をのぞく時深淵もまたコチラを覗いているのだ』
アザトースとは即ち、宇宙の虚無。
深淵を司る存在にして、ただ一つの『外界の神』
その眼からは、何人たりとも逃れることなど
……できないのである
◇◇
少しの後、静寂の後
部屋には先程と同じように
『ガリッ、ゴリッ、ペキッ』
何かを砕く音が響いた。
先程と同じように、首が痛みから解放されたのだろう。
部屋の中には、甘ぁイ香りがほのかに漂う
赤く染まった水溜まり。浮かぶは肉塊がひとつ
愚者は魂を貪られ、賢者はその身を滅ぼす
賢かろうが、愚かだろうが
所詮人は人である。人が神に勝てる道理などあるわけが無い、あることがまず無い
ラスボスとはなぜラスボスと呼ばれるのか
その一端に、世界を一人で滅ぼせるというのが大前提に存在しているのだ
まぁこの話は、結局の所ただのオーバーキルだったという話し……それだけなのだ
こうして、敬虔なるカルカルランという存在は、僅か一瞬にして消え去った
◇◇
「……アザトース、結局アナタが仕留めたのね」
『コイツオロカ、ユダン、シテタ──ツマラナイツマラナイ』
「その割に、楽しそうに解体していましたね……全く、さすがは外界の神ですね」
『オアイコ……コホン、チョツトマッテ……』
「おや?どうか致しましたか?」
『────これでいいだろ?……おや何を驚いているのです』
「り、流暢になってる?!」
『さっさとエイル様に報告に行きましょう、この男の声帯は実によく馴染みますね』
ラジエルはため息を着いたあと
「─道理で丁寧に解体していたわけですね」
そう言いながら2人は飛び去って言った
◇
『敬虔なるカルカルラン』
死因、『ラジエル』と『アザトース』によるオーバーキル
魂までも貪り食われた、哀れな結末である
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