第40話 夢を見ていたことの訳

 おはよう、起きた?


 そう言われて、俺は目を覚ます。


『懐かしい夢だったのか?……キミがそこまでゆっくりと眠りについているのを見るのは久しぶりだよ』


「そうだな。カオス……」


 ここは夢の世界にして……。


 ──無限に広がる虚構の楽園


 データバンクとも言うべき世界。ここには彼が簒奪したありとあらゆる力が記録されている


「やはり異世界人のステイタスを吸収すると如何せんキャパに急激な変動が加わるから大変だな」


『君の能力で簒奪すると、その存在の生きた証を全て一度体験する羽目になるからね』


 この20億年の間に倒したヤツら一体、一体。それら全て


 数にして…………これ、何体いるんだ?


『数える気も起きんわ』


 虚構の楽園に咲く花。それらの一つ一つ……それは全て誰かの生きた証


 摘み取るのではなく、引き継ぐ。それこそが簒奪者の能力……


『……全くキミが無駄に集めちゃうからさぁ…こっちも大変なんだよ?……それこそちゃんにも手伝って貰ってるぐらいにはね』


「あいつは元気か?」


『気になるなら見に行けばいいのに……まぁ君がそう言うこと、しないのは知ってるけどね』


「んじゃ後はよろしく……俺は再び目を覚ますとするよ」


 そう言って虚構の楽園から現実に帰還する彼の後ろ姿を眺めながらカオスは


『……ったく……無茶しすぎなんだよ……本当にね』


 微笑むような、少し寂しいような顔でつぶやく



 ◇─◇─◇



 ──『帰還完了』──


「おい、おい?……急に寝るな!……びっくりしただろうが」


 俺の肩を叩いてくるメリッサに


「……はぁ……おはよう」


 ため息混じりで返答する


「……んで今は?」


「おう、今はバハムートさんの馬車で城に帰ってるとこだ!……しかしいいなぁバハムートさんの羽……」


 上からニコニコと


「そうじゃろう?……この羽は神代の獣の羽じゃからな」


「……神代の獣……それで作る剣はやばそうだな……」


 ブツブツと自分の世界に入るメリッサを眺めて


「うむ……好きなことをやるのはいいことだ……うん」


『皆様そろそろつくよ……アビスからでーす』


 アビスからの伝号を受け取り、俺は城に帰宅する


 ◇◇




「……さてと、それじゃあ味噌汁作り直しますか!」


 そういえばそうだった。手に入れた鰹節を片手にウッキウキのメリッサ


「待った、そのカツオ節……コピーするからちょいと待て」


 即座に構造をコピーし、それを大量生産する


「ほら、こいつを受け取れ……アザトース?これでたこ焼きを作れるぜ?」


『タこ焼き……?タコ……タコ?タコ?!』


 珍しく嫌そうな顔をして離れる。さすがにアザトースも自分の眷属を食べられるのは嫌なようである


「んーこれこそが……世界一ーの、お味噌汁!んッははー美味いぜー美味いぜ!宝の味噌!」


「……何すか?その歌」


「?有名なCM……だった気がしなくもないような……気の所為なような……」


「……えぇ……」


 もはやこいつに振り回されるのは避けられないようだ


「……はい!どーぞ、これをお食べ下さいな!」


 こうして納得のいく味噌汁が出来上がったようで……メリッサは大満足な様子である


「ではいただきます…………んー美味しい!」


「味噌汁は世界を救う……知らないの?」


「知らんな、聞いたこともないが?」


 ちなみに俺ら以外はみんな寝ているようで、2人っきりである


 城の中……ただ2人で食べる味噌汁はなんとも格別な味であった


 ◇






「お返しにコーヒーでも差し出そうか?……お菓子受けもあるぞ?」


「……頂き……ますか!」


 コーヒーを煎っていると、その匂いにつられて……たくさんの人が起きてきたようである


 そいつらもコーヒーを飲みたいと言うので……俺はコーヒーを入れ始める


『あたしの分はないの?』


「カオス……お前はもう大量に飲んだだろうが……?そこは譲ってやれよ」


『ぐうの音も出ない』


 そう言ってカオスは去ってゆく。それはともかく


 久しぶりの日常に戻りながら俺は、一息つく















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