第21話 しがない鍛冶屋/VSメリッサ=メイ戦?

 俺はゆっくりと警戒しつつ、ラスボスたちをたしなめる


「まずお前は何故俺に会いに来た?……というかその感じから察するに……まさかお前?」


「トーゼン!アタシってば寒いのには慣れてるからね!……なのですが……ちょい寒いから……ね、風呂とかある?」


 まるでご近所に散歩に来たオッサンみたいな感じでぬかすメリッサを警戒しつつ


「まず質問に答えろ……お前は何故俺に逢いに来た?……」


 再び質問をするが


「まず風呂に入らせてくれよーそれから話すからー寒いんだってー!君、もしやこんなに凍え死にそうなか弱い女子を風呂にも入れないという性癖の持ち主か?」


「……分かったから、そのチワワみたいな目でこっちを見るな……入ってこい……!」


「やったーで場所はどこ?〜あ、あれ?……んーありがとう!」


 そう言ってメリッサはダッシュで風呂場に入って言った。

 道中で服を脱ぎ散らかして


「バハムート、マキナ、ラジエル……一応警戒のため一緒に入ってくれ?」


「あたしたちも入るね〜まだ風呂に入ってなかったから!」


「お供致します」


 アリアと、ローランもそれに続いて入っていく


 ◇


 その光景を眺めて、俺は『アザトース』と、『アビス』に尋ねる


「……あいつからは1ミリも敵意を感じなかった……お前たちの目にあいつはどう映っている?」


 答え次第では、この場で即、殺すことすら選択肢に入れていたのだが


『……そうねェ……驚くほどマトモ……かしらネ……』


『わたし的にですが、全くと言っていいほど危険性を感じません……むしろエイル様と同類に近しいとすら感じます』


 俺と同類?……


 2人の言葉に嘘偽りは無い。超越者の視点から見て彼女は敵とはならないということか


 ◇◇


「くぁ〜やっぱ風呂ってサイコーだなぁ!……お、そこの竜のねーちゃんもそう思うだろ?」


「まあ否定はせぬが……っとお主わしのしっぽを触るでない……」


「えーケチ!減るもんじゃないでしょう?」


 ──「それはそうじゃが……ぬ?お主思うてたよりも触るのが上手いのう?」


「へっへっへー!おほめに預かり光栄だぜ!」



 ──「驚いた……バハムートがこんなにすぐに心を許すとは……」


「その割にアナタも普通に風呂に入っている点から見て本当にただ風呂に入っているだけですね……アナタのそのセンサーが狂っていなければ」


 マキナのセンサーは、ありとあらゆる敵性存在の予測を立てる。

 通称ラプラスの悪魔を利用しても、彼女が敵対する未来が見えなかった


「ン?私のセンサーにはむしろあんたの方が……ちょ、ここで光魔法はやめなー!」


「機械風情が……とはなりませんが、それでも確かに……」


 そう言ってラジエルは目を細める。

 彼女の目は、真実を暴く瞳


 嘘も、虚構も全てを見通すはずの目で眺めたあと……彼女は結論を提出する


「……あの者は敵ではなく味方と見るべきでしょうね」


 ◇

 その様子をじっくりと眺めるのはアリア。

 彼女は選定者として、その様子を眺める


 ─「はぁ困ったわ……ローラン……彼女は本当に純粋な人のようね」


「……姫様が言うのであれば……間違いは無いのでしょう……しかし良い筋肉ですね……いやぁ私も正直惚れ惚れする肉体です……」


 それもそのはず、メリッサは身長170センチ越えの肉体に女子が羨むナイスバディ……それらを持っているのだから


 ◇



「お!まじで?風呂上がりのコーヒー牛乳とかマジ?……いやぁ助かるねぇ!」


「これもどうぞ〜お菓子ですよー」


「そうじゃ……このおつまみと酒をくれてやろう」


「まじ?助かるぅ!……あ〜でも酒は1人で飲むの嫌だし……後で飲もうぜ?」


 俺はコーヒー牛乳をぐびぐびと飲んでいる……というか、いつの間にか皆と馴染んでいて逆に困惑する


「おう!理一……あ〜いや、今はエイル様だっけ?……お前の仲間すっげぇ良い奴ばっかでさあ……」


「……お前は本当に何故俺の元にきた?……メリッサ……いや、メイ……俺はお前も殺す予定なのだが……」


 そう言って俺は近くの椅子に腰掛ける。

 しっかりと見定めるつもりでいた俺にメリッサはただ苦笑し


「アンタ手紙出したでしょ?……アレ見てさ……アタシこう思ったんだよね」


 コトン、と牛乳ビンを机に置き

 俺の配下のラスボス達がみまもるなか


ってね!……いやー今まさにアンタに出会ってみて確信したんだよ!……間違いじゃ無かった……ってね!」


 そう言って照れくさそうに笑って見せた。


「……お前の夢……それは何だ……場合によってはお前を俺は排除しなくてはならないが……?」


 メリッサは焦げ茶色と赤のメッシュが入った髪を後ろで縛り、そのうえでオーディンが手渡したクソダサTシャツを羽織り


「アタシの夢、それはね……さ!……アタシのクラスは『刀鍛冶』……だからその仕事の結末、つまりは最高の一太刀を生み出したいんだ!」


 そう言って愉しそうな笑顔を見せるメリッサ。

 その瞳には、キラキラとした希望のような……そう、まるで灯っていた


 俺はその目を見て確信する


「……メリッサ、君はその一刀を作るために俺の元に、クラスメイト全員を殺すつもりの俺のところに来たのか……はぁ……狂ってるね」


「うん!ちなみにアタシはその一刀が出来たら殺してね?──だってそれができた時にアタシにはもう未練は無いし!それならアンタの全員殺す計画にも支障はないでしょ?!」


 まるで当たり前のように自分を殺すことを依頼された俺は、久しぶりに心の底から笑った


「……お前って昔からバカなのか?……普通自分を殺せ、何て人に頼むもんじゃないだろ……」


 だが、こいつは間違いなくバカだ。


 だけど俺に足りなかったものを持っている


 俺は溜息を吐き出さずに、口笛を吹く


「いいだろう、俺はお前を仲間と認めよう……改めて俺の名前は『エイル』……まあお前的には『無道 理一』かもしれんがな」


「OK助かるぅ!……んじゃアタシは『メリッサ=メイ』まあアンタの馴染みの深いのは『天岸 銘』かもね!……いやぁ一人旅するの疲れたからマジで助かるぅ!」


 そう言って、とびきりの笑顔を見せてくれる。



 この日、俺たちの仲間に新たな女が加わった


「しかしラスボス共が認めてくれるとか……本当に珍しいな」


 ──時が止まる


『うん、あたし的にも許可する……』


 ──時が動き出す


 マジか、あいつラスボス全員に認められたのか?


「ワシらも同意見ですからなぁ……」


「まず俺のあげたクソダサTシャツを来てくれる時点で仲間ですからな……」


「お前、あれがダサイって自覚あったんだ……」



 ◇


「あ〜そういや……は最後、どんな顔だった?」


 突然、俺はメリッサに聞かれる


 俺はただ


「……満足そうに逝ったよ……」


 そう告げると。それを聞いて、より安心したかのように


「なら!アタシも青ちんのように満足して死ねるように……頑張らなくちゃな!」


 そう叫んだ


 ◇◇



 こうして夜が更けていく








 彼女の名は『メリッサ=メイ』そのクラスは『刀鍛冶/アーマードスミス』


 その特殊能力は……『打ち直し/強化』。何気にクラスメイトの中でも最上位のスキルである


 そして彼女はこの物語における貴重な、主人公のエイルにツッコミを入れられるキャラクターなのだ



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