第50話 ラスボス会議
主たちが戦いに赴く間、ラスボス空間にてラスボスたちは机に座り各々自分の好きなことをしていた
「バハムート?それは私のしっぽです食べないでください」
「いいじゃろ、減るもんじゃないのじゃからな」
「良くない、さっさと離しなさい」
機械と幻獣の王は今日も仲が悪いようだ。
「しかし今日は何を集まって会議をするのじゃ?……こんなこと久しぶりじゃぞ?」
「オーディンは出張っていますし……このタイミングでやるべきでしょうし……そうですよね?アビス」
『そうですね……一応報告だけしておこうかと』
彼らが集まる理由はもちろんエイルの話である。
ラスボスたちは基本的に彼に負けて従っているに過ぎないのだが、別に反逆しようと思えばできる程度の間柄である
だがそれをしていないのにはわけがある。そう
───カオスだ
彼女ははっき言うとバグのようなものであり
『ほらほら、君たちもっと活躍しないとエイルに捨てられちゃうよ?』
と散々煽っているのだ。
「……カオス様は本当に不思議な方です」
「知らぬが、ワシらに何か隠していたりするのか?」
今回の集合を呼びかけたのは紛れもなくカオスなのだ。
彼女からの集合の合図というのは、はっきりいって何かしら厄介事の処理を頼まれることばかりなのでラスボスは皆警戒していたのだが
『ふむ、みんな……ああオーディンは出張っているか、ならいい……後で伝えておくよ』
朗らかに笑い、カオスが口を開く
『君たち、ちょいと厄介事の処理を任せてもよろしいかな?……ああ、そんなに嬉しそうな顔をしないでくれ!』
「してねえ」「してません」「してないが?」「するわけないだろうが」『またですか』『フザケルナ』
コホン、と咳払いをしてカオスは話し始める
『いやいや、何……君たちも気がついているだろう?この星に終末が近ずいていることを』
誰も彼もが頷く。
『だが、その終末は間違いなくエイルが阻止する……しかしその時ひとつ問題が発生しそうなのだよ』
「……問題?」
『そう、問題だ…………新たなラスボスが生まれる可能性という……ね』
「なるほどのう、均衡が崩れてしまう可能性というわけか」
「厄介」「それは困りますね」「ぬぅ……」『本当ですか?』『ナルホド』
『そこでそのラスボスを処理するための作戦を練りたいのだが……いかがかな?』
「エイル殿に任せ……なるほど?……エイル様だけでは対処できないと?」
悔しいけどと、本当に悔しそうな顔をして頷く
世界は八体のラスボスが均衡を保つことで成り立つ
もし誰か一人でもかけたり増えたりした瞬間、保たれた均衡は終わりを告げ……新たなる終末が生み出される
その場合、既にギリギリまで消耗されている理一の魂にトドメを指す可能性があるという訳だ
そもそも人を超えたとはいえ、エイルもとい理一の魂は既に許容範囲ぴったしなのだ
だが、先日倒した俊典の能力を吸収した際一時的にその許容量を超えかけてしまったのだ
故に今の理一は完全では無い、それだけでは無い
『理一は無理をしすぎている……それは皆もわかっているだろう?』
──彼の身には物質のありとあらゆる生がたっぷりと積み重ねられている。
破壊した物質の内部に記録されているマテリアルデータ
魔法の記録、武器の記録
それら全てを一度その身で記録し……それを受けてその能力を行使する
彼は簒奪者であり、奪うと言うのはそれだけ難しい行為なのだ
『───理一はあまりにも肩代わりし過ぎだ……本当に無茶を好むヤツだからね』
その言葉には哀愁が漂っていた
『20億年と言う尋常じゃない時間を、たったひとつの願いだけで保つ……全く他人事だけどあれと同じことは出来ないな』
「──思い出に浸るのはよろしいが、そろそろ再開しても宜しいかな?」
◇▽△◇▽△
『なるほど、その手が?……だがそれを納得してくれるような人じゃないぞ?理一は』
「それを納得させるのが君の仕事じゃないのか?」
『また無茶を言いやがるねぇ君ら』
「普段は出てこないからのう……こんぐらいやってくれないと困るんじゃが?」
『私からも……カオス様、お願い致します!』
『マモルオマエヤクメ』
『ぐぅ、言ってくれるねぇ……まぁとりあえずだが…………そうなると鍵はメリッサになるのか……なら彼女をしっかりと守らなければ……ね』
そんなこんなでとある会議は終わりを告げた。
◇
ラスボス達が元の場所に戻ったあとカオスは一人つぶやく
『──理一は私の宝物だ……絶対に手放すものか!─────』
カオスは知っている。
彼の無茶を、彼の弱さを、彼の悲しみを
最初から彼と旅をしていた彼女にしか分からないこともある
彼が段々と人間を捨てる過程を見てきた。それを申し訳なく思うこともあった
混沌と終末を司るラスボスが、こんな弱々しい考えで良いのか?
それはカオスにとって答えられない問題だ
『宇宙の生誕より前から私は生きてきた、その私の悲しみを、苦しみを背負ってくれると誓ったのは……彼だけなんだよ』
『────私はいつだってあなたを愛しているのさ────理一
───────かつて■■■と呼ばれた少女は、優しく微笑む』
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