第49話 後の祭り
ま、待ちなさい!と言うまもなく彼らは消えた
取り残された彼女は
「──は……いやいや、さすがに……ね?嘘でしょ?!アイドルほって帰るとか有り得ないって?!」
だが、オーディンの魔法により結界はわずか1秒で破壊され……必然的にライブステージは機能しなくなっていた
後に残されたのは、大量の気絶した住民と
──呆然と立ち尽くすきららの姿だけだった
◇◇
「──で?倒したの?そっちは」
「当たり前ですぞ?……あのお方に勝てるものなどおりませぬ」
2人は行きとは異なり、気絶したアリアやらローランを気遣う必要が無いのでめちゃくちゃな速度で飛ばす
スレイプニルの本来の速度は実に音速の50倍であり……その速度で飛行するとついでに発生するソニックブームは全てメリッサの手元にある刀により、消失していた
『
ありとあらゆる波を止める、神々の領域の刀
「さて、エイルの方は無事終わったっぽいね……いやぁ仕事、早すぎるって」
「では城の方に戻りましょうか」
◇
時は少し前に遡る
「さぁてベルゼオークとやらを拝みに行きますか?」
俺はそう言うと、ゆったりとした足取りでランペイジ血刃岬に足を運ぶ
今回は、俺一人でいい気がするが……まあこの子1人程度なら気にしなくていいか
「何よ!私怖くないもん!」
そう言って足をプルプル(強調表現無し)にして震えるレヴィア
「なら寒いのか?──あーちょっと待ってないま羽織を……」
「違うわよ!……ってかアンタこれからベルゼオークと戦うかもしれないのになんでそんなにのんびりと焦っていない顔してられるのよ!?」
変な質問だなぁ。と俺は首を傾げる
「──いやいや、だってただの雑魚相手に何をビビる必要が?」
「───っ?!すごい自信ね……」
事実を述べただけなのになんか呆れられた気がする。
と言うか、彼女は知っているのか『ベルゼオーク』についてを
「────ちっちゃい時に私は一度挨拶をしに行ったことがあるの……あの時、ひと睨みされただけなのに震えが止まらなくて……」
「ふーん?」
「その時の記憶が未だに頭から離れなくて……アタシ、アタシっ!!」
「なら今回ベルゼオークの相手は君に任せようか」
なんでそうなるの?という奇妙というか理解できないという顔をするレヴィア
「──いや、トラウマってさ……自分で超えると気持ちよくなれるのよマジで」
「─────────?」
俺は着くまでの間に彼女にとある話をしてあげることにした
◇
───かつて、エイルと言う名前を継いだあの日
あの後、俺はバアルに戦いを挑み……ボッコボコにされた
まるで赤子とプロレスラーの戦いみたいに、手加減されてである
それは当然、と言えばその通りで……実際ステイタス的な意味でも天と地の差があったとは今でも思うが
だが、肝心の気持ちの面で俺は負けていた
それはエイルを失った悲しみによる錯乱のせいかもしれないし
はたまた、俺しか人間がいないという絶望のせいかもしれない
そして俺は幾度となくぶち殺されかけた。
それはもう、トラウマになるほどに
勝てない。勝ちたいのに心が震える
いくら頑張ろうとも勝ち目がない。そんな戦いを繰り返した結果である
「……俺は弱いな……あれだけ意気込んでおいてここまで滅多うちにされて……ははは情けなくて笑えてくるよ」
そう、カオスに吐露したこともある。
それに対し、カオスは
『うーん、君さぁ……勝てないことに満足してない?』
そう言われた時は、さすがに何を言っているのか分からずにぽかんとした
『いるんだよ、結果じゃなくて過程が大事って言う奴───その考え今捨てな?言っとくけどこの終末世界を生き抜くにはそんな甘ったれた考えじゃ勝てないからね?』
「それは、……」
『あのねぇ、その過程は誰かが見てるから発生するものでいまこの世界にはお前とお前以外の敵しかいないんだよ!──なら泥臭く足掻けよ?!トラウマ?……知ったことないさ』
いつもと違い、かなりイライラとした表情のカオスを俺は奇妙な目で眺める
その顔には紛れもなく俺に対する怒りがしっかりと現れていた
「────お前、ちゃんと心があるんだな」
『当たり前だろ?私は君とリンクしてるんだ!……君がうじうじうじうじすれば、するほどどうでもいい感情が頭ん中を流れてきてうっとおしくてたまらないんだ』
「なら、何をすればいいんだよ……今の俺じゃあいつに勝てない……」
『なら人間一旦完全にやめよっか!』
「──へ?」
次の瞬間、俺の心臓にカオスは腕を突き立てる
「な、何を……?」
『これで君の心臓は私が握った!さぁ、もう君の生殺与奪の権利は私のものだ!……さて行こうか、勝つための戦略を考えてね!』
「なんというか、
俺はもはやついて行くのでやっとであった。既にここまでに5回泣いて笑って怒って……繰り返している
『まあ後の祭りって言うだろ?後悔トラウマ、そんなものははっきりいって不要なものだ……もしまだトラウマが残っているならば』
「ならば?」
『────悪魔にでも食わせておけ』
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