第48話 ライブtoジャガーノート

「─歌刀/桜吹雪」


 途端、世界が花びらで染る


「?!わ、私の支配が解かれた?!ありえない!」


 花吹雪による世界の上書き。

 基本的な性能はそれしかないが、それでもこの空間

 特にライブステージに対してはかなりの有効打を与えることに成功していた


 それ故に、メリッサは確信する


「次で決める」


 と。



 しかし、メリッサはまだエイルほど見通しがいい訳では無い


 加えて、きららもまたその全てを披露してはいなかった


「───次?、ふふふ……次なんてないよ」


「──あ?」


 次の瞬間、メリッサは自分の腕に痛みを感じる

 それは紛れもなく


 何だ?なぜ私は自分の腕に刀を……?


「ふふふそろそろころね?」


「ッ……!まさかとは思うけど……アンタ」


 きららはにっこりと天使のような笑みを浮かべて


「そうよ、だってここはだからね!」


 彼女のライブステージにおいて、そこに出演している人物は彼女の支配を受けてしまう


 たとえ、いくら強くとも……チート能力を有していようとも


 ちなみにそれがエイルに効くかと言われれば、まあ言わなくともわかるだろう


「───さてと、さすがに強いわねメリッサ……でもさすがのあなたでも、そろそろ限界……な……ん」


「あ?ピンピンしてるが?」


 メリッサは先程の傷を既に直し、そのうえで新しく刀を携えていた


「火葬刀/綻び」


 一瞬生まれた静寂を切り裂くように彼女の刀が振るわれる


 途端、世界が焼け焦げ始める


「?!まさかこのステージを焼くつもり?!」


「ん?察しがいいねぇ……」


 ごうごうと燃える焔を前にして、さすがにアイドルと言えども恐怖を感じ始める


「───ッ!『トルマリン・サマー』!!」


 花畑を手放すのは惜しい。けれど、ステージが燃え尽きてしまうのだけはなんとしてでも避けねば!


「─海か!これは……ちっ!」


『トルマリン・サマー』は海を呼び出し、水着に着替える技


 一言で言うと、いわば水着回のための技


 この固有結界である、『ライブステージ』の中でのみ、発動できる技


 かなり無茶なことをしている反動か、きららの頭がガンガンと痛む


「ッ……これぐらい!」


「ならこれはどうだい!『氷華刀/霙吹雪みぞれふぶき』!!!」


「海を凍らせる?!ありえない……ってかさっきからむちゃくちゃじゃない?!」


 それはその通りである。


 少なくとも、メリッサという化け物にのみ許されているレベルの無茶苦茶具合


 それでも、さすがのメリッサと言えども


「(っ〜さすがにこの短期間で強力な刀を取り出しすぎたか)」


 致し方ないのだが、彼女の取り出す刀はほとんどが化け物級のものたちばかりだ


 それを保存するだけでもかなりの労力を有しているのだ


 やがて吹雪は消え去り、海は氷により固まる


「──さすがにこんなクソ寒い海で水着はきちぃだろ?」


「誰のせいだと!」



 そんな他愛のない。いや、まあ割と死線飛び交う場面なのだが


 ところに1人の乱入者が混ざってくる









「─────なんで……まさか」


「ふっふっふ〜我、見参!」


「え?誰このおっさん」


 おっさんと呼ばれたオーディンは少し悲しそうな顔をしたあと


「メリッサどの、引く時間でございます……」


 そう告げた。





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