第15話 愉悦は仕込みから
「何?!城に曲者がきただと?!」
俺様は慌てて城の内部を確認する。そこまで酷い現場ではなかったが、それでもかなりの被害が発生していた
「……誰がこんな事を?!……ええい、待て女共は無事か?人質にしている男どもは?!」
参謀のガザルを俺様は呼ぶ。
「トシ様、どうやら数えたところ1人もかけておりませぬ……ある程度お宝などは盗まれていましたが、それ以外特には」
「ちっ、でも宝を取られたのかよ……あ、警備責任者は首跳ねとけよ?」
「は、すぐに」
「で、誰が侵入してきたかとか分かるか?……」
「それはさすがに分かりませぬ……」
俺様は呆れながらも玉座に着く
「まあいい……それより昨日拾った上物の味見をせねばなァ!……おい、連れてこい……!」
俺様の声に合わせて、目の前に20人程の女が連れてこられる
「うーんお前は好みじゃない、下郎にでもくれてやれ」
1人目の女は、そのままの格好で連れていかれた。
「ふーん、お前は案外可愛いが……まあ胸がちっさいな……まあ案外いい声で鳴いてくれるかもな……連れてけ」
2人目は涙ぐんだ姿で上の部屋に連れていかれる
「(はぁ……まあこんなもんだよな……全く最近はいい女の数が減ったとか言ってたし……)」
そんなことをして、最後の一人になった
「おお!お前は……へぇ?……いいじゃないか!……くくくくく久しぶりの上物だァ!」
その女の名前は「ワトソン」。
どこかの男の運命の人。そしてその運命は崩れ去った
「ほおーその眼、俺に従ってたまるかというその反逆の目……いいぞぉ?!その目の女を屈服させた時が……1番性を実感するんだよなぁ?!」
そう言うと、その女の目の前に立ち顔を舌でべろりと舐める
「そういえばその男の恋人と名乗る男が城に報復に来たと報告がありましたが……逆に腕を切り落として血祭りにあげたと衛兵が」
「ちっ、なんだよ良いとこなのに……でも、それはいい情報だァ!……へへへへこいつの目の前でその男を殺せばさぞいい顔をしてくれるだろうなぁ!……へへ……」
そう言うと、トシはその女を連れて自室に入る
部屋にはお香がたかれていた。入っただけで並の人間を欲情させるようなそんなお香が何個も炊かれ、そこに待つのは服を全て脱ぎ散らかした女たち
俺様はいつものようにそいつらを足蹴にしながら疲れを癒すための儀式を始めることにした
「HAHAHA!!!素晴らしいな……さすがは異世界……俺様の、俺様の世界だ!!!」
それはまさにこの世の至福。彼の欲望の絶頂。
◇◇◇
────そして、それこそが彼の死までのカウントダウンとなることは彼はまだ知らない
◇◇
────数刻前、トシの城にて
「さて……ここがトシの城か……なんとも悪趣味だな」
「そうですなぁ……早いところやることを済ませましょうぞ」
「ふふふふふ、さあ、やって野郎じゃないですか!」
俺たちはトシの城の門の前に立ち、ゆっくりと扉を乗り越えて侵入する
「な!何者だ!ここはトシ様の……グハッ?!」
「よし、バアル……まとめて静かにしてこい」
俺はバアルとオーディンに指示を出す。
「ははは……よろしいのですかな?……貴方様のポリシーに反するのでは?こういった先手必勝の行動は……」
「まあ、俺の話じゃない……これは優しいニック君の為だからな……ほら、あれだよ……代行って奴だ」
「なるほど……ではワシも全力を出してそれに応えるまでですな」
「オイオイジジイにいいとこばっか見せてらんねぇぜ……!んじゃ軽くひとひねり……行きますぜ?バアルの旦那!」
「だ、誰だ!……お前たち、今すぐにここを……ひっ?!」
バアルは集まった兵士たちの前にゆっくりと着地し、高らかに名乗る
「我が名は魔神王バアル……貴様らの罪業を全て裁く魔神なり!……貴様らの罪、我直々に……断罪してくれようか!」
その口上はその場にいたもの全ての心臓を鷲掴みにする
悪魔の名乗りあげ。それはいわば契約とでも言うべきもの
悪魔は本来罪を裁くのではなく、罪を被せる側だ。
ただし、バアルだけはその逆であり……罪を裁くという役目をただ一体受け持っている
「……魔神機構/
刀身に闇が集まる。否、それは闇ではなく、光だ
真実を裁くバアルの剣は、強すぎる光により闇に変質しているだけである
「……魔神外装/落日…………氷獄」
城全体が凍る。瞬時に罪を裁き、人々を気絶させる強靭な裁きの光の氷獄が城の住人を皆、停止させる
そして、今まで奮っていなかった剣を静かに振るう
─────キン────と言う静かな、それでいてまるでこの世のものとは思えぬ剣閃が閃く
「魔神奥義/宿業両断!!!」
その技は、全ての呪いを切り落とす斬撃。この一刀にてトシの能力による束縛は全て切り落とされる
「……ご苦労、バアル……オーディン準備は出来てるか?」
「モチのロンだぜ!」
倒れたもの達は皆それぞれ綺麗に空中で選別されていく
それらを選別し終えると、今度はそれらと同じ見た目の人形が大量に降り積もる
「さてさて……それでは……こいつらを魔術でホイホイっと〜な!」
それらはオーディンの魔術により、まるで本物そっくりの動きを始める
「うむむ……ここはもう少し削った方が……」
「ここでやるな、その凝り性を!」
「ですがこれだと本物より少しだけバストアップしてしまってますぜ……?そんなのあっちゃダメでしょうが!」
「知らんがな!」
◇
「さて、それではあとは私が好きにしてよろしいのですな!」
オーディンが張り切って目をキラキラ輝かせている。
「まあ……その人形に指定した効果の魔術を掛けとくだけでいいからな……?やりすぎるなよ?……おい?聞いてますー?」
「クハハ!この魔術も混ぜてやろう、この異物も差し込んでやろう、ならこれと……これも、ああこいつも混ぜれば……いや待てこれを混ぜたら!おお、素晴らしい!素晴らしい!!!」
あ〜ダメだこれ。もう自分の領域に入っちゃった。
俺はバアルとため息をついて、城を治しに取り掛かる
◇◇◇
「で?何を仕込んだんだ?」
俺は帰り道にオーディンに聞く。あの人形たちは、本物と何ら変わりない動きをして、そしてちゃんとトシの能力にかかってるふりができるものだ
それに様々な呪詛を練り込んでおけと命じたのだが
「……ふふふふふ聞いて驚いてください!……まずは…………」
◇◇
それを聞き終えた俺は、思わず自分の急所だったものを見つめる
「……やっぱお前を敵に回すとろくなことにならんよな……はぁ……よく勝てたな……俺」
「ははは何を、私はいつも自分の趣味に生きていますからな!……私が趣味をやめた時はまあ戦いの合図ですからなぁ……!」
「ホント、戦の神がそれでいいのか?」
「番外戦術は戦の基礎、ですぞ?」
そう言ってオーディンは屈託のない笑顔を見せた。
その笑顔は、まあ……恐ろしいくらいにかっこよかった
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