第2話 宣戦布告

 その後、なんやかんやあって終末世界を生き抜き、果てにラスボス達をボッコボコにしたのだが、それはまぁ別の話で


 ◇◇


 ──「あの後、貴方様が追放された後ですが」


 そう言って話してくれた内容は、はっきりいってふざけていた。

 馬鹿にしているのかとクラスメイト共に突っ込みを入れたくなるレベルの話だった


「あの後、まず皇輝……と名乗る方が勇者の剣を引き抜こうとしました……ですが全くピクリともせず……キレた皇輝様は唾を吐き捨てていました」


「なるほど?……あいつ何やってるんだ……」


「その後、ほかの生徒の方もこぞってぬこうとしたのですが……」


「ですが?……」


 にっこりとその女性は笑って


「─全員全くピクリともしませんでしたね……ええ拍子抜けするほどに」


「で?」


 ───以下その際の会話(オーディンの魔術による再現PV)


「おい!なんで誰も勇者じゃねえんだよ!……」


 皇輝は頭を抱える。クソ!これだとまじで


「……やっぱり理一が勇者だったんじゃ……俺達はまずいことをしたんじゃ?……」


「クソ!黙れ!……あ〜もうまずいぞ……俺の覇道に既に陰りが…………そうだ!……耳かせ!」


「俺?……ふむふむ……OK!」


 皇輝はほかのクラスメイトに頼んでどうやら下準備をさせていたらしく、今のこの国に不満を持っている大臣と面識を持っていた……


(ここで俺達が勇者じゃなかった時のプランB……即ち……)


「すいません!ここにいるクラスメイト達全員は今からこの国を捨てようと思います!なぁ皆!」


「うん、俺たちが勇者になれない国なんて滅べばいい!」


「そうよ!そもそも白馬の王子様なんてこの国には居そうにもないわ!」


「ってな感じだから……悪いね!」


 そう言って王様たちの静止も振り切りながら窓ガラスを叩き割っていっせいに飛び出していく。


 そうしてその場が唖然、としていたとき……大臣『ガルガット』が現れ、そのちょび髭を大切に撫でながら


「王様よ……貴様は少しあの子らを舐めすぎだぞ?……操らは一人一人が王国の鍛え抜かれた兵士より、騎士より、冒険者より圧倒的に強い……そしてその勇者にふさわしい奴らに抜けられたこの国は……果たしてどうなるのか……」


 そう言うと、高らかに笑いながら去っていく。後に残されたのはただ呆然とする王様とお姫様だけであった


 ◇


「その後、彼らは一斉に近くにある帝国……カンザス帝国、ミッドガル皇国、ナキリ武道国、ランサス法国に別れ……それぞれの国の勇者パーティとして君臨することになりました……彼らは圧倒的な力を得てその国を全て統一、今や一大国家である新たな国……『超大国グロリアス』が誕生しました……ですが……その……」


「その……どうした?……」


「勇者の剣はこのメルバニアにしかありません……つまり……偽物が世界を救うという戯言を言っているわけです……」


 なるほど。まぁあいつらにこの世界を立て直す……そんな力も知能も無いだろうな……


 俺は呆れながら、そうつぶやく


「それで?君は俺を待っていた……そんなふうに感じたんだが……?」


 その言葉に、目を輝かせて頷く。


「はい!私はメルバニア国女王、メルバニア=アリア!……貴方を心よりお待ちしておりました」


 そう言ってアリアは俺に祈るような仕草で膝を着く。


「私は、母と父の遺言をしっかりと信じておりました……!」


「遺言?……あぁあの二人は亡くなった……のか……それは済まないことを」


「いえいえ!父も母もあなたの事を信じていました!……こちらをどうぞ!」


 そう言ってボロボロになった服の内ポケットから1枚の手紙を取り出すアリア


 俺はその手紙に目を通す。そこには


『もしこれをリイチ君……君がみてくれていることを願う

 我らの王国はもうダメじゃ。


 ……あヤツら異世界人の手で国の戦力という戦力は全て奪われた


 ……最早この国はお終いだと民たちは嘆き、他の国へと去っていった


 ……王妃も暗殺者の手にかかり、致命傷を負ってしまった


 ……それにこの手紙を書いている最中も辺りで王狩りの奴らが闊歩している


 ……幸いアリアは賢い……だからこそ、この子を……いやこの国、違う……この世界の命運を君に託したい!


 …………私はあの日、君の姿を見た時、間違いなくこの男は世界を救ってくださるお方だと確信しておった!……もちろん姫も同じじゃ……!


 ……だから……頼む……頼む!……わしはもう長くは無いじゃろうが……それでも……この世界を……我が娘を……頼んだぞ! 』



 ─またしても託されてしまった。俺は溜息をつきながら手紙をしまう。


「王様、まぁあんたの目は本物だったぜ?」


 俺はゆっくりと体を伸ばす。


 と、その時


 ───「へへへ見つけたぜ!アリアお嬢様!……ついに最後のひとりを見つける事ができて俺はラッキーだ!」


「ひ!あ、あなたは王狩り……」


「おうお嬢ちゃん独りじゃねぇのか?……クソ何だよぉ……せっかくいい感じに絶望させれると思ったのによォ!」


 そう言って無精髭のガタイのいい男は壁を叩き壊す。


「まぁいいや!そこの野郎共を始末したあと、改めてじっくり可愛がってやるぜ?……ア・リ・アさまぁ?……野郎共こい!」


 その合図に合わせて10人ほどの似たような格好の奴らが現れる。全員がしっかりと武装しているのを見るに『王狩り』というのもしっかりとした組織なのだろうと改めて思う


「へへへ……アリアお嬢様を初めて見た時、俺の中で何かが弾けましてねぇ……今から自由に好きにできるなんて最高だなァ!」


「お頭!俺たちの分の場所残しといてくださいよ?」


 そう言って現れた男たちを眺めて俺は


「──なぁ雑魚ども?……ひとつ聞くが」


 怯えるアリアを抱き寄せながら


「──俺に勝てる気でいるのか?」


 そう聞く。


 答えはもちろん


「当たり前だぜ?……お前みてぇな武器も持たねぇ雑魚相手なんぞ、赤子の手をひねるより簡単だァ!」


「──そうか、ならお前の手を捻るのも赤子の腕を捻るより簡単だと言っておこうか」


 俺は右手を胸の前で開いたり閉じたりしてみる。

 なんとなく昔からこうして手袋を嵌めるようなポーズをするのが好きだ。


「へ!てめぇ見てぇな雑魚なんぞ!……あ」


「─2度も言うな、口を閉じろ─」


 ぐしゃっと言う音が王城の一角に響く


「お、お前!今何を?!」


「慌てるな……なんだ?分かってなかったのか?……今狩られるのは……?」


 俺は俺の権能スキル……2つしか存在しないスキルの片方を発動させる


「……まぁ折角だしアリア様にも見てもらうべきかもな……『終末鎧装』」


 俺の周りを無数のポリゴンが覆い尽くす。そしてそれらは、一瞬で俺の武器庫へと変化する


「舐めやがって!死に晒せ!」


 そう言って突っ込んできた王狩りを


「『終末鎧装/剣』」


 その姿勢のまま刺し殺す。ついでその近くにいたやつはオーディンの魔術を受け、爆散していた


「さて?……まぁ武器を出したはいいが……君らやりたそうな顔をしてるね……いいよ?好きにしな!」


 俺はそう言って今、この場にいたラスボス共に命令する


 その瞬間、その場にいる全ての残った王狩りは皆思い思いの方法で殺された。


 悲鳴などない。それぐらいに圧倒的に、一瞬で



 ◇◇



 後始末を終えたあと、俺は改めてアリアと話をする


「……1つ確認だが……俺の他のクラスメイトは皆各国に散らばっている……そう言う認識でいいな?」


「はい!……その顔は?」


「まぁ気にするな……国を滅ぼすのには慣れっこだからな……まぁいいさ……分かった……君のためというより、俺を信じてくれたあの王様やらお姫さまの為に……この国の復興、そして世界の平和を叶えてあげよう」


 その時の彼女の笑顔はたぶん彼女が人生の中でしてきた笑顔の中で1番のものだったのだろう……おかげでその後顔がつったと言っていたが


 ◇◇


「ではまずはひとつ、やるべきことがあるのだよ……そう……」


 俺はにっこりと笑って大量の手紙を用意する。


「……手紙ですか……?全部で32通有りますね……」


「その通り、これはあのクラスメイト達宛の手紙さ……ちなみに先程高速で書いたものだ……さて?この中身について……教えてあげようか?」


 ◇◇◇







 その日、世界各地にいた幸せの絶頂だった転移者たちは地獄に引き戻された


 その1人、皇輝こと『カイザー・コウキ』はその手紙を握り潰す


「ふ、ふざけるな!……あいつなんで戻って来れてるんだ!!??まずいまずいぞ!あいつの事だ……絶対俺を許さない……あぁやばい!やばい!……クソ!転移者たちと連携を急げ!……クソ!クソ!クソ!!」


 手紙の内容はこうだ。



『拝啓─俺を終末世界に追放しやがったクラスメイトの皆様方へ。


 無事帰還の目処が経ちましたのでラスボス共を引連れて殴り込みに行かせて頂きます。


 ───覚悟の準備をしておいてね!


理一より愛をこめて』



 こうして俺は世界各地に散らばるクラスメイトの野郎共を、得体の知れない悪夢へと誘うことにしたのだった


 ……?なんでわざわざ手紙をって?


 人間、いつ起きるか分からない確約された恐怖ってのが一番怖いしストレス溜まるからね!













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