第44話 紐付けてみれば必然

 始まりはただの偶然。しかしそれを必然と捉えるかは君しだい


「で?レヴィアさん……君はどうしてここにいるのかな?」


 場所は魔界。その地下牢獄。


 なんのことも無い、ただ紐付けておいたワープ先がここになっていたのだ


 まあまずその姿を見て俺はため息を吐き出す


 顔も目もボロボロ……体は傷だらけだが、致命傷はほとんどない


 間違いなくこれは匠の技だ。


「……に……げて……」


 ん?と俺は疑問符を垂らす


 途端後ろでコツコツという足音が響く。


「すまないがここで君を捕えさせてもらおうか」


 そこに居たのは間違いなく強者と言って差し支えない輩……悪魔であった


 俺は呆れた声で聞き返す


「……この世界のバカは戦力差に気が付かないほどの愚かな奴らしかいないのか……」


「……ふふふふ我のことを舐めているな?このが一柱、強欲のアザゼルを!……」


 ん?七つの大罪?……あーそんな奴が確かいた気がする……確かトシのとこで……っとそんなことはいいや


「『終末鎧装/聖剣』」


 手の中に剣が生み出される。それは瞬く間にそのままその悪魔の体を穿つ。


「?!が……な……?!」


 そのままぐしゃりと倒れたそいつを起き上がらせ、引きずって行く


「レヴィアー無事?」


「……うん……でもお父さんが……」


 思わず泣きそうになっているレヴィアを撫でながら、話を聞く


 メリッサと俺が一緒に鰹節を買いに言っている時に父親から伝言が届き

 それを受けて彼女は慌てて魔界に向かったのだとか


「……お父さんが異世界人と邪神に捕まったんだって……お願い助けて!」


 異世界人ねぇ……と俺は首を傾げる。


 まあ確かに異世界人ならあの魔王を捕まえることぐらい容易いとは思うが……


「……まあひとまず城に帰って休むとしよう……悪いが君の体を一旦調べる必要がありそうだからな」


「?……わかりました……」


 そう言って俺は転移するが、その際にその様子を誰かに見られていることに気がついていた。


 相手はおそらく俺に転移させるのが目的だったのだろう


 その証拠に俺が転移した瞬間、その馬脚を表していた


 ─だからなんだ?という話であるが






「そもそも、俺の転移先に着いてきて、めちゃくちゃにしてやろうとしてもむしろ逆に捕まるだけって分からなかったのかな?」


 俺の城に着いてきた悪魔は、そのままバアルとラジエルの手で普通にボコボコにされ、そのうえで天日干しされ……その後じっくりと鍋で煮込まれていた




「……ん〜美味しいな……案外悪魔は天日干ししてから煮込むといい出汁が効いていい感じだ」


 俺はレヴィアに血のスープやらレバーやらを食べさせて回復させつつ


 今回の敵が誰なのかを考えることにした。



 レヴィアの肉体には発信機が取り付けられており、それの座標をマキナの手で逆探知したところ


「……ふむ、魔界の中腹……確かここは」


「……ランペイジ血刃岬……間違いなく邪神ベルゼオークの仕業でしょう……おそらく……」


「まあこんな手を使うってことは間違いなく勇者の剣目当てだろうな」


 俺は先を読むことにした。まず間違いなく勇者の剣はその性質上狙われるはずだからな


 そのうえでそれを使って何かしてくるならば


「……勇者の剣……あれには……言い換えれば、機能が着いている……それをどちらか自分のモノにするつもりなのだろう」


 とはいえ、俺がそんなものを取り除いていない訳もなく


「……まあせいぜいあの剣を魔剣に改造して世界の法則の一部を歪め……パワーアップするとか……大方、そんな感じだろうな」


 なんとなくだが、そんな結末になった時は魔界が滅ぶ気がする


 あの勇者の剣は引き抜かれた。いわばセーフティの解除された銃のようなものだ


 勇者でなければ振るえなくとも、異世界人の力をもってすれば使えなくともその一部を利用することぐらいはできる


「……邪神ベルゼオーク……そいつがどれほどの存在なのかは知らないが、バアルに勝てるとは思えない……だからこそ……勇者の剣なのだろうな」


 そんなことを話しながら、俺はメリッサたちの方がどうなっているのかを少しだけ心配しつつ悪魔の煮付けを食べる


「……ん〜もっと塩味が欲しいな……」

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