第45話 王国の話
馬車の中、アリアとローランは気まずい顔をしてメリッサを見る
「……んだよ?アタシそんなに変か?」
「……とても」「右に同じく」
メリッサはかつての知り合いのお姫様のピンチを助けるという目的のためにアリアとローランについて行っていたのだが
「……さすがに服装を綺麗なものに着替えましょうか?」
そう言われてしまったので仕方なく、本当に仕方なくドレス姿に身を包むことにしたのだ─しかし。
試しにドレスを着てみた訳だが一言で言うならば
「……筋肉モリモリマッチョウーマン……」
流石にエイルにさえそう言われてしまうと少し恥ずかしかったのだが
どうにも鍛えすぎた肉体は間違いなくドレスとミスマッチであったのだ。
普段はダボッとしたズボンに上の服を脱ぎ捨て肩からかけているスタイルなのであまり気にならなかったが、いざ着飾ってみるとどうにもその鍛え抜かれた肉体の主張が激しすぎるのだ
「せめてその筋肉半分にできないかしら?」
「─無茶を言わないでください」
その結果ドレスを諦め、ロイヤルスタイルもといイギリスの紳士淑女みたいな服装をまとってみたら
「─驚いた、服が吹き飛ぶとは」
弾け飛んだ。それ以外に何を言えばいいのだろうか
パーン。という、漫画でもなかなか聞くことの無い効果音がして服が弾け飛んだ
エイルは小一時間爆笑していたが。さすがに笑い終わったあと
「──お前さんもういつものスタイルで行きな?─な?」
などと言われてしまった。虚しい
その結果風流な日本の武家の人みたいな見た目になってしまったが、なんとか着飾って馬車に乗り込んだのだ
なお乗り込む際にも1悶着あり
「……バハムートばかり!今回は私の機械馬車を使います!」
「いえいえこういう時こそ魔王馬を使う時ですぞ?」
「天使の馬は空を飛びますよ?」
「それぐらい機械でもできますぅ!」
誰の馬車を使うかで割と揉めていた。
結果、オーディンが提供してくれた足が八脚ある馬『スレイプニル』に乗り込んだのだが
──この馬、アホほど早いのだ
何がって、神様の馬ですので当然ながら速度は音速を超えていまして
そして乗り心地はあまりよろしいとはいえず、その揺れによりアリア、ローラン、メリッサの3名はフツーに酔った
まあ吐くスペースなどあるわけが無いので
「「「オロロロロロローーー」」」
空を舞う馬車の中で吐瀉物がキラキラと輝いていたそうな(後日談)
──その結果、おめかしした格好を脱ぎ捨て
水辺でひたすら体を洗い流すことになったのだが
「ん?メイ?……まじ?」
その時ばったりとであったのだ。ミズカと
暖かい水をかけられて服を綺麗にしてもらった3人はミズカに例を言ってその場を去る
その様子を見てミズカ、もとい岩清水は
「──まさか汚物を綺麗にする魔法が役に立つとはなぁ──待てよ?この魔法上手く使えば浄化出来たりするんじゃ?」
謎に好奇心にかられ、とりあえずその魔法を『浄化』と名ずけてご満悦だった
馬車は山岳地帯をかける。
「ひいいい!?!魔物来ました!メリッサさあん!」
「ったくキリがないねぇ!
軽め短めの刀を振るう。馬車から落ちないように慎重に近ずいてくるヤツらを斬り捨て、馬車は走り抜ける
「血、血が目に入りましたわ!ローラン?!」
「ええい姫様の顔に血を飛ばすなど許さんぞ!『聖剣抜刀/
前方にいた魔物を聖剣から放たれた光の束が薙ぎ払う
今のはローラン騎士団長が保持する聖剣『デュランダル』の秘技
あまりの硬さに一度たりとも刃こぼれしなかった聖剣デュランダルの伝説を元にした彼女の必殺剣
その威力は、この世界の人間が保有する武具の秘技の中でも三本の指にはいる技である
「クソ!キリがない!……飛ばせるか?『スレイプニル』!!」
「オーディンさんの手助け、行きますぜ!」
そこにオーディンが支援に入る
彼はいつものオタクスーツを脱ぎ捨て、普段着である
とんがりハットに幅広のマントを着飾り、片手には明らかに異質な槍を携えていた
「──道を開け!『
──山に穴が空いた。そこをスレイプニルは走る
そうしてかけてゆくそれを見届けたあとオーディンは近くに潜んでいたこの魔物を呼び出した術者と対峙する
「……なんと、今の一撃で全て貫くとは─しかし油断したな?その槍は今手元にない!故に─死に晒せ!」
そう言って襲いかかる術者を退屈そうに眺めたあと
「『
その場にいた潜んでいた全ての分身体を含む術者全てを雷にて焼き殺す
「槍がなくとも、俺は俺だ……神様の事、舐めんじゃねぇぞ?」
こうして、オーディンの活躍によりなんとか目的地にたどり着く三人
しかしそこで待ち受けていたのは火炙りにされていた親友と
「来たわね!さあ!この私、
そう言って鎮座する「空星きらら」がいた
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