第46話 それこそが偶像たる所以

『アイドル』こと空星きらら。


 彼女はクラスメイトの中でも最も男性人気が高い女だ


 クラスメイトたちのことは所詮ただの自分を崇めてくれるだけ

 つまりは銅像のようなものと認識している


 数日前に理一から手紙が届いた時、彼女は


「ふーん雑魚の理一がよくもまあ……あたしたちを殺す?……全く冗談が酷いわよ」


 そう言って手紙を投げ捨てて配下の男共を眺める


「どうなさいましたか?きらら様!」


 男たちは元々国の重鎮達だ。ここにいるのは彼女に乗っ取られた国の民たち


 彼女は5年間で3つの国を落とした。いや落としたというのは少し説明不足かもしれない


 正しくは、させた。と言うべきか


 王様を自分の能力、『偶像崇拝アイサレルモノ』により自分のモノとしたあと、女を追放。または女を眷属として操る


 そのうえで、自分に歯向かう奴らは皆虜にして行った。


 とは言え彼女はあくまでただの女性だ。戦闘のセンスはからっきしである


 彼女の支配はかなりの規模となり、たまに他のクラスメイトとぶつかって揉め事になったりもしたのだが


「〜〜かわいい〜〜きららちゃんの頼み、聞いてくれるよね?!」


 と可愛らしいポーズをすれば、クラスメイトと言えどもさすがにしたがってくれていた


 彼女は自らの敵などいない。いや詩織だけは予想ができないので怖いけど……それ以外は基本大丈夫だろう


 そう思っていた。しかし理一が帰ってきたことを知り


 少しだけ慌てつつも


「まあ光輝に追放された程度のよわよわなヤツにできることなんてないよねー」


 とあぐらを書いていた彼女だが


 青井。蒼原。岩清水……彼女らが倒されているのを知り……さらに天岸が裏切ったことを知り


「──まずい!このままだとあたしも殺される!?……ひー何か手を打たないと!あーやばい、やばい!……」


 そんな感じで慌てていた彼女の元に


「たぶん次俺が狙われるからさ、助けてくんね!?」


 そう言って内田が現れた






 ◇



 2人は共に手を組み、とある作戦を仕掛けることにした。


 まずはあいつらの弱点を探ることから始めたのだが


「お!2人ともーあいつらの弱点教えてやろうか?」


 畑山 龍樹によりもたらされた弱点の説明を受けてひとつの行動を起こした


「あの王族、アリア様だっけ?……あれはただの人間だから1番利用しやすいんだよね」


 その言葉に従うなら、おそらくあたしたちが前裏切ったあのお姫様を利用して戦力を削ぐ


 それが最前の方法だろう


 もちろん、それが決まれば確実に理一に嫌がらせができる。


 だが、その程度で理一を倒せるのだろうか


 2人はバカではあるが、その程度ぐらいわかった

「少なくとも、トシがやられるならば悪魔の手を借りるしかなくないか?」


 そういう内田の言葉に賛同した私は


 ◇





「何の用だ!──俺様はいま忙しいんだ!貴様ら人間共ごとき、片手で焼き殺して」


「まあまあ、少し話を聞いて貰えませんか?──悪い話じゃないと思うんですよ、そうかもしれないと言ったら?」


「────仕方ない、聞いてやろう。だが忘れるな?──我の目に嘘などお見通しであるぞ?」


 あの時の邪神ベルゼオークの見た目は間違いなく弱った蛇のようだったが


 その後、内田くんがベルゼオークと契約を結んでからその力は間違いなく蒼原を超えたと言えるレベルまで到達していた


「──使えるなら使わなくちゃね!」


 そう言って笑う内田くん。その迫力に私は気圧されていた


 ◇



 私は臣民達を扇動し、まずは舞台を整えることにした。


「アイドルの底力、見せてやるわよ!」


 国の中に存在するありとあらゆる物資をかき集め、それらを分配して民の武装組織を国の周囲に張り巡らせる


 近くには山脈があり、そこを超えてくるとはさすがに思えなかったので


「道すがら兵たちを配置して!……魔法使いの人達はこっち!」


 まあアイドルが本来やる仕事では無いのぐらいは分かってはいたが


 それでも、アイドルにできることをやらなくちゃ!


 その一心で私はたくさんの兵士の網を張り巡らせた


 これでいつ来ても大丈夫なようにしたら


 作戦を再び打ち立てる。


 まずアリアと交流のありそうな奴らをピックアップし、それらを囮にしてアリアをこちら側に呼び寄せる


 そうすれば、アリアは所詮ただの人間だから操ることができるし、それを盾として利用して理一を脅す


 それが上手く決まれば、今度はそのまま交渉するように見せかけて悪魔の手で魔界に引きずり込み


「あとはベルゼオークと内田くんのコンビの力でボコボコにしてもらう!」


 うん完璧な作戦だ!






 ─────そう思っていたのに


「まさかの二手に別れるとか、意味わかんない!あぁイラつく!」


 私は部下に命じて捕まえてきたアリアの知り合いを火炙りにしながら眺める


 こうでもして愉悦に浸らないとイライラで頭がおかしくなりそうだ


 と、ものすごい轟音がして馬に乗った奴らが現れる。


 私はめんどくさいけど、生き残るためだ、仕方ない!


 そう覚悟を決めてそいつらに名乗る


「───来たわね!さあ!この私、偶像アイドルを讃えなさい!愚者共!!」










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