第4話 優しくない話
俺達が魔王に会いに行って戻って来たのと同じぐらいの時刻に
─「あぁ……面倒臭いけどやるしかないぞ!……おい!リモート会議すら出来ないのか!」
皇輝ことカイザー・コウキはほかのクラスメイトに緊急で会議に参加するように呼びかけていた
「クソ!……あいつらまさか知らないのか?……」
だが、会議に参加してくれたのは僅か数名のみ。それ以外の奴らはと言うと
『青井 /蒼原/ 天岸 /岩清水/ 内田 /清永 /九門 /毛宮 /小田原 /笹井 /佐藤/ 墨白 /瀬名 /空星 /田上 /地原 /月内/ 照ノ内 /鳴宮/ 西田 /主岡 /猫似 /畑山 /日崎 /古畑/ 不死田 /村田 /矢田 ……欠席』
この場にいるのは神田、潮沢、三隅そして俺の僅か4人のみ……いまさっき上げたほかの奴らはこの件をお前らが犯人なんだからお前らで片付けろ……と言ってきた
巫山戯やがって……!
俺は頭を掻きながら手元にあった紙を握りつぶす。
「なぁ、そこまで恐れる必要は無いんじゃないか?……そもそもこんなわざわざ手紙を出してくるような馬鹿だし……それこそ運良く戻ってこれた……とかじゃないか?」
三隅がそう言ってお茶を飲む……だが、その手が少し震えていたのを俺は見逃さなかった
「強がりはやめろ三隅……いや、ケイだったか?」
「だとしてもだ!……俺達が勝手に不安になっても意味が無いだろ!……そもそもお前が原因だからな!……お前があんなプランを……」
「うるさい黙れ!…………はぁ……済まない言いすぎた……いや、確かにそうだな……俺の不手際だ……」
俺がその場の感情に任せてしまったのが原因……いやでもそもそもあいつが勇者でさえなければこうはならなかったのに……
「私は一旦自分のとこの王子様の手を借りて兵力を募るつもりよ……こんなとこで死ねないわ!……せっかく念願の王子様と結ばれたのですから!」
神田……いやアヤはそう言うとどこかに行ってしまった。
「あ、アタシだって自分の理想を叶えれたこの世界を捨てるなんてできない!……アタシだってどうにかしてやる!」
潮沢……いやエリカは覚悟を決めたのか出ていってしまった。
「ケイ……お前はどうするつもりだ?」
「どうもこうもないさ!……どうせはったりなんだ、楽に構えていたらいい!」
そう言って出ていったその後ろ姿を眺めて俺は
「……その割に目元の隈を隠せていないのにな」
そうぼやいた
だが、俺は今は一国の主だ……無闇やたらに兵を動かすにはリスクが大き過ぎる……だからまずは偵察だ
「アイオン、居るか?」
「は!ミカドさま!……何なりと」
「……俺達を脅してくる犯罪者が現れた……そいつを……その男を見つけ次第殺せ!……手段は問わない……!」
女はニヤリ、と笑い
「えぇ手段は何でもよろしいのですね?……」
そう言ってまた去っていく
ひとまずは安心だろう……あいつはあの妖艶な肉体でいく人もの奴を殺してきたまさに暗殺のプロ。……アイオンが失敗した時にでも次のプランを考えればいい
彼は聡明であったが、少しだけ楽観視しすぎていた。
いや、それは現実逃避だったのやもしれない
彼がもし、この時に何とかクラスメイトたちを集め切ることが出来ていたのならば、彼らにふりかかる災難を少なくできたのかもしれない
だが、そんなことにはならなかったのだ。と追記しておこう
◇◇◇
暗闇の中、女は走る。
女の名はアイオン=ガッサ、超大国グロリアスに所属する暗殺部隊、『影の魔女』の隊長である
「くふふふ……簡単な仕事だ……1人だけだと?……私を舐めているな……」
女はそう言いながら走る。
目的地は、メルバニア。潜伏してその男の首を取ってくるだけの簡単なお仕事
それに万が一の時はこの宝剣『リーパー』がある……こいつは私が死んだ時に設定したリスポーン地点に戻してくれるものだ……これがあればまぁ楽勝だろう
─そう彼女は思っていた。
彼女がメルバニアに入った時、彼女の姿はバッチリとマキナの写真に捉えられていた
つまり、どういうことかというと
「……あ?何だこの看板は……なになに……暗殺者はお帰りください?だと?……はあ?笑わせるなよ!」
そう言ってその看板を蹴り飛ばす。
そしてその彼女が城近くに来たその時であった
「うーん君敵性存在だよね?……まぁ死にな〜」
突然目の前に少女が現れた事で彼女の足が止まる。
「誰だ!……ちぃ!『影魔法/
咄嗟の判断でしっかりと攻撃に移行できている点を踏まえると、彼女は確かに強い存在だったのかもしれない
─ただ、運が悪かった
「今、何かした……?」
「な!……ならこれを喰らえ!『─束縛するは我が影の如し!体を這うは蛇毒の呪いなり!』」
マキナに黒い蛇のような影がまとわりつく。それを見てアイオンはにやりと笑う
「─『
その影が……爆発した。完璧に決まった!と彼女は心の中でガッツポーズをしたのだが
「……?」
そこにはかすり傷すらない少女がいた。
「あの?そろそろ良いですか?……」
そう言ってその少女が手を前に突き出した瞬間
音速を超える鉄の拳がアイオンの腹を強打する
「……カ……ハッ……?!」
肉体が瞬時に近くの岩にめり込む
胃の内容物が一瞬で外に飛び出す。口元からは得体の知れない液体がボタボタと吹き出しては地面にシミを残す
口をぱくぱくするが息が入ってこない
まずい、視界がどんどん暗くなって行く……な、何が……
そんなアイオンの目の前にその少女が歩いてくる。
宝剣『リーパー』を使うまもなく、アイオンは意識を失った
そんな倒れ込む女の体を引きずりながらマキナは王城へと帰り始める。
ズルズルと引きずられた後にはベッタリと血が染み付くが、それを
「血の跡が残るとめんどくさいの……お願い『
血の跡がまるで消しゴムマジックのように綺麗に消えてゆく。
けれど、当然血の匂いにつられて魔物が数体現れるが
「なんじゃこんなところでお主は油を売っておったのか?」
空から降り立ったバハムートの着地時の風圧により、粉微塵になる
その様子をなんのことは無いと言うふうに眺めた後マキナは
「……掃除するべきものを増やさないで?」
そう言って歩き始める
◇◇◇
アイオンは目を覚ます。まだ生きていることに感謝しながら目を開け
「ひ、ひイイ?!!」
ぐちゃぐちゃになった下半身を見てしまった。
「あ、起きたよ〜エイル様〜」
「……ご苦労……さて貴様が知っていることを洗いざらい話してもらおうか?……なぁ?」
──彼女は暗殺者としては優秀だったのだろう。
だが、暗殺者は所詮人を相手取るものだ
故に
─終末世界の怪物達には太刀打ちが出来なかったただ、それだけの話だ
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