第42話 城─時々空を舞う
俺は耳を疑う。
「……待て、この城を浮かせたい?……正気かアビス……?」
『正気です……いやぁ……ちょっとね……』
「?……俺がいない間に何かあったのか?……あったんだな?」
『はい……まあ見てください……』
俺は何か嫌な予感がするので慌ててそちらに向かうが
「…………波打ってるのか……?」
おそらくだが、クラスメイトの誰かの仕業だろうか……城の地下の地面が異様に波打っていた
その余波により、地下の階層の壁などが壊れ……辺りに散乱していた
「……なるほど……それで城を浮かせたい……と」
『許可さえいただければ……』
「ふむ……ならばあえてこの余波を放置して……むしろ逆探知してやろうじゃないか」
俺はそう言うと巨大な杭を手の中に取り出し……それを地面にぶっ刺す
「地脈計、セット完了……さてでは……様子見の時間と行きますか」
俺はあえてその杭の近くに座り、先程入れたコーヒーを飲む
『エイル様がわざわざ貴重な時間を使うまでもありません……それにいつ起こるか分からないことに労力を……』
俺はアビスの顔を撫でる。
『……ありがとうございます……?いえ、そうではなく……』
「まあこいつは間違いなく異世界人絡みの案件だ……ここまでの能力だからな……なんせ……少なくとも国をふたつは跨いだ距離からの攻撃……それを看過できないわけだ」
そう言って俺はハンモックに横になる
「んじゃあ……しばらく寝てるから、アビスも休んでていいぞ?」
『はぁ……で、ではお言葉に甘えさせていただきます……』
「なんじゃ楽しそうな事をしておるのぉ!」
「おう、バハムート……暇か?ならここで寝ないか?……案外地下で寝るのも悪くないぞ?」
「……ふはは……そういえばオーディンの奴、モーガンに命じてこの城の上に『
「なにそれ知らない、……はぁ……まあいいけどここの星と整合させるの難しいのによくやるねぇ……」
『ん〜あれはまあ趣味でしょうし……気にする事はないかと……にしても』
「ン?」
『近い、近いですよ!バハムート!……貴方重いくせによくもまあ堂々とエイル様の腹の上に乗っかれますね!』
「わ、わしは重くなどないが?!……それを言うたらお主の方が……あちょ、やめろ!」
『星ですからね!重くて当然です!』
うんうん。
「人の体の上で戦争しようとしないでくれるかな?……ん?」
俺は2人をたしなめ……ん?おおー
「揺れておるのぉ……これがあの言っておった奴か?」
『間違いないです……装置起動しました、発生源は……んん?空中ですか』
なるほど、次の敵は空中か……たぶん空中から能力を使ってるんだろうねぇ……にしても
「精度がかなりいいな……おそらくかなり卓越した使い手だろう……ま、空中からの攻撃と判定できたし……城を浮かせますか」
俺はサラッとつぶやく。
俺は瞬間的に転移すると、城の最上部にあるコックピットに座る。
『『城の中の皆様方にご通達です……当城はこれより、空中庭園モードに移行しますので……周囲の壁にある手摺つり革などにしがみついてください』』
さて、警告は出したし……んじゃあ始めますか
俺はコックピットにある操縦桿を握り……手前に引く
ガコン!という子気味のいい音がして……
『シークエンスコード/
─────『
地面から轟音を立てて巨大な柱が浮かび上がる。いわゆる基礎と呼ばれるそれから
周囲にポリゴンが展開される。それらは統合し、数を増やし
そうして城の周囲をあっという間に壁で覆い尽くす。
そして地下に存在していた部分は全て城の中に移設される
当然、先程まで城の地下と地面に隣接していた場所は空白が生まれる
先程打ち込んだ杭からものすごいエネルギーの反重力ビームが地面に照射され、それらにより完全に城は地面と離れる
城の上層にあった尖塔は次々と合体、複製され
それらはあっいう間に城の周囲を囲む防壁の1部に変化する
城の中央に位置する場所は横向きに回転し、その位置の中心に反重力エネルギーコアが設置され、それから周囲に持続的に反重力エネルギーフィールドが展開される
「……さてと……こんなもんか」
「こんなもんか……じゃないよ!……いきなり何が起きたのかと思ったわ!」
まあメリッサやらアリアやらローランには文句を言われたが
ともかく、これにて城は空中庭園へと姿を変えた
ちなみに高さはだいたい1000メーター付近にあるので、普通に寒い
実際、雲にそのまま突っ込んだので外は何も見えなくなっていた
「それから……アビス……外の山をさらに増加させておいてくれ、この城が覆い尽くされるくらいに追加分を頼む」
『もうやってる!こんなもん?』
「ん〜もっと増やしていい……あと螺旋状にしたらカッコイイ!気がする!」
『螺旋状にするの難しいんですけどね!』
こうして、その日……世界にバベルの塔が誕生した
山が異質な形で捻れ、その城をすっぽりと覆い……吹雪は荒れ狂い人々をよりいっそう近ずけないようにさせて
─「やり過ぎたかな?……」
俺は思いのほか楽しくなってしまった事を反省しつつ、城の補強に取り掛かることにした
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