拝啓─俺を終末世界に追放しやがったクラスメイトの皆様方へ。無事帰還の目処が経ちましたのでラスボス共を引連れて殴り込みに行かせて頂きます。───覚悟の準備をしておいてね!
ななつき
第0話 エピローグ
星を総べる玉座に、一人の男が腰掛けていた。
天使のような風貌の女がゆっくりとその男に近づき、跪く。天使のような透き通った声で
「マスター、異世界に通じる転移門が設置完了しました」
そう言うと男は一言、「ご苦労様……天命王ラジエル」と言い、その玉座から立ち上がる
「ほう……本当に行かれますのかな?王よ」
後ろから来た悪魔のような風貌の老紳士が跪きながら優しい、けれど威圧感を感じさせる声で質問する
「……愚問だぜ?魔神王バアルよ……俺は俺の復讐を果たす……その為だけに生き延びたのだからな」
「その割には貴様あまり乗り気ではなさそうじゃが?」
そう言いながら長身の鱗を持った女性が上から降りてくる。そいつ、幻獣王バハムートを俺は撫でながら
「そりゃあそうさ……どんな風になってるか分からないからな……」
「……ここからミサイルでも打ち込めば全員殺せるのに何故しないの?─
相変わらず物騒だな……と俺は苦笑しながら機神王エクス・マキナの言葉に返す
「そんな事をしたらあいつら罪を思い出して貰えないまま死んじまうだろ?」
『おお!ついに動くか!……ははは!いいじゃないか!……われも異世界の魔術とやら……ぜひ興味が湧いておってな!』
相変わらずイケメンだけど魔術馬鹿だな……と俺は魔術神オーディンに突っ込みを入れつつ転移門まで歩いていく
『どーでもいいのぉ……私に耐えれる奴はそこにぃ居るのかしらァ?!』
妖艶な、それでいて完全に理から外れた存在感を持つ外界の神……天蓋神アザトースをたしなめながら頭を撫でる。
『あら嬉しいわぁ』
本当にコイツは狂ってなければ可愛いのになぁ……
『アザトース!……全く今は主殿が話してる最中で御座いますが?……もう少し主殿の様子を観察する力を身につけてはどうですか?』
そう言って別に眼鏡とか掛けてないけど何かをクイッと抑えて真面目な感じで注意をしているのは侵略神ヴォイド=アビス
『くう……すう……むにゃ……』
『あんたも寝てないで起きなさい!……子供じゃないんだから!』
そう言われているのは終末神カオス=ギャラクティエ。白髪の少女。普段は寝ているか起きていても無口であるが……まぁ1番怒らせたらヤバいやつである
そしてここにいる八体は全てラスボスだった奴らだ。俺が全員打ち負かした……な
「まぁいいさ……寝かして上げろ……どうせ異世界に転移したら起きるからな……それよりもお前たち!」
俺はそう言ってオーラを解き放つ。そのオーラに当てられたのか、空間がビリビリとひび割れているが
「──これより俺はあの、かつて召喚された異世界……『メルバニア』に殴り込みにかかる!……ようやくこの積年の恨みを果たすときだ!」
俺は息を吸い込み、高らかに宣言する
「さあ!行こうじゃないか!……奴らに……俺をこの世界に追放したクラスメイト共に……長い長い悪夢を見せる時だ!!」
そう言うと俺は転移門をくぐる
◇◇◇
門をくぐった先は一面の銀世界だった。
その様子に俺は少し戸惑いながらもかつてのこの異世界での出来事をふと、思い出していた
◇◇
「はぁ?!ここ異世界!?……マジかよww!」
俺たち北川神里高校の二年生はある日異世界に転移した。
退屈な先生、「クソ川」もとい担任の「木戸川」によるくっそつまらないホームルームの最中だった
地面が光った時、『俺』こと『無道 理一』はクラス一の美人、神田を眺めていた。
「相変わらず……神田さんは美人だなぁ……」
そんなことを呟いた時、地面が光ったのだから当然俺は反応ができなかった。
あっという間に俺達は全く見知らぬお城のような場所に横たわっていた
「……おお!成功じゃ!……やっと、やっと召喚することが出来ましたぞ!」
明らかに王様みたいなコスプレした奴が杖を放り投げて飛び上がって喜んでいた。
唖然とする俺たちにその男は
「皆様方は異世界からの転移者……いえ、勇者候補の皆様でございます!……どうか我らオーリニア王国を……いえ、もっと言えばこの世界メルバニアをお助け下さい!」
俺は一瞬ドッキリを疑ったが、クラスメイトたちはバカなのか分からないが
「ま、まじで!?ここが異世界?!」
「おいおいテンプレキター!まじで異世界転移ってあるの?!」
「ちょっと男子!かっこいい王子様とかに会えるかな(落ち着きなさい)!」
「えりか!それ逆!本音と逆!」
とかやっていた。なお俺はと言うと
「……(異世界とかマジで?)落ち着こうぜ?……まぁまずは王様の話を聞いてから……」
とか言ってカッコつけて冷静な振りをしていたが、内心めっちゃくちゃ嬉しくて飛び上がりたい気分だった。
だって異世界だよ?異世界!……魔法とかあるのかな?
そんな事をやっていると
「お前たち!落ち着いて、冷静に行動するんだぞ!……ここが異世界?バカバカしい!……そこの人!携帯を貸してください!救助連絡をしますから!」
木戸川先生はどうやら空気を読むのが苦手なのかな?どう見ても今それを言うべきではないよ?
「?け、けいたい?とは何ですか?」
「スマホも知らないんですか?ここはどんだけ田舎なんですか?!……いえいえ待ってくださいそもそもメルバニアなんて国は……」
「先生黙れ!お前がもう出る幕じゃねえよ!」
「そうだ!ここが異世界ならお前の役目とかねぇから!」
そう言ってクラス一の格闘の天才、三隅が殴って気絶させる。
「すいません……我々の馬鹿教師が……不手際で……あの?この人縛り上げて牢屋にでも入れといてください!」
そんな感じで木戸川は連れていかれた。ご愁傷さまと思いつつも俺達は改めて異世界に来たと言う余韻に浸っていた
「皆様、ステータスオープンと言えば自らのステータスが分かります!」
どうやらお姫様のような格好をした美人が現れてそれを説明する。
その姿は、はっきりいってめちゃくちゃ美人だった。
最早絶世とかいうレベルでは無い……なんというか、御伽の世界から来ました。って顔に書いてあるレベルだ
「す、ステータスオープン!……お?俺賢者だって!……スキルは……『ガチャ?』」
「まじか?よし俺もステータスオープン!……俺はぇ?!踊り子ってマジかよww!あ、でもスキルが『幻覚操作』だってさ!」
「なんで男子が踊り子獲得してんのよ!えっとステータスオープン!……えー私鍛冶師何だけど?!……やだぁ……汗臭そう!……スキルは『武装成長』?」
皆それぞれ思い思いのスキルを手にしているようだ。なら俺も
「ステータスオープン!……俺のクラスは……」
『ムトウ リイチ Lv1 職業 :ソードマスター
スキル:簒奪者
【⠀スキル簒奪者は倒した敵のステータスとスキルを奪うことが出来る⠀】
使用可能スキル:
適正魔法属性は無属性 』
……なんかヤバそうなスキルじゃね?ってかこれって……(チート能力じゃねえか!)
俺は叫びながらも、この事実にニヤニヤする。俺はどうやら異世界で無双する運命のようだ
……だってこんなスキル明らかにやばいじゃん
そう思っていると
「お!俺が勇者だって?!」
どうやら勇者が見つかったようだ。そう思ってそいつを見ると
「げっ……御門 皇輝……あいつが勇者かよ……あの性格悪いやつがねぇ……」
しかし当然ながらその言葉にあたりのヤツらが歓喜の声を上げる。
「相変わらずいつもかっこいいわね!皇輝!」
女子たちに気に入られているやつがこうなるとすっごい嫌だな……まぁこの異世界ならもっと可愛い女子がいるはずだから……と俺は舌なめずりして冷静に振る舞う
「あの、実は勇者とはそこのクラスのことでは無いのですが……」
そんな喧騒の中、王様と思わし来人物が衝撃の発言をする
「あのですが……あそこにある剣を見てもらえばわかると思うのですが……あれが真の勇者にしか抜けない剣です……あれを抜けたものが勇者として世界を救うヒトと認定されるのです……」
「何だよ!……ちっ冷めること言うなよ! 」
「……申し訳ございません……今、我々の国メルバニアは窮地に追いやられています……魔王に魔族、それから他国との戦争……これらを回避し、世を安定させるのこそ我らメルバニアの指名なのです!どうか……我らにお力添えを!」
かなりまともそうな王様だな、と俺は思った
「ほーん、他国……ねぇ……」
意味深に皇輝が呟いたが、その声はおそらく俺にしかきこえなかったのだろう
「それでは皆様方自らのクラスとスキルを教えて頂けますか?」
お姫様がそう言って微笑んだので、それにつられて男どもが鼻の下を伸ばしてにやにやする
「まずは俺か……俺は……」
正直クラスメイトが何の能力者がなどどうでもいいので俺の番が来るまでのんびりと辺りを見回す
すると柱の奥でこっそりと見ている少女の姿が目に映った気がしたが……多分気のせいだろう
「……次の方!」
どうやら俺の番が来たようだ。俺は自信を持ってはっきりとと自分のクラスとスキルを説明する
「俺の名はムドウ リイチ……クラスはソードマスター!……スキルは『簒奪者』……倒した敵のステータスとスキルを奪うスキルだ!」
正直、ここで言わなければ良かったのだがやっぱり人間というのは愚かなもので、他の人り自分が優れていることを自慢したくなってしまうのだろう
「……すごいスキルですね!それにソードマスター!?……あなたならあの勇者の剣を抜けるかもしれません!……」
そう言って俺の手をお姫様がぎゅっと握る。その様子を見てほかのクラスメイトが少し妬ましそうにしていたが、俺は自分の今の立場に酔いしれていて気が付かなかった
その後俺達は広間で豪華な食事を食べ(異世界の料理も案外美味しかった……イギリスじゃなくて良かった)ので満足しながら俺は王城の夜空が見える場所に立って眺めていた
「月が3つもあるのを見るとやっぱりここが異世界なのだなぁと思いますね……お姫様」
俺は隣に立つお姫様こと『メルバニア=ソフィア』と話をする
「ええ……そうですね……あなたは勇者にふさわしい心を持っていると思います……なぜかは分かりませんけどね……」
そう言って微笑まれた時、恥ずかしくって他愛もない話題に変えようとするのがやっぱり自分が女性に慣れていないという事なのだといやでもわかった。
「そうですね……あ、そういえばこの世界には魔法、があるんですよね……もし良かったら見せていただけませんか?」
ソフィア様はそれくらい構いませんよ……
と言うと手の中に炎を創り出す。
まるで元々そこにあったかのように自然に生み出された炎に俺はびっくりしつつも
「……本当に魔法があるのですね……やはり美しい世界です……あ、もちろんソフィア様の美しさには負けますよ!?」
そんなことを言っていた。後で自分で恥ずかしくて悶えたのは言うまでもないが
◇◇
こうして俺は異世界を少しだけ満喫し始めた頃、裏ではひとつの計画が進んでいた事を俺は知らない。
◇◇
────俺は過去の懐かしい回想を振り返りつつ、転移門の周囲をぐるっと確認する。
もちろん、八人のラスボス……一応名付けるなら『終末八星』は基本俺の武具となって着いてくる。
─奴らを1人でも自由にすると世界が滅びかねないからな
だが、改めて見てもここがどうなっているのか分からない。
……俺は確かメルバニア城に来たはずなのに、ここはまるで……
「……廃墟の様だな……雪が俺の封印された場所まで積もっている……一体ここに何があったのだ?」
俺がそう呟いた時、目の前の石像のようなそれがゆっくり口を開けた。
「…………あ、…………あぁ……あなた……は……」
そう言うとそのまま倒れ込む。俺は慌ててその子を抱きとめる。
──冷たい、息がほとんどしていない……まずいな
「バアル!オーディン!バハムート!力を貸せ!」
俺は手の中に俺の権能を展開する。
「あいよ!」「了解した!」「いいじゃろう!」
即座に、3人が現界し女性の体を直し始める。
「マキナ!城の周辺の状況の確認を!」
「あいあい!」
「アビス!城内部の敵性存在を全て捕まえてこい!……どうやら敵のお出ましだ!」
「了解致しました!」
「アザトースは待機!」
「またかよォ!」
「カオス……は起きろお前は!」
「ぐう……すう……」
とりあえず急いで現状を確認することにしながら、俺はこの世界がかなりやばい事になってる気がして心配しか無くなっていた
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