第74話 アリアというお姫様
飛び交うは斬撃。それをいなそうとする度にメリッサの刀が消し飛ぶ
「(ッ!……コイツの攻撃どうなっている?)」
刀を即座に打ち直すも、それすら意に返すことなく破壊していくバーベロア
本来は一度でも打ち直した刀はなかなか破壊されないのだが、それすら無視して破壊してくるその攻撃にメリッサは思わず
「──破壊系のチートスキルか!」
そうくちばしる。それに対しバーベロアは
「ザァンネェン!違っって〜の!!」
笑みの中に含みを織り交ぜてそう叫ぶ
三人が戦闘を繰り広げているのは、どこかの貴族の家の中
そこは既に廃れて久しいのか、埃がまう空間だった
バーベロアの斬撃が次々と壁に新しい傷を生み出し、それのせいか分からないが……建物の悲鳴がメリッサの耳にこびりつく
「(っー……まずいね、さっきから打ち直した刀をその原型ごと破壊してきやがる……こいつはなんのチート能力だ?)」
メリッサが苦戦するには訳があった
メリッサは普段、原型と呼ばれるものを使い戦いの中でその原型を新しい刀に生まれ変わらせて戦うスタイルをとる
しかし今回の相手、バーベロアはその原型事まとめて破壊してきている
これでは打ち直すことが意味をなさなくなる。例えるならば、ノートに写真を貼り付けて模写しようとしている時にそのノートごと破り捨てられるような、そんな状態
無論完成した刀で応対することもやぶさかではなかった。しかしそれでは自分の夢の一つ、最高の一振りを作ることに繋がらないのだ
完成した刀のことをメリッサは失敗作と呼んでいる
理由はもちろん
「───完成してしまったらそこで終わり」
だからだ。
だからこそ、完成した剣は使うことをあまりしない、しかしそれを渋るとさすがに自分が死ぬ
そんな状況だからこそ、メリッサは選択した
「……新しい原型をこの場で生み出す」
等という無茶振りを。
だがそれは不可能に近い、バーベロアの攻撃は既に雨あられのように降り注ぎ
メリッサの刀を次々と破壊していく
そんなさなかで、新たな刀の原型自体を生み出すなど死ぬのと同じだ
だがメリッサは信じている。アリアという一人のお姫様を
◇◇
残虐なるバーベロア、その手に持つ鉈には特殊な効果が付与されている
ひとつが『物質破壊』、もうひとつが『空間削ぎ』。
このふたつは神器であり、最初から神器を解放していたバーベロアに負ける未来は無かった
まあもっとも、彼女はそんなものなどなくとも強いのだが
─「(はあ、つまんねぇ、さっきから避けてばっか、物足りないなぁ)」
そんなことを言っているが、避けるのは当然なのだ
それを理解した上でこのセリフを無意識のうちに吐き出す
ひとえに彼女の思考が狂っている証拠である
着実に斬撃がメリッサを襲う。その間隔は少しずつ短くなり、やがて
「さァて追い詰めたぜェ?」
そんなセリフを吐き出せる位置まで来た時、彼女の体を何かが貫いた
────「は?」
小型の槍、いやそれは魔法の槍
バーベロアの肉体にそれが刺さっていた。そしてそれはバーベロアの肉体に一瞬にして雁字搦めに巻き付く
「──私もいるんですよ!」
後ろから透明マントを解除したアリアがそう、叫んだ
拝啓─俺を終末世界に追放しやがったクラスメイトの皆様方へ。無事帰還の目処が経ちましたのでラスボス共を引連れて殴り込みに行かせて頂きます。───覚悟の準備をしておいてね! 皆月菜月 @Cataman
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