第1話 状況確認

 くすぐったい。そう感じたときには目覚めていた。上を見ると、が広がっている。……ということはまだ夜だろう。


「う……、まだ暗いのか……。ならもう一度寝てもいいだろう……。あれ? 眠れない……? 仕方ない、起きるか……」


 睡眠を続けようと思ったが、何故か眠たくなかった。……まあ、いい。本を読むか。と、ぼんやり思っていた。

 起床したら本を読むのが僕の日課である。机の上に置いてある本を取ろうと思い、起き上がって机の方を見る。

 ……あれ? 何で机がないんだ……? というか机どころか部屋もないんだが。


「……」


 そもそも天井じゃなくて星空が見えてたのがおかしいだろ。僕は病室にいたはずだ。なのに草原にいる。それにこの場所は知らない。


「……ここはどこだ」


 思ったことが口に出た。それほど混乱している。

 このままだとただ時間が過ぎるだけだ。よし、周辺を探索しよう。、辺りを見渡そうとしたが、身体に違和感を感じた。今までより視線が低い気がする。


「何か変だな……」


 違和感を感じたので僕は自分の手を見た。あれ? の手はこんなに小さかったか? そんな感じで手を見ていると足が視界に入った。

 ……なぜ靴を履いているのだろう?

 冷静になって見てみるといくつかおかしいところを見つけた。まとめると、


 違和感①「着ている服が寝る前の記憶と違う」。寝る前は空色の服を着ていたが、現在は黒い燕尾服に白いシャツ、黒い蝶ネクタイに白い手袋、そして裏地が紅い襟がついた黒いマントを羽織っている。

 違和感②「身体が小さくなっている」。寝る前は身長が約175cmほどあったのに、現在は150cm前後(測るものがないので推測である)しかない。

 違和感③「健康になっている」。寝る前は立つことすら容易にできなかったのに、現在は立ち歩くことができている。


 明らかにすぐにわかるよな、これ……。そんなに僕は混乱していたのか?そもそもどうしてこんなにも変わっているのだろう。その原因がわからない。どうすれば、寝ているときに知らない場所に移動させたり、服を変えたり、身体を小さくすることができるんだ?


「誘拐されたのか……。いや、これは違うな。僕に価値があるとは思えないし、違和感②と③が説明できない」


 誘拐されたのなら、知らない場所にいたり、服が変わっていてもおかしくはない。しかし、身体を小さくさせることはできないだろう。「見た目は子供、頭脳は大人」の名探偵がいる世界なら身体を小さくさせることはできるだろうが、ここはそんな世界じゃない。ただの地球だ。なので、誘拐ではないと思う。


「だったら、どうしてこのような事態になったんだろう?」


 考えてもわからないな。そもそも、身体を小さくさせたり、健康にしたりできるのか? そういうものが開発された、ということは聞いたことがない。やはり、不可能だろう。

 というか今、このまま考えてたら時間が過ぎるだけか。


「考えても無駄だな。さて、改めて状況を確認するとしよう」


 どこに向かおうか。この草原は広いが、美しい草花が咲き乱れているだけで、他には何もないのだ。奥の方を見るためによく目を凝らしてみる。

 ……今更なんだが、夜目がきくし、視力が良くなっている。はアルビノだから髪は銀色だし、瞳は淡い青色だ。そして視力が悪いし、紫外線に弱い。

 だから、日が昇っていない今のうちに探索したい。当然、今は日焼け止めをもっていないので、日中に活動すると日焼けして酷いことになるだろうから、日が当たらないところに行こうと思う。


「身体が健康になっても、アルビノは治らなかったか」


 できれば治ってほしかった。僕――黒雨零こくうれいは日中に歩いたことがない。そもそも、病院の外に出たことすらほとんどない。

 それでも、身体がきちんと動くようになっただけで御の字だ。これ以上を望むのは強欲すぎる。


 身体が健康になったということは、散々僕の身体を蝕んでいたあの正体不明の病は治ったということだろうか?今は症状が出ていないので、治ったということにしておこう。



 それから2時間ほど歩いた。これぐらい歩いたのだから奥に何かあるだろう。あってほしい。そう思いながら目を凝らしたが、何もなかった。仕方ない。もっと歩こう。


 さらに1時間ほど歩いた。疲れてきたので立ち止まり、何かあるのかを確認をするために目を凝らす。ちなみに、現在も日は昇っていない。すると、奥に木らしきものがたくさん生えているのが見えた。おそらく森だろう。


「よし。これで日差しを防げるぞ」


 疲れているが、そろそろ明るくなるかもしれないので早めに森へ行きたい。歩く速さが心なしか速くなった気がする。



 およそ十数分で森に着いた。現在が夜だからか、なかなか不気味だ。さておき、ちらりと空を見上げると、少し明るくなっていた。そろそろ日が昇るかもな。そう思ったので、は森に入った。




――――――――――――――――――

 

 念のため補足します。本文に、零(主人公)が「ただの地球だ」といっていましたが、ここは地球ではありません。

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