第6話 I finally realized that "this was not the earth"
……熊と睨み合いを始めてからコンマ数秒。「逃げよう」そう思い、行動を開始する。
熊に背を向けてはいけないので、熊がいる方を向きながら急いで後退する。
しかし、熊がそれを黙って見ているわけがなかった。
「グゥゥァァァァァ‼︎ グマッ! グマァァッ!」
熊は唸り声を上げつつ、威圧感や緊張感を与えるような力強くゆったりとした動きで迫ってきた。
そんな危機に面しているのに不思議と俺の心は落ち着いている。しかし、それに伴い身体も落ち着いてしまっており、逃げることができなくなった。
まるで俺が「僕の首を絞めているような」、そんな感覚。
こんなことを考えているが、実際は僕に余裕はない。身体を懸命に動かそうとするが当たり前のように動かず、生きた石像のようになってしまった。
固まった僕を見て、熊は
その様子は「これから
死刑宣告脅しを受けた僕は、心臓が痛いくらいに拍動していた。それは命の危機が本格的に迫ったことへの緊張感か。あるいは、僕の死が近づいていることに俺が高揚しているからなのか。
どちらなのか、それとも両方なのかはわからないが共通していることは
何が言いたいのかというと「死にそうな状況」に現在はいる、ということである。
……熊の涎が物質を溶かすなんて話は聞いたことがないな。
そんな中、僕は現実逃避をしていた。身体が動かないため、この状況を打破することができないからだ。
それでも、現実逃避をしつつ、身体を動かそうと必死になっている。しかし、身体は僕の指示から全力で顔を背けているようだった。
We're fucked……!(もうだめだ……!)
つい英語が出てくるくらいやばい状況にいる。この一言は今の状況を
一方で熊は
……6本の足!? 何で熊に6本も足が生えているんだ!?
余談だが、本来の熊の足(前足と後ろ足の2
……
熊には本来ならあるはずのない1対(2本)の足が生えているのを目撃した。
涎は物質を溶かすし、足が3対(6本)あるし、この熊はどうかしている。
……先ほどまでこれに気づいていなかった僕もどうかしているが。
おそらく、森の中で熊に出会ったときに動揺していたのと、赤く光る目、そして大きい体躯に圧倒されていたからだろう。
……そんなことを考えていたら(その時間は2秒ほど)、熊が後退していく。
普通なら喜ぶところだが、僕は嫌な予感がしたため、喜ぶことができなかった。
その予感は残念ながら当たっていたようだ。熊はある程度距離を置いたら、僕に向かって突っ込んでくる。
熊の動きが
……さようなら。短くて空っぽな人生よ。
黒い塊が目の前迫ってきた瞬間、とてつもない暴風が吹き荒れ、全身に衝撃が走り僕の意識は闇に沈んでいった。
******************************
この世界のとある小さな村に住んでいた家族である4人は、平和で幸せな生活を送っていた。
しかし、冷たい雨が降っていたある日の夜。
その暮らしは
父親の全身からは
母は頭部が弾け飛び、頭部を失った体は烈火に
その様子を妹と俺は泣きじゃくって見ることしかできなかった。
頬に生ぬるい感触がし、錆びた鉄のような臭いを数倍にした強烈な臭いが
幼かった俺らはその光景を現実と認めることができるわけがなく、夢であってほしいと願った。
――どうしてこのような惨劇が繰り広げられたのかは、数年経った今でも鮮明に覚えている。
そして、あの日を境に、俺は己の人生を――
“spent on revenge”
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――夢を見た。内容は思い出せないが、とにかく悲しい夢だった。
◆
意識が覚醒する。僕は起き上がろうとしたが、激痛が全身に走ったので断念することにした。
真っ先に思ったことはそれだった。
辺りを見てみると、茂みにいることがわかった。結構快適である。
あれ?僕は何をしていたんだっけな?……そうだ!熊が突撃する――寸前で止まり、その際に発生した暴風に吹き飛ばされたんだ。
あの時、熊が寸止めをしていなかったら
誰しもが想像、ましてや実際になりたくないだろう。己が肉や骨、内臓が飛び出てぐちゃぐちゃの屍になる姿なんて。
とにかく、僕は一命を取り留めたようだ。
「ふぅ。生きててよかった。あの時は死んでしまったと思ったぐらい、生きた心地がしなかったからな。」
とは言っても、死んでいないだけで未だに痛みは残っている。なので今は安静にしよう。
……? 目の辺りに違和感があるな。
目の辺りに違和感を感じたので、手で触れて確認する。
……濡れている。どうやら違和感の正体は涙だった。
「涙を流したのはいつぶりだろうな……」
あの日を境に僕は感情というものを失ってしまった。なのに、現在は感情がある。そのことが不思議でならない。
……今はそんなことを気にしている暇はない。あの熊をどうするのか考えなければ。
熊は体の色が黒くて目の色は赤く光っていた。そして4.5m以上の体長に足が3対(6本)あり、鋭い爪が生えていた。
おまけに唾液は物質を溶かす性質を持っていた。
情報を並べてみたが、これは熊ではないな。化け物だろう。足が6本あるしな。
……思ったのだが、ここは地球なのか? あの熊が地球にいるはずがないから、疑問に思っていたんだ。
ほら、あそこに青白く光っている木苺のような木の実があるぞ。このような物が地球にあるはずがないしな……って木の実だと!?
やっと木の実を見つけた。食べれるかわからないが、確認してみよう……いや、今は関係ないので我慢するか。
木の実は後で確認することにした。
ともかく、ここは地球ではない。ということは、ここは……どこなんだ?地球に似た未発見の星か? うーん。それもおかしい。寝ている間に未発見の星に連れて行くことはできないからだ。なら、ここは……もしかして、異世界か!?
病院にいた頃は暇だったので本ばかり読んで過ごしていた。そのときに異世界に転生する小説を読んだことがある。まあ、そうは言っても数巻しか読んでいないが。
――どうやら僕は異世界に転生してしまったようだ。
――――――――――――――――――
やっと零が「ここはは地球ではない」と気づいたようです。
この物語はここからが本番になります!
“spent on revenge”の意味が気になる方は調べてみてください!
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