第7話 食事の準備

 病院で寝て、起きたら異世界に転生した。こんなことありえるのだろうか?


 目が覚めたら小さくなっていたし、服が変わっていた上、健康になっていた。このことから、僕は「転生した」という仮説を立てた。現時点では仮説だが、自分の顔を見たら転生したのかが確実にわかると思う。


 ……この仮説が間違っていたら、「ここはどこなんだ」というループになりかねないので、あっていてほしい。


 異世界に転生したということがわかってもすることは変わらない。僕は生きる。そして、あの惨状を引き起こした奴を……。


 あれ?急に眠くなってき――


   *


「う〜ん、よく眠れた」


 何で急に睡魔が襲ってきたのかわからない。


 しかし、目が覚めると何故か身体の痛みが和らいでいたが、ものすごくお腹が空いていた。そして、息切れと眩暈めまいがする。


 眩暈がひどい。一旦休憩しよう。



 眩暈がおさまるまでそれほど時間は掛からなかったが、空腹が進行している。


 何か食べ物は……あ、そうだ! あの木の実はどこに……。


 辺りを見回すと、すぐに青白く光っている木苺きいちごのような見た目をした2cmほどの木の実を発見した。僕はその木苺(仮)がなっている木に向かっていく。

 しかし、その途中にふと足が止まった。


「あの木苺(仮)は食べれるのか?」


 先ほどまでは空腹すぎて食べることしか考えてなかったが、この木苺(仮をつけるのが面倒くさいのでやめる)に毒があれば一時期活動ができなくなってしまう。ひどければ死ぬ、なんてこともあり得るのだ。


「動物がいれば、あの木苺を食べさせて毒があるのか調べられるのにな……」


 問題は僕が知っている限り、この森にはあの熊しかいないということである。あの熊に食べさせる方法もあるが、木苺に毒がなかった場合、食べられるのは僕になる。

 「熊に餌をあげたらそれに満足しないで僕を喰らった」ということになれば折角せっかく助かったのに、この命を無駄にしてしまう。なので、熊に食べさせる方法は却下だ。


 はぁ。ここに動物がいれば……。


 無い物を強請ねだっても仕方がない。これで、諦めるか動物を探すかの二択になった。


「動物を探すか」


 結局は動物を探すことになったので、木苺をいくつか回収するために歩みを再開する。


 それから数秒後に木苺がなっている木に着いた。木の高さは2mほどであり、木の実はざっと見るだけで50個以上はなっているが、全てを持っていくことなどはできない。


 持っていけるのは精々10個ほどだろうか。


 そう考えながら手を伸ばし、木苺を回収する。

 僕はポーチやバックという便利なものを当然のように持っていないので、ズボンにあるポケットに回収した木苺を入れていく。


「ポケットに入れたのは11個か。まだ入ると思うが、入れすぎると行動に支障が出たり地面に落としたりしてしまうから妥当だとうな量だな」


 木苺を回収し終わったので出発しようと思ったが、どの方向に行けばいいかわからない。やはり、ここは適当に決めるか。


 決め方は簡単だ。木の枝を落として、それの上の部分が向いた方向に行けばいい。

 近くに落ちていた木の枝を拾い、それを胸の前で垂直に持つ。そうしたら、木の枝を落とす。


 木の枝は木苺がなっている方向を指した。


 よし、そっちの方に真っ直ぐ進んで行こう。用意は済ませているのですぐに行動を開始する。


 木苺がなっていた木の奥は今まで通りの風景と酷似こくじしていた。しかし、所々ところどころに木苺がなっているので、全く同じとは言えない。


 それから数分後、動物は未だに発見されていないが、新たな木の実を発見した。5~7mほどの樹木に3~4cmほどの黄色の桜桃おうとう(さくらんぼ)に似た木の実がなっている。


 その桜桃も木苺と同じく食べれるかわからないので、木に登って回収し、ポケットに入れる。さすがにこの量は入らないので、木苺を4個捨てる。

 ちなみに、現在所持している木苺は7個。桜桃は3個だ。



 さらに十数分後、何かが動いているのが見えた。


 これは動物なのか確証を得ていないが、動物であるという可能性に賭けることにした。


 察知されないように息を殺して忍びよる。幸い、こちらには気づいていなかったようなので、手が届くところまで近づくことに成功した。


 手で捕まえようと手を伸ばし、その小さな体に触れて掴む。


 この時、僕はこれの体表に毒がないか警戒することを忘れていたが、これには毒がなかったようだ。


 これは動物なのか。僕は緊張しながらそれの姿を確認した――




――――――――――――――――――


 さて、あの動いていたものは動物なのでしょうか?予想してみてください!

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