第5話 ゼルシス
忙しい日々はあっという間に過ぎていき、年を越え、
それはさておき、もう
普通なら6年ほどかけて行う学習を、わずか
……幸いなことに、言語も割と早く習得したほか、数学は言語さえわかればできている。訓練は相変わらず大変だが、以前よりは動きも良くなってきた。
今日は
なお、監視役は少し遅れてやってくるそう。……監視役がそれでいいのか、と思ったが、口には出さなかった。
つまり、今は監視されていないということだが、特に行動を起こしはしない。逃げても目的がないし、周辺に何があるのか知らないからな。
コンコン
突然ドアノッカーが鳴り、家の扉が開いた音がした。「監視役の人が来るから鍵は開けたままにしておくよ」と言い、ティグリスが鍵を閉めなかったので、家に誰でも簡単に入れるのが今の状況。そんな時に扉が開いたのだから、監視役の人がやって来たか、許可なく入ってきた侵入者かの二択になる。ドアノッカーを鳴らしていたので、監視役の人だと思うが……。
「おはよう! 俺は君の監視役を務めることになったゼルシスだ。ところで、君の名前は?」
リビングと玄関の狭間である扉が開くと、僕の目に真っ先に入ってきたのは、塩化ストロンチウムを加えた火のような色の髪。わかりやすく言えばソルデウスの瞳の色に似ている真紅の髪だった。
「……レイです」
真紅の髪の少年――ゼルシスが自己紹介(?)をした後に名前を聞いてきたので、一応言葉遣いを丁寧にして名乗る。……突然聞かれたので少し間が開いてしまった。
「そんな丁寧な言葉遣いなんか俺に対して使わなくてもいいって。俺とレイは同じ歳らしいからさ」
監視役が僕と同じ歳ということは意外だったが、別にどうでもいい。
「わかりました。……いや、わかった」
アル村長も以前に似たようなことを言ってきた。なぜか丁寧な言葉遣いを使わないで話してくれ、とゼルシスも言っている。それが本当に不思議だ。丁寧な言葉遣いの方かいい気がするがな……。まあ、何がいいかなんて僕にわかるはずがないのだが。
「俺、朝ご飯食ってきてないからさ。腹が減ってるんだよなぁ。何か食えるもんないか?」
「食べれるもの? ……あ、そういえばティグリスさんが用意してたな。今から用意するからそれを食べてくれ」
「おう、ありがとな!」
ティグリスはこんなことまで見越していたんだな。まあ、ゼルシスとティグリスは知り合いだからわかるんだろう。知り合いじゃないと普通は頼まないし。
ゼルシスの食事を用意し終わると、僕たちは席に着き食事をとる。
僕は食事をとりつつ、ゼルシスの顔を見つめた。……ソルデウスと同じくらい整った顔だ。この世界ではこれが普通なのだろうか?
アル村長一家は全員が美形だし、血の繋がっていないステラなんかは一際整っている。そして、ゼルシスもソルデウスと同じくらい整っているときたら、そう思っても仕方がないとは思うが……判断材料が流石に少ないか。決めつけるのは早計だな。
「俺の顔になんかついてるのか?」
「いや、何でもない」
人の顔を見つめ続けるのは失礼に当たるんだった。気をつけないと。
それからも言葉を交わしているうちに、食事をとり終わった。ゼルシスと話していてわかったことは、彼の父親がアル村長の友人であり、彼自身がソルデウスの友人だということ。あとは、女子の幼馴染がいるらしく、その子が可愛いということだけだ。……正直に言うと、最後の話はどうでもいい。
さて、食事も終わったことだし、勉強をするとしよう。
僕が勉強部屋に向かうと、ゼルシスが着いてきた。……あれでも一応監視役だからな。着いてこないと本末転倒なんだろう。
僕が政治学の勉強を始めてから少し経った。気になったのでゼルシスの方をチラッと見ると、
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