第12話 入学試験情報
ギギィ……
ぼーっとして外の景色を眺めていたその時、そんな音が背後から聞こえた。振り返ると、ソルデウスが仏頂面をしながらここ――客室の扉を開けてるのが見える。
何のために来たのだろう? 様子を見に来るきたということはないと思うが……。
「おい、親父と叔父さんがお前と俺に用があるから来いって言ってるぞ」
当然、ソルデウスが用件もなしにやってくるわけがなかった。その用件とやらがアル村長とティグリスが呼んでいる、ということらしい。
「ああ、分かった」
ソルデウスには敬語を使わないようにしている。自己紹介の時に気になったことがあったので、敬語を使ってソルデウスに訊いたら「その口調は気持ち悪いからやめろ」と言われてしまったからだ。
ちなみに、質問の内容は大したものじゃない。ソルデウスが生まれてから経った時間について訊いただけ。
それから分かったことは……後に整理しておくとしよう。今はアル村長がいる執務室に向かわなければならない。
客室を出て、階段を上っていく。2階の廊下の一番奥にあるのが執務室だ。
コンコンコン
「親父、俺とレイが来た。扉を開けてくれ」
ソルデウスが扉に向かって話しかける。すると、奥からガチャリと鳴り、扉が鈍い音を立てて開いた。
「来たか」
そう言って出迎えたのはアル村長。ティグリスはいないのか、と思ったので部屋の中を見渡す。
……見つけた。ティグリスは背を向け奥にある椅子に座って紙のようなものに見入っているようである。
「おい、ティグリス。資料を読むのをやめてこっちに来い」
「行くのはスペース的に無理だからここにいたままにするよ」
ティグリスは資料と呼ばれた物を机の上に置いてから身体をこちらに向けた。
僕とソルデウスは用意された椅子に座る。
「君たちを呼んだのは……任務の詳細を話すためだ」
また例の任務か……。前回よりも情報があるのだろうか? 新たな情報がなかったら遂行は限りなく不可能に近いぞ。
まあ、詳細と言うくらいなので前回よりも詳しく教えてくれるだろう。
「始末対象のことは置いておいて、先に王立人材育成学園について話すよ」
アル村長が話を続けると思ったら、ティグリスが口を挟んできた。
「王立人材育成学園のことは兄さんよりも僕の方が詳しいから、僕が話すよ。兄さんは後から始末対象について話してもらうね」
「分かった。ではそうするとしよう」
アル村長とティグリスがそんな話をしている最中、僕は周りを見ていた。
執務室は他の部屋よりも壁が厚く、素材も違うものが使われている。僕には何が使われているのか分からないが、硬いということだけは分かった。
部屋の大きさはそれほど大きいわけではなく、2人用といったところ。机も2つあるしな。
「知ってると思うけど、念のため言っておくね。人材育成学園は国民の誰しもが13歳になる年になったら入学させられる学園のことで、その中でも王立人材育成学園は頂点に立っているんだ。何せ、王立だからね」
アル村長から似たようなことを聞いた。だが、ティグリスの方が簡潔な説明になっている。
「詳しくは学園に入学したら分かると思うから言わないよ……というか僕は最新の学園を知らないから教えることができない、というのが正しいけどね」
……知らないのかよ。
「だったら学園について話すことは何もないんじゃないか?」
ソルデウスも僕と同じことを思ったようで、ティグリスに問いかけている。
「それがね、僕は一部の情報を持っているんだ。その情報は……入学試験のことだよ」
「入学試験の情報だと!? いつどこでそれを手に入れたッ! それは機密事項で私たちには聞かされていないはず……」
アル村長もこのことを知らなかったらしく、声を荒げている。僕も驚きだ。まさか入学試験の情報を持っているなんて。
「あの方と取引をしたんだよ。内容は兄さんにも教えられないけどね」
……ティグリスは一体何者なんだろう?
僕は強くそう思った。
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