第11話 村長一家
〈前回のあらすじ〉
レイは目覚めたらなぜか椅子に座っており、ティグリスたちは食事を始めていた。そして、ティグリスは少女が自己紹介をするように提案している。
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「食事を済ませてから自己紹介をしてはどうですか? 食べ終わった頃にはお母様たちがやってくると思いますから」
ティグリスが自己紹介発言をしてから、初めに口を開いたのはステラと呼ばれた少女だった。
「それはいいね。まとめて
未だに混乱している僕を置いて勝手に話が進んでいく。まあ、僕が話に介入することはできないので当然のことなのだが。
「じゃあ、食事を再開しよう。焦らずに食べてね。喉に詰まらせたら大変なことになるから」
……僕のことは誰も触れないのだな。
なぜここにいるのか分からないまま、食事を進める僕。ちなみに、メニューは茶色がかった硬めのパンと味が薄いスープという質素な物だった。勿論、食べられるだけでありがたいので文句は言わない。
見たことがあるような無いような野菜……みたいな植物と、味が流れ出た何かの肉が入っているスープをパンと一緒に口に含む。塩が全くきいていないその味は、不思議な感じがした。質素な食事だが、新鮮でもあり、懐かしくも感じる。
……懐かしく感じるのは、俺の昔の食事と同じような物だからか。
このキャベツやニンジン、カブやエンドウ豆のような野菜みたいな物も入っていた。やはり、あの時の食事と結構似ていると思う。
そう考えると、ぐっと胸の奥底から何かが込み上げてくる。胸を締め付けられているような感覚は、何かに呼びかけているようだった。
*
食事を終えると、何とも言えない空気が流れ出す。なぜかソルデウスはこちらを睨んでくるしな。今は無視しておこう。
それから少しの間、沈黙が続いた。
「アル君、私が来たわよ!」
その沈黙を打ち破ったのは、凛とした声だった。その声が聞こえた方に目を向けると、一人の容姿端麗な女がいた。
彼女のハニーブロンズの髪は
「メイ。ルシールとジルベール、ラウルはどこにいる?」
その視線に対しての返しがこれだった。メイと呼ばれた女は予想外だった言葉に固まっている。
「……連れてくるのを忘れちゃった」
「早く連れてこい」
メイは現れてから数十秒も経たないうちに退場していった。何をしたかったのだろう?
*
それから少し経つと、メイとやらは僕より年下であろう少女と少年に、その人たちよりも更に小さな少年を連れてやってきた。ちなみに、三人とも髪の色はハニーブロンズだ。
「ねえ、お母さん。この人だれ?」
ダスキーグレー(青みの灰色)のくりくりとした瞳を向ける少女。その小さい手に注目すると、僕に向かって指を差していることが分かる。
「ルーシー。人に向かって指を差したらダメだよ」
意外なことに、ソルデウスが少女に注意をしている。
「ごめんなさい……。お兄ちゃん……」
「分かったならいいよ。今度から気をつけようね」
「うんっ。分かった!」
ソルデウスが優しげな笑みを浮かべて少女に話しかけていく。とても昨日の様子からは想像ができない光景だ。
「みんな集まったことだし、自己紹介をやっていこう!」
ティグリスが発言したことで、みんなの視線が自然と向かっていく。
「まずは言い出しっぺの僕からだね。僕は――」
*
窓から家の外の景色を眺める。今日は雨がパラパラと降っており、空は暗い雲に覆われていて太陽が全く見えない。
景色……というか雨を眺めながら、全員の情報を簡潔に整理する。その結果がこちらだ。
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・アルダンティ(29歳)……パートリア村の村長。愛称はアル。
・ルメルシェ(28歳)……アル村長の妻。愛称はメイ。
・ティグリス(27歳)……アル村長の弟。愛称はティル。
・ソルデウス(12歳)……アル村長の息子(長男)。愛称はソル。
・ステラ(12歳)……アル村長と血は繋がっていないが、娘のような存在(一応長女)。愛称は特にない。
・ルシール(9歳)……アル村長の娘(次女。厳密に言うと長女)。ジルベールの双子の姉。愛称はルーシー。
・ジルベール(9歳)……アル村長の息子(次男)。ルシールの双子の弟。愛称はジル。
・ラウル(5歳)…… アル村長の息子(三男、末っ子)。愛称はラウ。
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結構な大所帯だ。俺の家族は父、母、俺、妹の四人しかいなかったので余計にそう感じる。
……このことを考えると胸に痛みが走る。それがなんだか恐ろしかった。
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近況ノートにソルデウスの家族(?)の「ステラ」のイメージ画像を載せました!
見ていただければ幸いです。
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