第10話 武器製作(石器)麻紐

 麻を作る(植物の繊維を取る)のに水が必要なので、僕は川に来た。


 あと、麻の作り方はまだ説明しない。それより先に火を起こすための準備をしなければならないからだ。


 着火するための道具(マッチやライター)は当然ない。だから原始的な方法で火を起こすことになる。

 現在の状況では、「きりもみ式」と呼ばれる方法でしか火を起こすことができない。きりもみ式は道具がほとんど必要ないからな。

 ちなみに「ゆみぎり式」と「ひもぎり式」という方法もあるが、両方とも紐を使うし、後者に至っては2人で協力しなければならないので今回除外した。


 それはさておき、きりもみ式で火を起こす準備をしよう。

 木と木を擦り合わせるときに回すための棒に、できるだけ真っ直ぐの棒(節やささくれがあると回しづらいので加工する)。そしてこの棒を回す土台となる平たい木も用意しなければならない。


「また木材を入手しなければならないのか……」


 まあいい。早く火を起こす用意をしないと。お、ちょうど良さそうな木があるな。これを使おう。


 こうして火起こしの準備が始まった。



 それから15分程経ち、必要な物が揃った。


「……湿っているな」


 しかし、肝心の木は湿っていて火を起こせそうになかった。

 ……計画変更だ。本来なら鍋のような土器を製作し、植物をお湯で茹でる予定だったのだが、水で一晩つける方法でしよう。


 火は後に必要になるので、火起こしの道具は放置乾かしておく。



 ……植物から繊維を取りたいのに植物を用意していない。ここら辺に生えている植物が何なのかわからないから適当にっておくか。


 繊維を取る植物を集め終わったら、川に石を使って区切りを作る。これは、水につけているときに流されないようにするためのものだ。水につけているときに流されたら目も向けられない。


 僕は積むのに手頃な石を集めていき、ある程度集まったら積んでいく……といれうことを何度か繰り返した。


「よし、これで完成だ」


 区切りができたので早速、植物を水につけていく。これから一晩待たないといけない。この間に何をしよう。

 これは……武器のパーツを製作する順番、間違えたかもしれない。いや、確実に間違えたな。

 どうやら初めに麻紐から作ることが最善だったようだ。この一晩待つときに刃とつかを作れば効率よく時間を使えたのである。


 あの時はそこまで頭が回らなかったな……。後から悔やんでも仕方がない。今更後悔しても後の祭りだ。


 待ち時間にどうするのか考えた結果、仮の拠点を探すことになった。流石さすがにこんなところでは寝たくないからな。


 拠点は川の近くにあると好ましい。遠いと移動に時間が掛かってしまうからだ。

 この近くを歩いて探すついでに木苺も入手していく。……何気に木苺が結構あるな。


 そうしてから十数分後、良さそうな洞穴ほらあなを発見した。


「ここにするか」


 洞穴を見るとどこか懐かしい気分になる。この世界に来てから初めて休んだ場所が洞穴だったからなのか。はたまた別の理由があるのか。


 ……そんなことはどうでもいい。拠点を仕上げよう。


 床が硬いので落ち葉をクッションの代わりとしてどんどん敷いていく。

 落ち葉を敷き終わったら平らな石を用意して、その石の上に木苺を置く。食料はある程度貯蔵したいからもっと集めよう。


 動物を早く狩って、この満たされない喉の渇きを潤したい。は木苺を集めながらそう思った。


 木苺がそれなりに集まったので睡眠を取ることにした。ちなみに、拠点は3m四方で高さが2.5m程の大きさである。


 最近は動き回ってばっかりだ。


 僕はそう考えながら目を閉じた――




   ******************************



 あいつらの視線がに向く。その様子は「次はお前らの番だ」と言っているように見えた。


 は妹を連れて必死に逃げた。冷たい雨が容赦ようしゃなく小さい身体に打ちつけられていき、体温を奪っていく。


 全力でこんなに走ったのは初めてだ。は見た目に合わない怪力で妹を抱きかかえながら走る。妹は羽のように……は大袈裟おおげさだが、とても軽かった。


 後ろを振り返るとあいつらはいなくなっていた。は喪失感や憎悪、復讐心を胸に抱えながら、妹を心配させたくないがためにそれをおくびにも出さなかった。


 あいつら、いや、は絶対に許さない! あんな屑な種族なんての手で滅ぼしてやる。

 そのためだったら――




           “I even offer my soul to the grim reaper”



   ******************************



 ……目が覚めた。眠気は全く残っていない。


「植物を水につけてからどれくらい経った?」


 僕は起きて植物が水につかってるところに行く。様子を見ると、回収するのに頃合いのようだった。


 まずは植物を回収して、皮を剥いでいく。

 これは黙々と作業をしていくと気づいたら終わっていた。


 ……驚くほど集中力が高まっている。理由はわからないが、この状態が続く保証はないので、次の作業に取り組む。


 大きくて平らな石の上に皮を敷いて、皮の表の不要な部分を削ぎ落とす。それが終わると、裏返して皮の裏の不要な部分を削ぎ落としていく。


 そうすると、透明で向こうが透けて見えるようになった。ちなみに、こうならなかった場合は、水につけて暖かい場所に1週間くらい放置して腐らせ余分な部分を取り除かないといけない。要は莫大な時間が掛かってしまうということだ。


 閑話休題かんわきゅうだい


「あとは繊維がバラバラになりすぎず、からまらないように慎重に水洗いをするだけだ」


 そして、その作業も終わらせる。作業中にミスをしてしまい、少し繊維の量が減ったのは仕方ない。難しかったからな。


 これで麻ができた。麻紐はすぐに作り終わる。今回は一番シンプルで簡単な方法で作るからな。


 新しく繋げる麻を重ねてりをかける。なんと、これだけでできるのだ。簡単だろう。

 ただ、「こんなので大丈夫なのか?」と思うかもしれない。少なくとも僕はそう思った。

 それが、撚りをかければ繋がるらしい。だから大丈夫だろう。


 麻を重ねて撚りをかけていく。それを続けていくと、紐ができていくのがわかった。



 数分後に麻紐が完成した。麻紐の紹介はなしだ。特徴があまりないからな。いて言うなら、意外と丈夫ってことだけしかない。


 ……これで全てのパーツがようやく揃った。あとは組み合わせていくだけでナイフと槍が完成する。



 遂に狩りができる。そう思うと胸が高鳴っていく。


『さて、喉の渇きは満たされるかな?』




――――――――――――――――――


 今回も更新が遅れてしまって申し訳ございません。明日は間に合うように頑張ります!


 今回は例の『』が登場しました。これからもちょくちょく登場する予定です。『』はこの物語では重要な役割を担っている……かもしれません。

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